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sweet better








「ねえねえ、アルヴィン君、目をつぶって!」




レイアがにこにこしながら、アルヴィンに近寄っていく。



「んー?何だよ、俺にチューとか、してくれちゃうわけ?」


いつものように、アルヴィンはレイアをからかっていた。言葉通りに、彼は目を閉じては、レイアに唇を差し出そうとする。そうされるとは、まったく思っていないのだが。
こんなことをされては、レイアは否定せざるを得ない。


「ちょっ、またそういうこと言うー!!そんなんじゃなくて、とにかく目を閉じて!」


レイアは一瞬、顔を真っ赤にして、取り乱すものの、すぐに平静を取り戻して、アルヴィンに問い掛けた。


(まったく、若いねー。顔真っ赤にしやがって)


予想通りの反応だ。ムキになっている彼女を見ては、こういう軽い事をしてくる男への対応が、わからないんだなと思えた。


「へいへい」


レイアに促されるまま、アルヴィンは目を閉じる。
レイアはアルヴィンが、ちゃんと目を閉じたのかどうかを疑い、数回、目をじっと見つめた。瞼が動いていない。だからちゃんと目を閉じているんだと確認をした。
いつ何をしてくるか、わからない彼への念入りの為である。

レイアは深く深呼吸をした。



「それじゃあ、口開けて」


(は……?)


目を閉じて、口を開けろ。そのレイアの言葉を聞き、彼の頭の中は、普通だったら、そういうことをするのではないのかって思っていた。
ただ、レイアの性格上、そのような甘い展開を、アルヴィンには想像することができなかった。

彼女は、一体何を考えているのだろう。

とりあえずアルヴィンは、言われるがまま、口を開けた。
口を開けたと同時に、すぐに口の中に何かが放り込まれたのを感じる。


「ん、なんだこれ……」


ゆっくりと歯を動かすと、カリカリと硬い感触と甘い感触が入り混じる。
それはアーモンドチョコレートだった。


「どう、美味しい?」


レイアの声を耳にし、アルヴィンは目を開けた。


「まあ、美味しいっちゃ美味しいが……別に普通に喰わせりゃいいだろうが」

「だってさ、なんか、面白いことしたくて。なんかこう……ドキっとしなかった?」

「まあ……な。そうだ、レイアも同じ気持ち味わってみないか?以外にスリルあるぜ」



アルヴィンは、自分が座っていた椅子にレイアを座らせてそう言った。
やはりかと思った。何かをしてくるのかと思えば、そういうことかと。
レイアはアルヴィンを見上げる。


「ほー……、まあ、こんなこと滅多にやらないしね、うん、いいよ」


それもまた、好奇心のうちだった。先程、自分が行ったことをどのように捉えてくれていたのか、どんな感じだったのかを知りたくて、わくわくしたくて、椅子に座ったレイアは、そのまま目を閉じた。


「……じゃあ、口、開けろよ」


アルヴィンの声にレイアの体全身が震えた。
視界が真っ暗なせいか、いつもは当たり前に聞いていた彼の低い声に、胸をときめかせてしまった。こんな声をしていたっけ。これもわざとなのだろうか。


(うわっ、何これ……、ぞくってきたよ………)


そしてレイアは口を開けた。
ガサゴソとアーモンドチョコレートの箱から、チョコレートが取り出される音を耳にして、レイアはいつチョコレートが口に入っても大丈夫なように、身構えていた。

アルヴィンは膝をつき、目線をレイアと同じ位置にして、そしてレイアの顎を掴んだ。


(え、えええっ?!わたし、こんなことしてな……)


そして口に甘い味が広がり、チョコレートが入っていたのがわかる。


(なるほどー……確かにこれはドキっとする…………む……?)



チョコレートと共に入り込んできた、温かな感触。そして触れられている唇。



「ん、んー…っ……!」




掴まれていた顎はいつの間にか、彼女の柔らかな髪に触れられていた。
口の中はアーモンドチョコレートが広がる。



「アルヴ……ィ………、っ」

「……どうだ、スリル満点だろ?」





離された唇から、ぽつりと、囁かれて、レイアは何も答えられなくなってしまうのだった。












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