TOX2(フライング) | ナノ

「このままでいい」なんて嘘だよ(アルヴィン&エル+ミラ)










「カナンの地に行きたいの」




まだ幼い少女が、物おじせずに凛とした瞳で、ハキハキとした言動でそう告げたのを見た時、アルヴィンには、密かに尊敬していた人物に値する、精霊の主を思い浮かべた。
彼女が揺るぎない信念を持ち、共に旅をし、最終的にはそれを成し遂げた。




『だが、それは、私ひとりでは、できなかったことだ』



アルヴィンがミラに賞賛の言葉を送った際、彼女はそう答えた。
なんでも一人でできると思ってはいたが、実際はそうではなかったと。ジュード達に出会ってなくとも、自分の傍には、四大がいてくれていた。だから、クルスニクの槍の破壊にも臨む事ができたのだと。


『お前だって、そうだろ』

『俺は一人で生きてきたから、なんとも言えませんがね』

『そうか、だが、そう言っている以上は、いくら図体がでかくても、お前はまだ子供であることに、変わりはないぞ』



その時も特に何も思わなかったが、誰かに頼らなければ生きていく事はできなかったということを、ミラの言葉を重く受け止め、こうして今生きている。

だから、この幼い少女も、きっと、彼女と同じように、強い意志を、信念を胸に秘めて、目的を果たそうとしているのだろう。



「アルヴィンは、エルに興味があるの?」

「興味?」

「だって、じっと見てるから」



子供の洞察力は侮れないなと、自前の髭を触りながら、アルヴィンは息をついた。
忘れてた、最近の子供は、大人びている子が多いということを。
どうして、そう、大人びている考えを身につけることができたのか、是非教えてもらいたいものだ。



「エルちゃんは、いい相棒に出会えてよかったよなと思ったの。知ってるからさ、いい相棒を持った奴のことを」

「運命の出会い、だったんだよ、エルとルドガーは」

「あらま、ロマンチスト」

「エリーも、レイアも、ローエンも、アルヴィンも、運命の出会いだと思うよ」




本来ならば、出会うはずのなかった間柄。
結果的に、仲間を大事にすること、温かさ、繋がりの深さを教えてくれた、自分の大切な仲間に。



「サンキュ。エルちゃんも、ルドガーも、俺の大事な仲間だよ」





もしも今度、彼女に出会う事ができたなら、らしくないが、一言伝えよう。



『サンキュ』と。






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タイトル・Evergreen

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