※我慢できないあなたが見たい(ハルサキ)
「欲求不満、か」

それを言うなれば、まさに自分自身だと、サキは思った。 食欲、睡眠欲、そして性欲。今どれが一番の高まりを見せているかと言われれば、性欲だった。誰でもいいのかと言われれば、そういうわけじゃない。 あの感触、あの快感。求めれば求めれるほど、くっついて離れたくなくなる。

(ハルト)

サキは心の中で、愛しい男の名を呼ぶ。 心の中で呼んでいた声は、すぐに口に出して、呼べるようになったのだが。

食事を済ませ、特に用事があるわけではなかったのだが、サキはパイロットの更衣室へと赴いた。別にドルシア軍の襲撃や、訓練があるわけでもない。ふいに足がそこへと向かっていた。ドアが開閉されると、そこには誰もいなかった。

「なんだ。ハルトがいるのかと思っちゃったじゃない」

バカね。暇さえあれば、こうやってあなたを探してしまう。ひとりぼっちじゃない、あなたがふたりぼっちにしてくれたから、それだけでもうって思ってたのに。ふたりぼっちの恐怖も、サキは味わってしまったような気がしたのだ。わ かっているのに、少し離れただけでも、それが嫌だって思ってしまうなんて。おかしい。

(新しいマギウスも増えたのに、ね)

サキが感傷に浸っていると、ものすごい強烈な勢いで、ドアが開閉され、何者かが入り込んできた。

「はあ、はあ、はぁ」

そこには胸を抑え、苦しそうにもがき苦しんでいる、時縞ハルトの姿。

「ハルト!大丈夫?」
「っ、流木野さ、なんで・・・こ、こな ら誰も・・いな・っ・・・思ったの・・ に・・・っ」

ハルトの発作の様子を目の前にしたサキは、ハルトを介抱しようと思い、近づこうとした。

「来るな!」

ハルトの珍しい怒鳴り声に、サキはびくっと体を震わせる。

「ダメだよ、また、僕は・・・君 を・・・襲ってしまうかも・・しれな い、だから・・・早くここから・・・」
「嫌よ」

サキの返答は早かった。何を今更と言わんばかりの。もう彼の暴走を見てしまっている。経験もしてしまっている。一番辛いのは、 こんな気持ちを何度も経験しなければならないハルトなのだ。それを少しでも緩和できるのであれば、サキには何も恐れることは何もなかった。今の呪いはなんなのだろうか。

「大丈夫よ、ハルト、私を信じて。私だから大丈夫なのよ」

そうしてハルトの肩を抱くサキ。サキの香りを感じ取ったハルトが、「ごめん」 と一言告げた後、また更に言葉を述べる。

「欲求不満……」
「きゃっ……!!!」

壁に押し込まれたサキは、ハルトに唇を塞がれた。舌を念入りに転がされては、 その舌は耳へ移動し、ぺろぺろと舐め続ける。こんな変な感覚は始めてだ。だからなのだろうか、感じすぎて、なんだか やばい。そして耳朶も甘噛みされて、サキの口からは甘い声が響きだした。 前回は本当に襲われてる感が満載だったのだが、今回は違う。私の頭から足先まで、全部を彼が欲しているような気がする。彼を求めていたサキにとっては、好都合だ。

「あ・・・・っ」

ハルトの目は赤く、痣も浮かんでいる。 完全に意識が飛んでいるのがわかる。けれど、違う、何かが違う。 次にまたハルトがサキの前に顔を見せると、頬を、鼻先を擦りよせ、唇を塞いだ。サキの両腕はハルトの首回りにしっかりと組み付いて、離れようとはしな かった。唇を何度も挟まれた。絡み合う舌からは、唾液も溢れそうになった。懐かしい感触がまた、一ヶ所に集中する。 ハルトがサキの服を脱がしにかかるにも、そう時間はかからなかった。破かれはしなかったものの、唇を重ねている間に、いつの間にか上半身の服が脱がされていて、サキの肌が露になっている。キスで立っているのがやっとだったサキは、ずるずると地べたに倒れこみ、その上に、ハルトが股がる。 とろんとしていたサキの視線の先に、ハルトの素肌が目に入る。脱ぐのが面倒だったのか、シャツのボタンはまた引きちぎってしまったようだ。

