広大なエレンピオスの荒野を、エルと共に歩く。
緑のない荒野からは、悲しみを物語る。
分史世界の自分を倒し、その自分に寄り添っているエルを、遠目からぼんやり見ている時も、大きく丸い太陽の紅い光が、自分を真っ赤に照らしていた。
血染めの自分を象徴しているかのようだった。
自分に関わる大切な人達が、自分の手によって、次々といなくなっていく。
両手がとても重い。
あの時こうしていれたなら、とか、他に方法があったかもしれない、とか、迷わなかったと言ったら嘘になる。
割り切って、割り切って、割り切って、こうしてこの地の足を踏んでいる。
勿論、あれからエルとの会話は急激に少なくなり、エルはレイアやエリーゼと一緒にいるようになった。
そんな最中、エルがついて来てとルドガーを誘いだし、こうしてここに来た。
背後から覗かせる、エルのタイムファクター化の進行具合を目にしては、ルドガーはまた自分を責めた。
(俺、は…………)
本来なら、エルの傍にいることすら許されない自分が、こうして一緒にいることにさえも、罪の意識を覚える。
エルが振り向いてルドガーを見た。
自分と同じ色の瞳を見ては、ヴィクトルを思いだし、目を反らしたくなったが、止めた。
エルが緊張している面持ちを見せながら、小指を出して、ルドガーに向けている。
ルドガーはしゃがみ込み、小指を出した。
「エルとルドガーは、これから、新しい約束をします」
そう言い、ルドガーと小指を絡めた。
「エルはこれから先、何があっても、ルドガーの味方でいます。ごめんねルドガー。エルのせいで、辛い思いばっかりさせて、ごめんね」
「……っ……バカだな、何言ってんだよ、俺より辛い思いしてんのは、エルの方だろ」
「エルは…大丈夫だよ。だって、ルドガーがいてくれるから。だから大丈夫だよ」
彼女にとっては、自分の存在が、最後の支えなのだ。それがすぐにわかった。
それはルドガーも同じだった。約束を交わしたこの小指の繋がりこそが、違いの支え。
ようやく目を見合った二人は、翡翠色の瞳に互いを映し、目と目を見て新しい約束を交わした。
『俺はエルを守るよ、絶対に』
それだけが、今の自分のすべてだ。
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タイトル・Evergreen
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