ジュード×ミラ | ナノ


染まりそうで落ちない心の持ち主







『ジュードも、ミラも、特殊な関係だよね』


周囲からこんなことを言われては、苦笑いをする自分がいた。
特殊な関係、というよりかは、ジュード自身もミラ自身も、所謂『普通』の人間とは、思考が少しばかり持ち合わせていると思う。

恋とか愛とか、まだ十五の自分には、到底理解できるものではなかった。
初恋はいつだったのかと聞かれても苦笑いをするばかりで、答えることはできなかった。
二十四時間、常に自分は考え事をしていた。他人の事を心配しているように見せていても、自分の事で精一杯だった。
そんな自分が、誰かを想ったり、付き合う事ができたとしても、きっと相手から離れてしまうだろう。
自分を大事にできない人間が、相手を大事になど、できるわけがない。

ミラとのやりとりは、本当に新鮮だった。
読書をしたり、学校の復習をしたり、寝る時間が遅いジュードは、それが旅の途中でも発生していた。

別に本があるわけでもないし、学校の復習もする必要もない。
眠れないのは日頃の習慣と、二十四時間、考えて動きっぱなしの脳が、休まることがないから。

よくよく見てみれば、寝室でしっかりと眠っているのは、ローエンだけであった。アルヴィンはいつ帰ってくるのかも定かではない。彼は昼よりも夜の人間だ。いないのも驚かず、それは定番化していたので、心配することもなかった。

ローエンは軍人として生きてきたせいだろう、休息をとれる時はしっかりと休む、ジュードは彼にそう教えられた。
いつしか、そうなれたらいいのに、とジュードは思っていた。


今宿泊している場所は、カン・バルク。
雪国であるために、夜はとても冷え込む。外に出ては確実に凍え死ぬ。
それでもジュードは外に出た。見上げれば、小さな粒の雪がどんどん降り注いでくる。
そっと掌を広げて、雪を受け止めようとしてはみたが、触れただけで、雪はあっという間に溶けてなくなってしまった。


「来たか、ジュード」


ジュードは振り返る。
そこには、屋根の下で小さく縮こまっているミラがいた。


「ミラ……!」

「なんとなくだが、今日は君が外に出てきそうな気がしてな」

「でも、だからって、そんな薄着で……しかも、いつからここにいたの?」

「うむ、いつからだろう、覚えていないな」



ジュードは慌てて、自身の上着を脱ぎ、ミラへと羽織らせる。その時に触れた彼女の肌が、氷のように冷たくなっていた。ついさっき来たばかり、というわけではなさそうだった。


「私は大丈夫だ、君が風邪を引いてしまう」

「ダメだよミラ。僕よりも薄着してるのはミラなんだから、でもとりあえず中に入ろう」

「嫌だな」

「ミラ」


ジュードの申し出を、ミラはきっぱりと断り、一言で片付けた。
こうなってしまっては、ミラは絶対に曲がらない。


「ジュード、君がここに来ればいい」


ミラが左腕を横に広げ、右手で空いたスペースを指差した。
それはミラの腕の中に来い、ということ。ジュードはミラの顔を困ったように見つめた。ミラは何をしている、早く来いと微笑みながら促していた。
こんなに動揺して、ドキドキしているのは、自分だけなのかとジュードの脳のスペースはまた、なくなってしまい、パンクしそうである。
だが、そこに行きたいと思った。簡単に考えていたら、体が動くのもあっという間だった。
ジュードがミラの左腕のスペースに入り、しゃがみ込む。それを確認したミラは、ジュードの上着半分をジュードにも掛けた。


「くっついている方が、温かいだろう」

「う、うん」


シャンプーの香りなのか、ミラからはとてもいい匂いがした。それすらにも、ジュードはくらくらして、倒れそうになる。


「さあ、ジュード。話を聞こう。君の脳を休ませてあげられるのは、この私だけだ」



こんな状態で、正直、話せることなど何も見つからない、ジュードはそう思っていた。
だが、ミラにだけは、自然となんでも話すことができた。今までもミラは自分の話を聞いてくれた。意見を述べてくれたりもした。ミラと会話するこの時間だけが、何も考えずにいられる時間だった。

勿論、話すのは自分の事ばかりではなく、ミラの話もジュードは親身になって聞いていた。きっとここまで話せる間柄は他にはない。互いにそう思っていると信じたかった。
こんな寒い夜の中でも、二人の会話は終わらなかった。



「やはりジュードでないと、話せない。私は君を頼りにしてしまっているな」

「そんなことないよ、僕だって、僕のこと、ミラにしか話せないよ」

「そうか、照れるな」



くすくすとミラは笑った。


「僕だって、そんなこと言われたら恥ずかしくなるよ」



ジュードは無意識にミラの手を掴んでは、自分の手と手の間に挟んで、温まるようにと擦り合わせた。


「ありがとう」


手が離されてから、ミラはジュードの頬に手を触れて、彼の頬がどれだけ冷たくなっているかを確認した。勝手に待ってて、勝手に引きずり込んだのは自分だ。今になって申し訳なく感じてしまったのだから。


「お礼を言うのは僕の方だよ」




この気持ちをなんと呼べばいいのか、自分にはよくわからない。
自分とミラの関係が、仲間以上なこともわかる。この胸の高鳴りがそう言っている。
そんな状態を知っていても、そういう感情だと認めていいものなのか。


でも、一緒にいたいって思うんだ。









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タイトル・反転コンタクト


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