TOX2(フライング) | ナノ

優しいふりはもういい(アルレイ)






愛してるや、好きというフレーズは、自分はあまり好まなかった。
不意打ちでレイアの耳元で、好きだと囁けば、彼女は物凄い勢いで後退りをしては、耳を抑えて、頬を染めて、口をパクパクと動かして、うろたえていた。

アルヴィン自身は、そんな様子のレイアを見て、こいつはなんでこんなに可愛いんだろうと、目を離さずにいられなかった。

それでも、触れる事に躊躇いを覚えていた。
実際、触れてしまった時に後退りをされてしまったら、かなりダメージを喰らう事は予想されている。

レイアと話せなくなった際に、酷く酷く痛感したことだ。あんな思いは、もう二度としたくない。

今はアルヴィン自身が、レイアに片思いをしているだけだ。

この胸の奥を燻られて、動いて、揺れて。
傷つけてしまった分、たくさん優しくしたかった。



「アルヴィンの気持ちは、もう……よくわかってるよ」




ついにレイアがアルヴィンと向き合う時が訪れた。
その服装は、以前に一緒に旅をしていた時の、白い服に黒のホットパンツ。髪も帽子から降ろし、肩にかかるミディアムヘアー。お気に入りであるヘッドドレスもつけた。

久々に目にした服装を見て、アルヴィンはレイアから目を伏せた。
アルヴィンがまだ、深く後悔し、何度も何度も謝り続けている出来事を思い出して、息が苦しくなっていく。



「どうして見てくれないの?」





レイアが一歩一歩近づく度、アルヴィンは後退していく。追い詰められている感が堪らなかった。
もうそうすることもできなくなって、アルヴィンが腰を落とし、レイアがアルヴィンの太股に乗っかると、「ちゃんと、わたしを見てよ」と呟いた。


「おい、何やってんだ」

「わたしは、罪悪感で優しくされたり、好きだなんて言われても……嬉しくない」




そんなつもりなんて、なかったのに。
彼女はこんな風に捉えていたのか。ようやくレイアを見たアルヴィンは、吊り上がっている眉と反比例して服を掴んでいる指が、カタカタと震えている事に気付く。



「わたしのご機嫌とりなんか、しなくていい」

「…………は?」

「だって今だって、わたしから目を反らした!」



口の中が酸っぱい。
悔しくて流れた涙が、レイアの咥内に入り込んでいるからだ。
ずっとずっと、言わなくちゃいけないことだった。
彼が償いのつもりで、自分に好きだと告げているのなら、そちらの方が余計に傷つくのだ。
アルヴィンに優しくされたり、自身がアルヴィンに優しくしたり、嬉しい事だが、もう限界だ。





「ごめん」




アルヴィンがレイアを胸元に抱きしめて、謝った。



「やだ、やだ!離して!」

「離すかよ、そんな顔させたのは俺のせいだ、そういう風に思わせたのも」

「……っ……………」

「だからもう、好きだって、言わねえよ」

「………え……」

「今、こいつ、わたしの事、好きだったんじゃないの?って思っただろ」




不覚にも顔を上げてしまったレイアは、アルヴィンの言葉に動揺し、そして図星の一言をつきつけられては、また、彼の胸の中へと帰っていく。




「確かに思い出したし、まだ罪悪感もある。おたくに優しくしなきゃと、そう思ってたのもある。けど、もう、レイアに対して優しいだけの人間でいるのは、もうヤメた」





好きだなんて、愛してるなんて、そんな言葉を好まない自分が、相手に告げた所で、どうしようもならないのなら。




「俺の事を好きにならなくてもいいから、ずっと一緒にいたいって、そう思わせてやるようにする」





ああ、また、困っただろうなと思いつつも、彼女ときちんと向き合いたい為にも、自身が1番言われたい事を、彼はレイアに告げる。
そこまで感づかれたりしないとは思うが、彼がレイアと共にいたいから。




「久々にそのカッコ見たけど、やっぱ、可愛い」

「……優しくしないんじゃなかったの?」

「口説いてんだよ」






ここまでぶつかってきてくれたのは、少しでも、俺の事を考えてくれてたって、そういうことだろ。

彼女と、更にちゃんと向かい合う事ができるのは、もう少しだけかかりそうだ。









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タイトル・反転コンタクト

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