TOX2 | ナノ

※視線の先には(アルレイ)

ちょうどその時は、仕事の資料が山積みになって、一部を家に持ち帰って行おうって思っていた時だった。
別に会社で行ってもいいことではあった。完徹するのは確定してしまうし、眠ってしまうのは仮眠室のソファーの上だろうし。
その方がいいとわかっていても、それでも彼女は家に帰りたいと思っていた。アルヴィンが待つ、あの家に。

最近、どういうわけだか知らないが、アルヴィンの行動ひとつひとつに、ぴくっと震えを感じてしまう自分がいるのが怖い。悪い震えではなく、緊張しての震えだ。
自分に近づいてきたら、抱きしめられるのかなって思うし、顔が近くなれば、キスをされてしまうのかなと思い、目を閉じそうになってしまう。

それでも彼は、何もしようとはしなかった。そう、何一つもないのだ。

今、こうして同居しているのだって、レイアがアルヴィンの借りている部屋の空いてる一室を使わせて貰ってるだけなのだ。
わたしが、少しも意識しないとでも思った?と、レイアはそれを提案してきたアルヴィンに言おうと思ったのだが、言えなかった。アルヴィンの返答を聞くのが怖かったから。
そうして一緒に住み始めて数ヶ月。それは以外にも楽しい日々ではあったのだが、レイアには先程のように、反応してしまう自分に苦しさを感じていた。

(わたしが、アルヴィンのことを好きなのはわかってる、わかってるけど)

あの手に触られたい。あの腕で抱きしめられたい。その声で囁かれたい。

(あー、本当ダメだ!わたし、いったいどうしちゃったの・・・・・・・・)

ぼんやりとしながら、レイアは職場の階段を降りようとしたが、数段足を滑らせて、転び落ちてしまった。

「っ、いたたたた・・・」
「ちょ、レイア、大丈夫か?」

ちょうどその場に出くわした、レイアの会社の先輩の男性が、レイアに駆け寄ってくる。

「あー、はい、大丈夫です」
「ふむ、どれどれ」
「っ・・・・・・・・!」

男性は、靴を脱がし、レイアの右足首をぎゅっと掴むと、レイアは顔をしかめて、痛そうな反応を示した。どうやら足を捻ってしまったらしい。

「あ、あはは」
「これだと歩けないだろ、送ってくよ。家どこ?」
「いえ、大丈夫ですから、お気になさらず」
「いーよ、俺も今日は帰るとこだったし、お前がいつも頑張ってるの見てるから、御褒美っつうことで」
「は、はい・・・・・・・」

会社からそんなに遠いわけでもないし、せっかくだから、御言葉に甘えてしまおうと思ったレイアは、先輩に送ってもらうことになった。
行き先を告げると、じゃあ近いから、おぶってやると言われた。さすがに拒否しようと思ったのだが、それならお姫様だっこの方がいいかと言われ、おぶって下さい、とレイアはお願いした。

道中、いろんな話をしたけれど、それでも思い浮かぶのは、アルヴィンの事ばかりだ。こうして先輩におぶられていても、アルヴィンの姿と重ねてしまう。広くて大きな、あの背中。

(わたし、本当に重症なんじゃ・・・・・・)

こんなんじゃまずい、しゃんとしなきゃ、変に思われる。先輩におぶられながら、レイアは一人葛藤を続ける。


自宅へと辿り着いたレイアは、家の前まで連れてきてくれた先輩に、下ろしていいですよ、と呟いた。
そうして下ろされたあと、レイアはありがとうございましたと、深々と頭を下げる。

「まあまあ、荷物は?中まで持っていかなくて平気?」
「はい、お手数おかけしちゃって、すみません、今度お礼させて下さい」
「お礼、ね。それなら」
「?」

先輩はレイアのキャスケットを外し、束ねた髪をほどく。長く肩までかかる茶色の髪がふわっと揺れた。何が起きたのかわからず、レイアはぽかんとしていた。

「可愛いよ、レイア。ずっと見たかったんだ、君が髪を下ろしているとこ」
「え、えっ、あの??」
「はい、それまでー」

先輩が玄関のドアに手をつき、レイアに顔を近づけようとした瞬間、手をパンパンと叩き、その行動を止めようとした人物がそこにいて。

「あ、アルヴィン」
「こらこら、口説くのは別の場にしてくんない?通行の邪魔。ってかそこ、俺んちなんだけど」
「え、あ、なんだ、そういうことか、悪いなレイア、お疲れ!また明日な!」
「ちょっ、先輩!?」


アルヴィンと対峙した先輩は、おそらく、アルヴィンの見た目に危機を感じたんであろう、とレイアは思った。それで、びっくりして、すぐに立ち去ってしまったんだろうと。ちょい悪風にしているアルヴィンだから、そう思われても仕方がないのかもしれない。
とはいえ、ここにアルヴィンがいるということは、さっきまでのやり取りを見られていたということになるんだ、とレイアは気づき、何も言葉が出てこなくなってしまう。

「いっちょまえに、口説かれてるんですなぁ、レイアさんは」
「へっ?えぇっ、口説かれてたの?」
「そうだろ。おたくもやるじゃん」
「え・・・・・・・・・」

なにそれ、どういうこと?
アルヴィンは、わたしが他の男の人に口説かれても、これっぽっちも気にしてくれてないの?
レイアの胸はズキズキと痛み、それは足の痛みよりも遥かに痛い。

「・・・バカ」
「は?」
「アルヴィンの、バカ!!!」
「バカ、お前、叫ぶな、近所迷惑だろ」
「知らない!!!バカバカバカバカ!」

レイアはこれでもかというくらいの声で、アルヴィンにバカバカと言い続けていた。こんなことをしている自分の方がバカだってこともわかっていたが、止められなかった。
アルヴィンはレイアを自分の胸に押し付け、レイアの声を封じ込める。そうして玄関の鍵を開けて、室内へと入り込んだ。

