片言エピソード
ねえ、聞かせてよ。
あなたがわたしを、どう思っているのか。
ちゃんと言ってくれなきゃ、わたしはわからない。
だから早く聞かせて?
あなたの口から、その言葉を。
「……ふ−ん、それで?」
「だから、わたしまだ、やらなきゃならないことがあるの。だから、一緒に行けない」
カラハ・シャール。
そこで、自由行動をすることになった一行。
つかの間の休息といったところだろう。
アルヴィンと共に過ごす事には躊躇いも何もない。寧ろ緊張して、恥をかいたりしないかどうかが気になった。
それに、レイアはまだ、彼を信じ切れていない所がある。だから、一緒に行こうと誘ってくれたアルヴィンに嘘をつき、断ってしまっていた。
「俺とデートしてくんないの?」
「どうして、わたしを誘う必要があるの?わたしじゃなくても、別にいいじゃない」
意地悪な言い方をした。
少し期待したのかもしれなかった。
何せ、彼はピエロである為、彼の口から好きだと言われたことがなかった。
特に気にしてないつもりだったが、やっぱり一度でいいから聞きたいと思うようになっていた。
「だったら、そこで一人で突っ立ってろよ。この俺が誘ってやってるのに」
その言葉にかちんときたのか、面白くなさそうに去ろうとしたアルヴィン。
「だって、そういう言い方するから、こっちは……い、意識しちゃうじゃん」
ぴたりとアルヴィンは立ち止まった。
そして、そのままレイアを引っ張り、ちょうど街のど真ん中くらいまで、歩く。
「ちょっ……なに……?」
そのまま軽々しく、彼女を抱き上げた。
「…好きだから。俺が好きなのはお前だけだから」
町中の、皆に聞かせるように、大きな声でアルヴィンは叫ぶ。
レイアは両手でアルヴィンの口を塞ごうとしたが、彼は止めなかった。やっと彼から聞くことができたわけだが、こんな風にやられるとは思ってもみなかった。
「やめてよ…!恥ずかしいじゃない……」
「この際だ。もう何回でも叫んでやる」
「アルヴィン………」
レイアは申し訳なさそうに、アルヴィンの肩に頭を預けては、寄り掛かる。
「わたしだけに、言ってくれればよかったのに」
「本当、おたくといると、馬鹿なことばっかしちまってるよ、俺。それじゃ行くぞ。絶対楽しませてやるからな」
「え?えっ…………!」
はめられたと思いつつ、地に足をついたレイアは、アルヴィンと共に街の中へと消えていった。
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タイトル・反転コンタクト
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