君が私のことを考えているとき
その少年の想いを、痛いくらいに噛み締めた。
彼は気持ちを表現するのが下手だった。
家庭環境や、甘え下手なせいもあるのだろう。
近づきたいが、怖くて近づくことができない。拒絶でもされてしまったら、どうすればいいのだろうか、自分が望んでいても、相手が受け入れてくれなくては、意味はない。
ジュードは想い人である、ミラと対峙しては、緊張していたが普通に接しているつもりだった。
彼の頭の中は、彼女でいっぱいだった。彼女の特別になりたかった。
その為にはどうすればいいものか。
自分はどういう人間になれば、特別になれるのか。一息つけば、それしか考えていなかったような気がする。
ジュードの様子をミラは知っていた。
マクスウェルだと知り、クルスニクの槍に四大を取り込まれ、普通の人間となったとしても、彼は自分について来てくれた。
その時点で、ジュードはミラにとって、既に特別な存在だったのだ。
ジュードが自分の事を、よく考えてくれているのは、知っていた。
どうすれば、旅を円滑に進めることができるのか、医療ジンテクスがないと歩く事ができない自分の足の様子や、戦闘中でも必ず、ケガはないか、問い掛けてきたり。
鈍感だと言われている自分にでも、わかっているつもりだ。
「ジュード」
いつかは、言わなくてはと思っていた。
ガラスのペンダントを送った時に、ジュードへの気持ちを伝えたつもりではいたが、言葉で言わなければ、わからないこともあるだろう。
「いつも一番に、私の事を考えてくれているだろう、ありがとう」
自らの目的の為に、彼は自身のすべてを、自分に捧げてくれている。考えてくれている。
礼を言わなくてはならなかった。
それを耳にした彼は、首を横に振った。そんなことはないと言った。
違ったか、彼が求めている言葉は、こちらだったか。ミラは今一度、ジュードを呼ぶ。
「ジュード、君はもう、私の一部だ。君は私にとって、特別な男なんだぞ」
ぴくっとジュードの体が反応した。それはジュードが、ずっと求めていた言葉。
(ミラが僕を特別だって、そう思ってくれていた……?)
求めていたが、言われ慣れていない彼には、喜びの表現の仕方も下手であった。感謝の言葉を言っても、声は小さく、相手の耳にすら聞こえているかどうかも定かではないくらいに。
「ミ、ミラ、あ、ありがとう………」
ああ、やはり、今回も上手く言うことができなかった。
顔を上げることができない。恥ずかしい。
俯いていたからか、ミラがすぐ傍にいることに、ジュードは気がつかなかった。だから、顔を上げた時には、また驚いた。
「うわ…っ」
ジュードは目を閉じた。
ミラがジュードの額の髪を掻き上げ、額に唇を落とす。
あの、ガラスのペンダントを首にかけてもらった以来の緊張と歓喜を、ジュードは味わうこととなった。
「信じてもらえたか、特別なんだと。私だってな、一番に考えているのは、君のことだ。他の人とは比べものにならないくらい、本当に考えすぎてしまうんだ。君が大事だから」
「うん、あの」
「?」
「ありがとう。僕に、言葉をくれて」
今度は少年の唇が、ミラへと降り注いだ。
ジュードの唇の行き先がわかっていたミラは、瞳を閉じて、その時を待った。
今、互いが考えているのは、お互いの事だけである。
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ジュミラ小説企画
「みちゆき」様への提出物です。
タイトル・
afaik様非常にまとまりがなくて、申し訳ありません。
このような素敵な企画に参加できたことを、本当に嬉しく思います。
ありがとうございました!
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