「ったく、何そんな怒って・・・」

レイアを離し、少しでも落ち着かせようと思ったアルヴィンだったが、レイアにスカーフを思いきり引っ張られ、そして唇を奪われた。

「レイ・・・・・・・っ」

触れるというよりも、押し込めるというのが近かったと思うが、レイアはもう耐えられなかった。アルヴィンの唇に触れて、ほら、さすがにこうまでされたらわかるでしょって、そう思いながら。

「好きな人に、そんなこと言われる気持ち、アルヴィンにわかる?」
「・・・・・・・・・!」
「わかんないか、わかんないよね」


こんな形で伝えたくなんかなかったのに。レイアはもう泣きそうで、アルヴィンに気持ちを伝えてしまったことにも後悔して、逃げ出したくてたまらなかった。きっと足さえくじいていなければ、この部屋から飛び出して、走り出しているはずなのに。
アルヴィンの返答が、なんにも返ってこないから、レイアはアルヴィンを横切り、右足をひょこひょこと動かしながら部屋へ帰ろうとした。手をぎりっと握り締めたアルヴィンが、その手でレイアの体を抱き寄せると、そのまま玄関のドアへ彼女を追いつめた。

「何する・・・・・・・・・・っや・・・だ、っ」

アルヴィンはレイアの顎を持ち上げては、唇を塞ぎこんだ。奥へと入ってくるアルヴィンの舌に、レイアの咥内は掻き乱されていく。レイアは対処の仕方がわからず、ただ入っているアルヴィンの下の動きに応えることしかできなかった。


「ん、ふ・・・・・・・・ぅ、ぁぁ」

ちゅくちゅくと音がして、それだけでも恥ずかしい。耳も指でこすこす擦られて、左足だけで体を支えていたレイアには、立っているのも限界で、崩れ落ちそうになったのを、アルヴィンの腕がレイアを抱き抱え、そしてまた口づけは続いた。

「っ、やぁっ」

アルヴィンがレイアのジャケットから胸元にてを偲ばせ、胸を揉んだ。服の摩擦がレイアの乳房を刺激し、変な感覚になっていっているのがわかって。

「はぁっ、ぁぁん・・・・・・/」
「レイア」

その時、やっとアルヴィンが反応を示してくれた。レイアは呼吸を荒らしながら、アルヴィンの顔を見た。涙で滲んでいるから、ぼんやりとしかみえなかったのだが、目を合わせた時、軽く啄むようなキスをされると、アルヴィンの指は、レイアのショートパンツを脱がしにかかっていた。

「――――――――!」

舌は首筋を辿り、ショートパンツを下ろした指は、レイアの下着の中に指を入れて。

「やぁっ、ダメ、そこは」
「何言ってんだ、もうこんなにしてるくせに」
「撫でないで、掻き回さないで・・・・・・ぇっ」

ついに腰を落としたレイアは、ドアに寄りかかりながら、下半身に襲いかかる刺激に耐えていた。

「そうだよな、抑えないと聞こえちゃうもんな、さっきの勢いはどうした、レイア?」

アルヴィンがレイアの秘部の中心に吸い付き、舌を何度もペロっと舐め続けた。たまらずまたレイアが声を上げた。足の指先がぴくんぴくんとなり、のたうち回りたくて堪らない。体が熱くて何かが、何かが弾けてしまいそうで。

「あっ、やだあぁぁっ、んんっ、ああぁあぁっ、アルヴィンっ・・・・・・・・・!」

太ももがびくんと痙攣し、腰が浮く。

「イっちまったか」

レイアのここに意識非ずの表情を見たアルヴィンは、そう呟くと、休む間もなく、レイアの両足を持ち上げた。

「っ、」
「足ケガしてんだろ、俺の肩に乗せとけ」
「えっ、あの・・・・・・・・・ひあっ!?」

レイアの秘部に、アルヴィンのものが、ぐいぐいと挿入を開始した。レイアは身体中がビリビリと電気が走ったような感じになり、ダメダメと、何度も叫び続けた。

「きついな・・・締まる」
「はぁぁん、やっ、あぁる、び、ん」

苦しくて、レイアはごめんなさい、もう許して下さいと、心の中で何度もアルヴィンに謝り続けた。
だけど、今、こうして自分はアルヴィンと繋がっているのだ。ぼんやりとそんなことを考えながら、レイアは幾度も突かれて、突かれて。

「だめ、もう、ダメぇぇぇっ――――――!!!!」
「俺も、だ・・・レイア・・・・・・・・!」

アルヴィンに腰を持上げられたレイアは、秒速に刻まれるリズムに呑まれ、そして、果てた。

ダメだ。頭がぼうっとしていて、思考回路が停止している。わかっているのは、体全体が熱を帯びているということだけ。
アルヴィンはレイアをすぐに起こし、そしてぎゅっと抱きしめた。ああ、アルヴィンの香りがする。わたしの大好きな、アルヴィンの香りが。

「悪かった、こんなとこで」
「・・・」
「でもな、お前だって悪いんだよ、俺が今まで、どんな気持ちだと思って・・・20歳になるまでは、って、抑え込んでいたっつうのに」
「・・・」
「・・・・・・・・・レイア?」

レイアは気を失っていた。アルヴィンは一番大事なことを、今話そうとしてたっつうのにと思いながら、腕の中で眠りについたレイアを見つめていた。

「余裕がなかったのは、俺もだな、こんなとこでヤっちまって・・・。ごめんな」
「ん・・・・・・・・・」
「好きだよ、レイア」




今度また、ちゃんと伝えるからと、そう呟きながら。



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