キミとの距離(R-18)











※観覧注意













「ちさき」


彼女をこう呼ぶようになったのは、いつからだっただろうか。
彼女を視線で追いかけるようになったのは、いつからだっただろうか。
それはもう、ずっと前からの遠い記憶。
近くて遠い、触れそうで触れ合えない距離に、ずっといる。それだけはずっと自覚していた。

「どうだった・・・?」

だからあの時、ちさきが帰ってきているのを知らなくて、着替えをしている時に部屋に入って、ちさきの下着姿を見てしまった時、正直かなり気が動転した。なんで電気をつけていないんだとか、変な言い訳をしながら、平常心を保たなければとそう思いながら。

でもそれもまた、上手くいかなかった。

ちさきが泣き出してしまったからだ。

聞くに耐えきれなくなった紡が、襖を開けて、ちさきの腕をぐいっと引っ張り、そしてちさきの唇を塞ぎこんだ。

「つ、紡・・・っ・・・!」

ちさきには何も言わせる時間を与えないまま、紡はちさきの体を抱えて唇を割り込み続けた。ちさきの体はふらつき、やがて立っていることすら、ままならなくなる。

「はぁ、はぁ・・・っ」

涙でいっぱいの瞳をじっと見つめて、紡はちさきを畳の上に押し倒した。ちさきの上半身の下着姿の体をじっと見つめて、それからその素肌に唇を落としていく。なぞられる紡の舌の感覚に、ちさきは変な声が出そうになって、それを出さないように、ただ耐えていた。

「ねえ、なんで、どうしてこんな・・・」
「ちさきが、どうだった?って聞いてきたから、その答えを返してるつもりだ」
「っ、意味がわからないよ・・・?」
「だから、こういうことをしたくなるくらい、ってことだ」


紡の大きな手のひらが、ちさきの胸に触れた。ちさきの背中に手を回し、ブラのホックを外して、ちさきの露になった胸が、紡の視界を捉える。

「見ないで・・・・・・」

ちさきは恥ずかしくて、胸を隠そうとしたが、紡が両腕を抑え込んでそれを阻止する。大人の女性へと成長を果たした体つき。

「綺麗だよ、ちさき。とても綺麗だ」

そう告げた紡にちさきは顔を真っ赤に染めた。そして紡を見つめ直しては、彼の肩に手を伸ばして、そっと触れた。頼りがいのある紡の背中を、ずっと見つめてきていたちさき。こうして正面から改めて見つめると、私はこの胸の中で何度泣いてしまったんだろうと思いを馳せる。あれからずっと、紡は傍にいてくれた。

「俺は変わったと、思うか」

紡はちさきに問いかけてみる。ちさきは、微笑みを見せては首を横に振った。それは変わってないよ、という意味を持っていた。そうか、と紡が言葉を返した後、彼は上半身の服を脱ぎ捨てて、裸になった。その逞しい体を見て、ちさきはまた、顔を赤らめた。

「変わった、ね」
「・・・変わらなかったら、おかしいだろ」
「そっか、そうだよね」
「体つきは変わっても、心は変わらない。俺はそう思ってる。お前もそうじゃないのか」

はっ、とちさきが紡の言葉の意図に気付いた時にはもう、紡の問いかけは終わり、彼はちさきの体に触れていく。やめてと言うことができず、それはすぐに、やめてほしくないに変わっていった。触れられていく体のひとつひとつが温かくて、優しくて、それは本当に紡の優しさのもので、ちさきは、紡に身を委ねてしまっていた。
舌で身体中を愛撫されている。初めて味わうその感覚に、ちさきの体は痺れて、びくんと反応するのを繰り返した。指や舌が優しくて、繊細で。

「っ、や・・・ん」

こんな声初めて聞いた。こんなの知らない、聞いたことがない。ちさきが恥ずかしさを増せば増すほど、紡の指使いが更に丁寧になっていく。ちさきのスカートと下着を下ろし、下に手を触れた瞬間に、紡は彼女の状態を更に理解した。

