「このままでいい」なんて嘘だよ(アルヴィン&エル+ミラ)
「カナンの地に行きたいの」
まだ幼い少女が、物おじせずに凛とした瞳で、ハキハキとした言動でそう告げたのを見た時、アルヴィンには、密かに尊敬していた人物に値する、精霊の主を思い浮かべた。
彼女が揺るぎない信念を持ち、共に旅をし、最終的にはそれを成し遂げた。
『だが、それは、私ひとりでは、できなかったことだ』
アルヴィンがミラに賞賛の言葉を送った際、彼女はそう答えた。
なんでも一人でできると思ってはいたが、実際はそうではなかったと。ジュード達に出会ってなくとも、自分の傍には、四大がいてくれていた。だから、クルスニクの槍の破壊にも臨む事ができたのだと。
『お前だって、そうだろ』
『俺は一人で生きてきたから、なんとも言えませんがね』
『そうか、だが、そう言っている以上は、いくら図体がでかくても、お前はまだ子供であることに、変わりはないぞ』
その時も特に何も思わなかったが、誰かに頼らなければ生きていく事はできなかったということを、ミラの言葉を重く受け止め、こうして今生きている。
だから、この幼い少女も、きっと、彼女と同じように、強い意志を、信念を胸に秘めて、目的を果たそうとしているのだろう。
「アルヴィンは、エルに興味があるの?」
「興味?」
「だって、じっと見てるから」
子供の洞察力は侮れないなと、自前の髭を触りながら、アルヴィンは息をついた。
忘れてた、最近の子供は、大人びている子が多いということを。
どうして、そう、大人びている考えを身につけることができたのか、是非教えてもらいたいものだ。
「エルちゃんは、いい相棒に出会えてよかったよなと思ったの。知ってるからさ、いい相棒を持った奴のことを」
「運命の出会い、だったんだよ、エルとルドガーは」
「あらま、ロマンチスト」
「エリーも、レイアも、ローエンも、アルヴィンも、運命の出会いだと思うよ」
本来ならば、出会うはずのなかった間柄。
結果的に、仲間を大事にすること、温かさ、繋がりの深さを教えてくれた、自分の大切な仲間に。
「サンキュ。エルちゃんも、ルドガーも、俺の大事な仲間だよ」
もしも今度、彼女に出会う事ができたなら、らしくないが、一言伝えよう。
『サンキュ』と。
―――――――――――
タイトル・Evergreen
prev / next