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愛情を伝えたり、愛情を感じる行為は、人様々である。
通常の恋人同士であるならば、一緒にいるだけで、幸せだと、そう言う人も多い。
一緒にいなければ、お互いの温もりを感じることができなければ、愛情がどんどん薄れていく、ともいう。
自分は、どうなんだろう。
ミラが自分を好いてくれているというのは、正直わからない。
誰もいない時に、こっそりと手を繋いできたり、たまに抱き着いてきたり、そういう時は、密着してくる癖が、彼女にはある。
二人きりになる時は、嬉しかったが、今回は何をしてくるんだろう、と身構える時もあった。
これではミラを拒否していると思われてしまうかもしれないが、そういうわけではない。
ジュード自身が、まだ、慣れていない証拠であった。
彼女は本当に、自分の事を想っていてくれているのだろうか。
自分が何かの一線を超えてしまい、自らミラに手を出してしまった時に、ミラは自分から、離れていってしまわないだろうか。
それはまだ自分が、幼いということだった。
相手の事を信じることができない。
「ジュード」
ミラとまた二人きりになったその時、ミラはジュードの横に立ち、ジュードと少し距離を開けた。
(え…………)
絶対に腕が触れ合うと思った。
そうされると思った。
だけどミラが、そうしてこなくて、寧ろ、若干の距離をあけられたことに、ジュードはショックを受けている自分に気づいた。
この開いた距離が嫌で、ジュードは勇気を振り絞って、自ら、ミラに近づき、腕をぴたっと密着させた。
やばいやばい、ミラに変に思われたかな、嫌がられたらどうしよう、と不安がジュードを襲う。
顔なんて、もう真っ赤だ。
ミラの顔だって、まともに見れない。
「よかった」
ミラはそう言い、ジュードの腕に絡み合った。
蜜色の髪が、ジュードの服に流れてくる。
距離が縮まって、ジュードは胸の苦しさを抑え切れなくなってきた。
「ミ、ラ」
苦しくて、ミラの名を呼ぶのも、やっとの状態で。
「私が触れると、君はびくびくしていたからな、もしかして嫌だったかなと思ってな」
「ち、違うよ!嫌なわけないじゃないか!」
ジュードは、自分でも驚く程の声をあげてしまった。
ミラを嫌いになど、なるはずがない。
嫌われたらどうしようと、そう思っていただけだった。
そんなジュードの不安は、表面に現れていて、ミラに伝わってしまっていた。
「その、上手く言えないんだけど……、僕はまだ、誰かが傍にいてくれることに、慣れていなくて……」
傍にいたいが、近づかれると、怖くてたまらない。
矛盾していた。
表面に出さないように努めていたのだが、ある時彼女に言われたのだ。
「君の全部が、私は好きだよ」
全部を?本当に?
そこから、うたぐり深い自分が生まれた。
1番、嫌われたくない、彼女に対して、彼女の言葉を、気持ちを疑っていた。
「いいんだ、ジュード。自分の気持ちに正直になれ。私はちゃんと受け止めてあげるから、安心しろ」
ミラがジュードの顔を覗き込み、おでこをこつん、とぶつけ合った。
ジュードは安堵し、へへっと照れくさそうに笑うと、こんなにも自分を大事に想っていてくれている彼女に、目一杯の愛情を伝えようと、精一杯、抱きしめた。
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