「そういえば、初めてなんだよな、お前」
「あ、当たり前でしょ」
「そうか。わかるか今、自分の体がどうなっているか」

紡の指がちさきの中に入り込んできた時、ちさきは甲高い声をあげた。
自分の体なのに自分の体ではないみたいだ。

「紡こそ、あの、その初めて・・・なの?」
「ああ、そうだけど」
「・・・そう、なんだ。あの・・・」
「俺はもうずっと、ちさきにしか興味がなかったから」
「っ・・・・・・・!」

紡はこんなことをさらっと言う人だったか、とちさきは思っていたが、いつも彼は本当のことしか言わない。そしてそれは、言葉数も少なくて。だからどうしても問いたくなってしまうんだ。

紡のズボンのチャックが下ろされている音が聴こえてきて、ちさきは不安そうに紡を見つめる。それに気付いてか、紡はちさきの頬をそっと撫でたが、言葉を発することはなかった。紡のものが、ちさきの脚の奥へと入り込もうとしている。それはゆっくりと、ちさきの中へと潜り込み、ちさきの体はそれを呑み込んだ。

「・・・っ・・・あぁっ・・・!」

少しだけ痛みが走ったのだが、徐々にそれは薄れていく。中に入り込んだのを確認してから紡は、ちさきの体を起こして、太股の上に座らせた。角度が変わったせいで、ちさきの体は仰け反り、紡がしっかりと体を支える。動くのをやめて、ちさきが起き上がってくるのを、待った。
ちさきが、体を起こすと近い位置に紡の顔があって、きゃっとちさきは言ってしまった。

「ちさき」

紡が名を呼び、ちさきにキスをする。それはすぐに離されたが、紡の唇はすぐ目の前にあり、離れようとはしなかった。

「あ、あのね、紡。さっきのは」
「俺はずっと、ちさきに触れたかったんだ。だから、謝らない。やっとこうすることができて、寧ろ嬉しい」
「・・・うん、私もだよ」
「ちさき」

ちさきから紡に唇を重ね、それを追いかけるように紡が、ちさきの舌を捕まえて絡ませる。それと同時に、ちさきの腰を掴んで、浮かせて沈めてのリズムを繰り返した。重なりあってる唇の奥から、ちさきの喘ぎ声が漏れた。乳房が紡の胸板を擦り、揺れている。
リズムはやがてスピードを早め、ちさきは紡にしがみつき、もうダメだよ、と何度も連呼し、最後はもうどうなったのか、覚えていなかった。

次にちさきが目を覚ましたのは、深夜1時ぐらいだった。いつの間にか寝かされていた布団の隣には、紡がいて、ちさきを抱きしめていた。

「え、あ、あの、私」
「起きたのか、ちさき」
「紡・・・」


先程までの行為を思いだし、ちさきは紡の顔をまともに見れそうになくて、目を閉じてしまった。でもすぐに目を開けてみたら、紡が変わらずに自分の事を見ていて、もうどうしようもなくなってしまった。ちさきが果ててしまった後に紡はちさきを布団に寝かせ、一度部屋を後にする。夜も更けた後、再びちさきの部屋を訪れたが、まだちさきは眠っていたため、こうしてここにいたんだと、言った。

「だから紡、服を着て・・・」
「脱いでほしいのか」
「そういう、ことじゃなくて・・・」

不思議だなと、ちさきは思う。
この人と一緒にいるだけで、生まれてくるこの安心感はなんなんだろう。もうずっと前からの、この感覚は。
要たちとは違う、この気持ちは。光とも違う、この気持ちは。

「ちさき」
「うん」
「俺、忘れないから。さっきのお前の言葉」
「私だって、忘れないよ。俺はずっと、ちさきしか興味がない、って」
「事実なんだから、仕方がない」
「・・・。でもね私は、中途半端でこんなことは」
「わかってるよ。俺はちさきを、ずっと見てきたんだから」



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