蜜(R-18)


広い家の中での二人きりと、狭い部屋での二人きりになる感覚は、まったく違う。息を呑みそうになった。今までこんなに緊張したことがあっただろうか。
彼が住む一人暮らしのアパートへ行くことが決まったその日の夜、3日後、1週間後、そして前日。手帳の日付に×が増えていく度に、ちさきはこれ以上にない緊張感を与えていた。久しぶりに会えるせいだからと、そう自分に言い聞かせていたが、本当はそういうわけではない。
自分のわかる距離に紡を感じたい。彼の姿、声、温もりすべてを。付き合い始めて、紡が離れた場所に行ってしまってから、余計に淋しがり屋になった気がしていた。


本当は予定通りの時間に着く予定だったが、少しばかり遅くなった。早すぎてもダメだしとか、余計な事を考えながら向かっていたら、いつの間にか時間が過ぎていたのである。
ちさきはふうっと深呼吸をし、紡のアパートの部屋の呼び鈴を押す。

「はい」
「っ、あ、あの、わたし。ちさき」

紡の声が聞こえた瞬間、ちさきの声は裏返り、そして言葉も詰まる。紡に変な風に思われたかもしれないと、ちさきは恥ずかしそうに目をぎゅっと閉じた。目の前のドアが開けられても、それは続いた。
そんな状態のちさきを目にした紡は、声をかけることをせず、ちさきの腕を引き、ドアを閉める。

そしてそのまま、ちさきを自分の胸に引き寄せた。

「え、あ、紡・・・?」

ふいを突かれたちさきは、持っていた荷物を床にドサッと落としてしまった。

「待ってた」


そう囁いた紡の腕に力がこもる。
待ち焦がれていた彼の温もりと、声と、姿をこうして感じ取ることができたちさきは、その想いを紡に伝わるように、そして紡を感じたいが為に、宝物を大事にするように抱きしめた。
それが数分続いた後、紡はちさきを抱き抱えて、部屋の奥に進んだ。奥にあるベッドに寝かされたちさきの身体の上に紡が乗り、ちさきと目線を合わせる。

「会いたかったよ」

ちさきは手を伸ばし、紡の頬に触れる。その手を紡は握り締めて、自分もちさきの頬に触れた。
こんな気持ち知らなかった。自分の欲求が大きすぎているのだろうか。彼に触れているのが嬉しい。触れられているのが嬉しい。もっともっとぎゅっとされたい。してあげたい。

「もっと抑えられると思ってたんだけど、ちさきの顔みたら、全部ぶっ飛んだ」

紡は顔を近づけて唇を重ねてきた。それに呼応したちさきが、首に手を回し紡の唇を追いかけた。それが深いものになるまで時間はかからずに、舌を絡ませあいながら、唇を重ね続ける。
求められる事の重要さを理解した気がした。片方が一方通行なら、絶対にこんな風にはならない。私も彼を求めて、彼も私を求めてくれて、だからそれが溶け合って、ひとつになるんだって、ふとそんな事を脳裏に浮かべた。

「紡、紡・・・・・・」

唇が少し離れた後、ちさきは紡を呼ぶ。鼻と鼻を擦れ合わせ、紡の唇はちさきの首筋と鎖骨に移った。
ちさきは目を閉じて、神経が痺れる快感を味わった。紡の舌や指が触れる度に、身体はピリッと震えて、それと共に甘い声が漏れる。紡の肩を掴みながら、もっともっと、と思いながら。

紡は上半身の服を脱ぎ、そしてちさきの服を脱がせて、下着状態にさせた。ちさきは目を開けて、今更ながら恥ずかしさが込上がり、紡から目を反らし、口元に手を当てた。
紡がちさきの背中に手を回し、ブラのホックを外す。それを取り除いて、ちさきの耳元で囁いた。

「ちさき」

どくん、とちさきの心臓が動く。それはちさきを刺激するには充分なもので、ちさきは呼吸がだんだんと荒くなってきてしまった。

「っ・・・は」
「ちさき、俺を見て」

もうダメだ。何を言われても心が掻き乱される。想いが破裂しそうになる。
ちさきは目線をゆっくりと動かして、紡を見た。

「さっきまでは見てくれただろ」
「だ、だって、やっぱり、こういうのは、恥ずかしいから・・・」
「俺は見てるよ、ずっと、ちさきのことを」
「ぁ・・・んっ・・・・・」