「ハルト」

サキが右腕を伸ばし、ハルトを迎え入れようとしている。さあ、早く。今すぐ に。待たないよ、すぐにいくよと言わんばかりに、サキが待っていたハルトの重みがついにやってきた。 サキの柔らかな膨らみを、ハルトが噛みつきながら、耳を舐めたのと同じように 舐められる。執拗に交互に繰り返される。

「っ、やっ・・・っっ」

サキはハルトの頭を掴み、ハルトの愛撫に応えた。しつこいくらいに胸元を弄られるから、もう桃色の尖端はぴんぴんに 立っており、そこを指で同時に摘ままれては、サキはびくんびくんと、腰を上げて反応し、叫ぶ。

「流木野、さん」

その時、自分を呼ぶハルトの声が聞こえてきた。意識が朦朧としていても、それだけは確かにわかった。

「ハルト・・・?」

サキはハルトの両頬に触れ、顔を近づける。確認すると、痣もない、瞳の色も蒼に戻っている。発作から解放されたハルトが、サキをじっと見ている。 このままでは、ここで止められてしまう。それは困る。発作が収まったなら、今度は私の欲求も満たしてもらわなくてはならない。ハルトが何かを言おうとする前に、サキは彼の唇を塞いでしまった。

(ほら、もう、あなたも我慢できなくなるから)

唇を掻き回した後に、ハルトと位置を逆転させて、サキは下着を下ろし、ハルトの上に乗る。そして、首もとを、乳首を、かぷっと噛みついては、舌を転がして、ハルトのそこへと辿りついた。ベルトを外し、下着の上からそこをこすこすと擦る。

「く・・・っ、」

意地悪にしばらくそうした後、早く早くと言わんばかりのそれが、硬く勃起した状態で現れた。サキは口に含み、舌を巧みに使いながら奉仕を始めた。奥に含み、尖端を執拗に舐め回し、たまにちらっとハルトの様子を見つつ、続けた。

「流木野さ・・・やばい・・・」
「気持ちいい、でしょう?」
「っ・・・・あっ」

こうなってくれれば、ハルトももう我慢できないだろう。そう確信したのは、ハルトが起き上がり、サキの腰を掴んで、 自分のそれを入れようとしている瞬間だった。

「待って、私が入れるから」

完全に主導権を握ったと確信した。サキもハルトが欲しくて堪らなかった。ハルトのものが、サキの中へすんなりと入っていく。入った時のこのなんともいえな い感覚にサキは甲高い声を上げた。 自分で腰を動かそうとも思ったが、そうはできなかった。ハルトがサキの腰を動かしていたのだ。たまらずサキがハルトに抱きついた。密着したせいで、サキの奥深くへハルトが到達して暴れだす。

「ふぁ・・・あぁっ、ダメっやだ」
「でも、気持ちいい・・・んでしょ、流木野さん」
「・・・っ、はん・・・」

ハルトから、こんな言葉をもらえるとは思わなかった。 いつの間にか握られていた主導権に、サキは悔しさも何も感じずに、ハルトを目一杯感じていた。ちょっとだけ声が大きいからと、口づけをされた。それでも声は漏れてしまったが、押し入ってくる感覚には逆らえない。 キスをしながら寝かされた後に、ハルトが呟く。

「もうダメみたいだ・・・」

こくこく、とサキは頷いた。両足を持ち上げられて、ハルトはサキを高速で突き上げた。小刻みに襲う下半身からの快感に、サキはハルトの名を叫びながら、頂上に達した。それはずっと待ち焦がれていたものもあって、更に感度を上昇させ、そして果てた。

「流木野、さん」

サキから自身を引き抜いたハルトは、焦点が合ってないサキを起こし、サキをぎゅっと抱きしめた。 ああ、また、何か言われてしまうのか。 意識がはっきりとしないから、上手い言葉が何も浮かんでこない。

「受け止めてくれて、ありがとう」

ハルトはそう言ったのだ。 その抱擁が汗で冷えそうになった体を、 また温めていく。

「何よ、バカ・・・当たり前じゃない」

そんな事を言うから、またあなたを欲しがるようになってしまうんでしょう。
ハルトが正気に戻ってから、あなたを襲ってしまったのは、私の方だ。それはこっちの台詞だ。


だけどそれは言わなかった。欲しがった温もりがそこにあるから、いっぱいいっぱい、浸透させておきたくてたまらなかった。


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