思いの狭間で
わたし、幸せを噛み締めたんだなって思っていたんだ。こんな事は二度と味わえないくらいに。
ずっと信じていたかった。でも、理解したことはある。
好きになると自分の事しか見えなくなる。
身動きが、とれなくなるみたいに。
「……あれ………?」
たまに、誰もいないような感覚を覚えるの。
ねえ、覚えてる?
わたしのこと、覚えてる?
「……わたしは……忘れられないよ……絶対……」
わたしの、好きな人を。
あなたと想いが通じ合ってすぐに、わたしはミラとこんな話をした。
「まったく。お前達は二人揃って、心配かけさせるんだから」
「…ごめん、ミラ」
1番、気にしてくれていたのは、ミラかもしれなかった。
アルヴィン君を想う気持ちを紛らわせたくて、いろんな事に集中してたわたしは、体を崩してしまったの。
情けないよね。でも、これではっきりしたんだ。
想いは、消せないんだって。
「レイア、好きになっただろ、あいつを」
「えっ!!えっと……その………」
「私は反対だな。レイア、君には悪いが」
その時、ミラにはそう言われて当然だなって、わたし、どこかで思ってた。わたしと彼のやり取りを思えば。そんなの関係ないって、気にしないって、そう思っていたけど、それってやっぱり、ただの傲慢だったりするのかな。
「現に君は、自分を追い詰めていただろう。恋のせいで」
「それは………」
そうだった。もやもやして、なんだか嫌で、気がついたら忘れようとしてた。
子供なんだよね。それだけは、そうなんだなって。
でも、ミラや他のみんなが許してくれなくても、アルヴィン君の事をわたしは、あきらめないよ。
今度は、絶対に。
「……なんてな」
「……え?」
「君だって、子供じゃないものな。奴が君にとって、どれだけ必要なのか……私はわかってる。君だけじゃなくて、アルヴィンもな」
正直びっくりしたよ。
ミラがそんなこと言うなんて思わなかったから。
わたしはただ、言ったことは一つだけ。
「………うん」
そのまま、ミラといろんな話をしたんだ。夜に彼と会う約束していたから、夜になってから、わたしはアルヴィン君の元を訪れた。
「よっ」
「おう」
アルヴィン君は、コートに手を突っ込んだまま、夜空を見上げていた。哀愁を帯びているように、前は見えていたけど、今はヘの字になっていた唇も、真逆になって、穏やかな顔になってた。
「マクスウェル様、呆れてただろ?」
「そんなことなかったよ。ちょっと、怒られたけどね」
「心配かけて〜とか?」
「察しの通り」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
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