再び塞がれた唇と共に動く、紡の指。乳房を揉まれては、人差し指でちさきの乳首を弾いては摘まむ。ちさきの身体は動き、重ねられている唇を離しては反応する。
その反応のひとつひとつが、紡を刺激する。ちさきを求めているのは紡も同じで、それはちさきよりも遥かに上だと、紡はそう思っていた。

「紡・・・余計なこと考えないで」

その時、ちさきが発した。

「全部ぶつけて。紡の思うようにして。私がされたいの。紡をたくさん感じたいの」

ちさきがそう言ってからの紡は、遠慮をしなくなった。自分がしたいようにちさきを攻め続けた。愛撫する度に揺れる乳房。片方を口で、片方を指で触れ続けて、ちさきは目の前が真っ白になっていった。

「あぁ・・っ・・・も・・・やぁ・・・」

そうして下半身に手を伸ばしてみると、くちっと音がするくらいにぬるぬるに濡れている。こすこすとそこを指で往復し、中に指を入れてみると、またくちゅくちゅと音がした。

「っ・・ああっ・・・」
「ちさき・・・これ、気持ちいいか?」

紡は中で指を動かし続けてみると、ちさきは返事の代わりに身体で反応を示した。もう挿れるには充分なくらいに濡れている。引き抜いた指に絡み付いたちさきの愛液。それは感じてくれている証拠だった。

「ちさき・・・挿れるぞ」

紡の言葉と共にぼんやりと紡を見つめたちさきは、身体を動かすことができずに、こくっと頷いた。
ちさきの足を広げて、場所を確認する。そしてすぐに、紡のものは、ちさきの奥へと突き刺された。


「っああぁぁああ・・・・っ!!!!!!!!」

入った瞬間に身体中に電気が走った。ちさきの目の焦点が合わなくなった。それほどのものだった。中に入った事を確認した紡が、ゆっくりとピストンをすると、ちさきが小さく叫ぶ。数回動かした後、紡がちさきの顔に顔を近づけて近づけ、おでこをぷつけた。

「気持ちいいか?」
「・・う・・・ん・・・」
「・・・・よかった」
「・・・紡」
「?」
「好き・・・大好き・・・」
「・・・知ってるよ」


紡は微笑むと、腰を動かすのを再開した。ちさきが、紡にしがみついて、苦しそうにもがいている。ああ、こいつは、なんでこんなに可愛いんだろう。感じてくれるのが嬉しいから、やめられなくなる。

そう思っていたのはちさきも同じで、紡の荒れた呼吸と表情を目にしては、自分も無意識に腰を動かしてしまっていた。きゅっと引き締まると紡が少しだけ顔をしかめて、みたことない顔をする。

「気持ち・・いいの・・・?」
「・・・っ、当たり前だろ・・・」
「私も気持ちいいから・・・身体が反応しちゃってる・・・」

意識がふわふわしている。身体がもう私のものじゃないみたいだ。紡と完全にひとつになったような、そんな気持ちになって満たされていた。

「・・・ちさき、好きだ・・・っ」
「・・・・ああぁぁぁっ、ひぁっ、んあああっ・・・・・!!!!!」

その後に一気にきた突き上げに、ちさきは声にならない声を上げた。もうその動きは止まらなかった。一定のスピードを保ったまま、突かれ続け、ちさきはシーツを握り締めて紡の腕の中に支配されて捕まった。


紡は背後からちさきを抱きしめて横になっていた。ちさきは重心を紡に預け、背後から寄り添う。
ずっと求めていた。この温もりを。腕に包まれるその時を。ずっとこうしていたいくらい。

「・・・紡のせいだよ」
「何が」
「・・・私、こんなに欲求多い子だって思わなかったのに、紡に抱きしめてほしいとか、触れてほしいとか・・・」

その時ちさきは、しまったと口を閉じた。

「・・・あんたは、本当、何回俺を翻弄させれば気がすむんだ」


ちさきの告げられた言葉に応えるよう、紡はちさきの柔らかい身体を、逃げることがないようにしっかりと捕まえて離さなかった。






▼  
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -