私は人形、抱きしめて
※ツインブレイブネタ
人と触れ合うと、心が通じ合うと、幸せになれるんだとジュードはそう信じてきたが、そう思えたのは、ほんの一瞬に過ぎなかった。
ミラに抱きしめられれば、ジュードの体はすっぽりと隠れ、ミラと同化したような気持ちになった。けれど、彼女の背中に腕を回すことはできず、両腕は宙ぶらりんのままだった。
柔らかく、温かく、だが、切なく、苦しく、ジュードはもがいた。
こんなに温かいものをくれる君は、僕の心に冷たい物を残して、そして僕の事を忘れてしまうんだ。
こんなにも望んでいた繋がりを、いらないって、絆自体を恨んだ事などなかった。繋がらない方がよかった。それでもどうして、君を知らなければ、出会わなければよかったなんて、どうして思えないんだろう。
「私が君を忘れたら、君は私を恨むか」
長い沈黙の中で、ミラは思い口を開き、言の葉を紡いだ。
ミラはわかっていた。僅かな可能性があったとしても、生まれ変わった自分は、ジュードの事を覚えてないんだって、忘れるんだって。
心も、体も、支えてくれて共に歩んでくれたジュード自身の存在は大きく、記憶を消したくないと思ってしまった。使命を全うすることさえも躊躇うほどだった。
ミラはジュードと出会わなければよかったとは、思えなかった。出会えた事に幸せを感じ、喜んでいた。
「………恨むよ」
「そうか」
「こんなに、僕の心に入り込んできたのに、その君が覚えていないなんて、こんな残酷なことなんてないよ、ミラはわかってない、今だって辛いよ、僕は、僕は………」
「だけど君は、私の為に、使命を果たしてくれるんだろう?」
「仕方ない……じゃないか」
記憶がないなら、作り直せばいい。この選択肢があることはわかっている。自分が踏み出す勇気がないだけだ。受け入れてくれた人に拒絶されるのが、どれだけダメージを与えるのか、ジュードには耐え切れる自信がなかった。
そんな彼の心情を察してか、彼女も今後について口を開く事はなく、愛おしそうにジュードを抱きしめるだけだった。
「愛してるよ」
そう告げたミラに、ジュードは目から何か熱いものが混み上がってくるのがかわかった。
ミラに見られてはならないと堪えてみるものの、残念ながら願いは届かずに、ミラの皮膚に冷たい雫がぽたぽたと零れていく。
「愛してるよ、ジュード」
「ミラ………っ」
「愛してる」
最上級の愛を伝えられたジュードは、彼女の名を呼ぶ以外に何もすることができず、ミラの愛してるという言葉を聞き続けては、ようやく彼女の背中に腕を回して、きつく抱きしめたのだった。
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タイトル・反転コンタクト
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