ルドガーは飼い猫であるルルに、ご飯を与えた。
ルルと遊んでいたエルが、ルルがご飯につられて行ってしまった事に対し、ムッとしてしまったが、そんな彼女の様子に、ルドガーは気づかず。
けれど、エルの頬の膨らみは、ルドガーがルルを優しく撫でて微笑んでいる姿を見て、萎んだ。
(あいぼーの笑顔を守るのは、あいぼーの役目ってやつよね)
エルはこくこくと頷いて、少しばかりの余裕を見せようとする。
ルドガーは、エルがいないと困ると言ってくれた。エルもそれは同じだ。
ならば、また、ルドガーが困った時は、すぐに助けてあげられるようにしたい。
ルドガーは、どんな時が嬉しいんだろう。幸せなんだろう?
ルルがご飯を食べ終わったのを見計らって、エルはルドガーの元へと駆け寄る。
「どうした、エル?
「ねえ、あのねっ、ルドガーは、どんな時が、幸せ?」
「え、俺の、幸せ……?」
これはまた、いつもの如く直球な質問だと、ルドガーは苦笑した。
エルにそう問われた時、ルドガーは彼女に答えを返す事ができなかった。
少女はルドガーの答えを待っていた。
だが具体的に考えた事などない。これは困った。
これまで、それなりに生きて、兄の背中を追いかけてきた。
それに費やしてきた為か、彼にはよくわからなかった。
それならば、先に彼女に答えてもらおうと考えたルドガーは、エルへ聞き返した。
「エルは、うーん、うーんとね、ルドガーが、笑ってくれること!」
「え、俺が……?」
「さっき、ルドガーがルルにご飯をあげてる時、ルドガー、とっても優しい顔してた!笑ってた!ルドガーはいつも、無表情に近いから、見た時、すっごく嬉しかったの」
「それって、幸せなこと?」
「うん、エルにとっては、幸せなことだもん」
そんなに自分は無表情な顔をしていたのかと、ルドガーは表情筋を確認しようと思った。
自分を頼りにしてくれている少女に心配されてしまっては、おしまいだ。
「エルが幸せを感じてくれるなら、俺はいくらでも、笑うよ、それが俺の幸せだから」
「本当?」
「うん、それと、俺もエルが笑ってくれていたら、幸せだよ」
「あいぼーの…ルドガーの為なら、エル、たくさん笑う!」
ルドガーがふっと微笑んだ時、エルはとても嬉しそうに笑った。
笑顔の破壊力を、ルドガーは深く思い知った。
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タイトル・間接の外れた世界
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