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許した君の居場所(アルレイ)









相変わらず、昼よりは、夜の方が好きだった。
リーゼ・マクシアにいた時に、数えきれない程の空を見上げ続け、シェルの向こう側にある、自分の帰るべき場所へと手を延ばし続けた。

その頃は、帰りたい気持ちが強く、それ以外の事は、ほぼ考えていなかった。余裕がなかったのが、よくわかる。
こうして今、エレンピオスの夜空を見上げると、リーゼ・マクシアとなんら変わりはなかったというのに。


自分の故郷やリーゼ・マクシアに行き来できるようになり、アルヴィンはそれが嬉しく思っていた。苦い思い出しかないリーゼ・マクシアも、彼にとっては、大切な世界となっていた。

新しい居場所、かつて旅をした、大事な仲間達。

この仲間達と接する事だけは、実はまだ、慣れなかったりする。
エレンピオスに戻れば、また、違った意味で緊張していたし、リーゼ・マクシアが恋しく感じたりしていた。

だが正直、気は休まっていた。
自分が行ってきたことを悔やんでは、それを見せてしまった仲間達に、少しばかり距離をあけていて。ごめん、と思いながら、接する日々。



「うー、どうしよう、今日もまた徹夜かもしんない………」



アルヴィンの気の休まる日々は、レイアがエレンピオスに来た事で終わってしまった。
1番、接し方に頭を悩ませているのは、紛れもなく彼女。『普通』というのがわからなかった。
彼女が自分に対し、普通に接してくれている事は百も承知だ。

どうして、どうして普通にしてくれるんだ。



アルヴィンは部屋の窓から、外のブランコへと目線を向ける。ブランコには、まだ見慣れない、新聞記者の見習いとなっているレイア。

たまに彼女は、あそこに座って、ずっと考え込んでいる。しかも時間は決まっていた。その時間になれば、いつも窓をあけて、彼女がいないかどうかを確認した。彼女がいなければ安心したし、いれば時間を考慮し、心配になり、外へと出ていく。




「レイア」





外のブランコへ座り込んでいたレイアに、アルヴィンは声をかけた。




「どしたの」

「どしたのじゃねえだろ」

「……うん、ごめん、わかってる」




レイアはブランコから降り、くるっとアルヴィンの方へと振り向いた。
きっと彼は、わたしのことを心配して、こうして来てくれているっていうこと、わかっているつもりだった。
彼はまだ、わたしに対して、遠慮しているし、優しい言葉しか、かけてくれなくなった。
こうして目を合わせて、わたしが何も言わなければ、彼は困って、更に黙って。



「ずるいよね」

「……なんだよ、急に」

「うん、ずるい。ずるいよ」



レイアはポケットからメモ帳を取り出しては、すらすらと何かを書き込んでいく。
ペンを止めては、すぐにメモ帳をポケットに閉まった。アルヴィンは首を傾げているものの、何を書き込んでいるのかは、やはり聞いてこない。変な気を使わなくたっていいのに。



「俺がずるい奴だって、わかってるくせに」

「うん、知ってる。ずっと見てたから。それに、少しずつ変わっていってることも、知ってる」

「っ………」




ここで少し、アルヴィンが困っているのが、レイアには理解する事ができた。これ以上、真面目にいけば、彼はまた、距離をあけてしまうかもしれないから。



「新聞記者見習いを、甘くみたらいけないんだからね」




と、砕けた言い方をして返す。






「はいはい、参りましたよ」

「………ごめんね、いつも、来てくれてありがとう」

「いつもじゃない、たまたま見かけたからだ」

「うん、ありがとう」









彼は本当は、優しすぎて、ずるい。

彼の変化していく姿を、レイアは今日も、メモ帳に綴っていく。












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タイトル・反転コンタクト

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