※私があなたの理由になる(ハルサキ)
つくづく、自分の執着心には驚かされる。
特別という言葉が好きだった。自分は選ばれたんだという気がしたから。それはアイドルになれば、満たされるものだと思っていた。けれど、心は満たされなかった。

時縞ハルトと出会ってから、サキの中で何かが少しずつ変わっていた。たくさんの秘密を共有していくなかで、この人との繋がりが、もっともっと欲しくて堪らなくなった。
呪いを受け継いでいるあなたと、私の繋がりを、もっと、もっと。
時縞ハルトをもっと、もっと。

それがまさか、あんなことになるとは、思ってもいなかったのだが。

ハルトの性格の事だ。優しさ故に、優しくされるのは辛かった。ハルトは覚えていなくても、私は覚えている。あなたの肌の温もりも、私の体をなぞる指先も、激しく求められたあの柔らかい舌先も。

「私に申し訳ないって思うなら、今日は私と一緒にいてくれる?」

あの後の帰り道に、ずっと申し訳なさそうにしているハルトを更に追いつめてしまうかもしれないが、サキの口からは、こんな言葉が出ていた。暴走したハルトではなく、今度は時縞ハルトと共にいたかった。サキの中では、どちらもハルトである事に代わりはないのだが、こちらの時縞ハルトにも、私の事を刻み付けてやりたかった。

「一緒にって、本気?僕は君に、あんなことをした後だっていうのに、君は僕の事、怖くないの?」

足を止めて、目を閉じ、俯いているハルトを少し見つめて、サキは困った表情を見せながらも、優しく微笑んで。

「バカね。嫌なら、あんたをビンタして、とっくに帰ってるわ。二度と顔も見たくないって、呟いて」

一歩ずつハルトに近寄ったサキは、ハルトの手を握りしめると、そのまま彼の手を引きながら歩き始めた。
本当は、逆なんだろうけど。
だから、傍にいてあげなくちゃって、守ってあげなくちゃって、見ていてあげなくちゃって、そう思ってしまう。
ハルトを連れて向かった先は、もはや無人となっているホテルの一室だった。
ほんのりと照らされているランプが、ハルトを照らす。サキには彼が、自分の最後の光のように見えた。

「ハルト」

ハルトをベッドへ座らせたサキは、ハルトをそのまま包み込んだ。

「貴方から謝罪の言葉だったら、いらないから」
「え?」
「貴方に私は謝らなきゃいけないの。貴方に自分の存在価値を見出だしている、私だから」

ハルトとは、切っても切れない関係になってしまったのは事実だ。だから、また秘密を共有するのも悪くない。貴方がもっと私を必要として、罪悪感なんか捨てて、私の事ばかりを考えればいい。

「存在価値?」
「ハルトは優しいから、私の事を話したら、きっとわかってくれる」
「流木野さんの、こと?」
「ふふ、なんて、もうわかってるか、繋がっちゃったもんね」
「それは」
「・・・あんなことがあった後で、こういう場所に連れてきた。一緒にいてって言った。男のあなたなら、どういう意味か、わかるでしょう?」

囁きながら紡いだ言葉は、ハルトの返事を待つ前に、ハルトの咥内へと吸い込ませた。サキはハルトの太股の上にちょこんと座り込み、ハルトの咥内へと舌を絡ませた。

「流木野さ・・・」
「ハルト。お願いよ、私を受け入れて。お願い・・・」

少し離した唇で、サキはハルトに懇願する。ここでサキを突き放してしまえば、更にサキを傷つける。もう彼女を傷つけてしまうことなど、ハルトにはできなかった。サキの髪を指で掻き分けた後、ハルトは、サキの唇に舌を押し込む。

「っ、ぁ、んんんっ」

押し込まれた舌は、サキの咥内を暴れだす。優しくもあったが、とても激しい。そうされたことでサキは、ハルトが自分を受け入れようとしてくれていることを理解した。やっぱりね、とも思った。でもそれでよかった。
ハルトはサキの、サキはハルトの、互いの身に着けているものを、唇を重ねあいながら脱がせた。


「流木野さん」
「サキよ、サキ・・・っ」
「・・・サキ」

欲しい。ハルトがもっともっと欲しい。先程とは全然違うハルトの動きに、サキはまた嵌まっていく。更にハルトを追いつめてしまったかもしれない、少しばかり後悔に苛まれたサキだったが、ハルトが、自分の意思で、今私にキスをしている。私の体に触れている。

(もっと狼になっちゃえばいいのに)

ハルトに押し倒された感じでベッドに横になった二人。ハルトが何度も自分を見つめていてくれた事に、サキは歓喜する。枕の上ではなく、ベッドの真ん中で、サキの長い髪が広がっては動いている。それはハルトが、サキの体を翻弄している証拠だった。自分が襲わった痕跡を消す為の愛撫とも見て取れた。体はそうしていても、心は覚えている。ハルトもその事は充分わかっているであろう。
さっきだって受け止めたんだから、そんなことしなくて大丈夫なのにとサキは思った。だが、そのハルトの愛撫が心地よくて、サキは何度も何度も喘いだ。

時折ハルトから聞こえる、荒れた息遣いが、とても愛おしく感じられた。

「サキ」

ハルトに仰向けにさせられたサキの中に、ハルトが進入を開始した。奥まで入った事を確認すると、ハルトはサキの体に覆い被さり、腰を動かし始めた。サキの声はベッドの奥深くへたくさん消えていった。ハルトの温かい肌に触れているだけで、満たされてしまうなんて思わなかった。サキはハルトの名を呼び続けた。ハルトの口が自分の耳元にあるから、ハルトの声も直に聞こえ、サキを興奮させた。ダメだ。もうダメだ。この人じゃないと私は嫌だ。
触れる肌も、絡ませあった指も、互いを呼ぶ声も、覚えてしまったから。離れる事など不可能だ。
ハルトはサキの体を気遣い、間を置きながら、また突き上げる。

「あ・・・あぁぁああああっ!ハルトっ・・・!」




それだけでもう、明日世界がなくなってしまってもいいって、そう思えた。


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