TOX2(フライング) | ナノ

無言の愛言葉(ジュミラ)







「あの、面白い本があるんです、よかったら、読んでみませんか?」

「ごめんなさい、文字がたくさん書いてあるのは、苦手なの」

「そうですか、じゃあ、もしも興味があったら、読んで見て下さい」



ジュードが差し出した本は、ミラに受け取ってもらうことは叶わなかった。
本当に違うミラなんだなと、薄々感じては、今、目の前にいるミラと、ジュードは打ち解けたいと願っていた。
共に旅をして、一度は心を通わせる事ができたのだから、また再び、心を通わせることはできるはずだ。

かといえ、思いつくのは、一年前にいたミラが好きだったものばかり。
本だったり、手料理だったり。
以前は笑顔を見せてくれたが、もう笑顔すら見せてくれない。


「ジュード、君はどうして私に構うの?」


きっと、ジュードが知っている『ミラ』に会いたいだけなんだと、ミラは気づいていたが、それを口に出したくはなかった。

ここにいるのは、私。ジュードには、今ここにいる私を見てほしいのに、きっと彼は見てくれない。私に彼女を重ねている。


「僕は、ミラが思っているような、器の小さい人間なんかじゃ、ありません」



ジュードはミラを迷いのない瞳で見つめた。




「あなたは確かに、僕の知ってるミラじゃない。それに、貴方と彼女は違う。だから、今、ここにいる貴方と、僕は仲良くなりたい、ただそれだけなんです」

「変な人ね、君は」



ジュードの言葉を耳にしたミラは、先程受け取るのを拒否した本を、ジュードから取った。



「あ」

「面白いんでしょう?ちょっと興味もあるし、借りるわ」

「はい。ありがとう、ミラ」

「別に、お礼をいわれるような事なんてしてないわよ」



なんて柔らかい表情をするんだろう。
悔しいが、照れくさくなって、顔が赤くなってしまったではないか。


(仲良くなりたい、ね)


下心でもなんでも、嘘ではない事はわかっている。この少年は他の人間とは違う。興味がある。



「ミラ?」

「いえ、なんでもないわ」




彼を知れば知るほど、離れられなくなってしまうこと、彼と別れる時に辛いこと、わかっていても、もう、止まらないんだ。












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タイトル・反転コンタクト

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