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愛をメロディに閉じこめて








綺麗な、透明な声。
甘ったるいわけでもなく、クセがあるわけでもなく。癒される。
彼女の歌声が、アルヴィンは好きだった。
耳にするだけで、心が綺麗に洗われたような気分にさせられた。

仮面を被り続け、道化者を演じている自分。それはもう疲れていた。何故なら、本来の自分ではないのだから。
それでも、癒しの場所はあった。それは、彼女、レイアの存在だ。


「深夜の訪問は、結構高いよ?」

「生憎、金はないんだな。俺の体で…とかはどうだ?」

「ダーメ、それは却下」


ぷいっとレイアが機嫌を損ねたようにも見えるが、実際のレイアは、ただ、アルヴィンの言葉に恥ずかしがっているだけであった。
すんなりとそういう事は言えちゃうのに、本当の事はなかなか言えないんだなと、レイアは目を閉じて息をついた。

彼が自分の元に来た理由もわかっている。
彼は言った。自分の傍にいる時だけが、素の自分でいることができる、と。
軽そうに見えて、本当は誰よりも寂しがり屋で、警戒心が強い彼が、自分に対しそう述べたという事は、それは嘘ではないという事。
彼にとって、特別な存在になれているということも、理解することができた。


「おいで、アルヴィン君」


先にベッドへ足を運んだレイアは、靴を脱いで、ベッドへと横になり、アルヴィンを呼び寄せた。
声に導かれたアルヴィンもまた、靴を脱いでベッドへと足を踏み入れ、手を延ばしているレイアの腕の中へと入り込んだ。

ちょうど自分の胸元の部分に、アルヴィンの顔が当たっていたが、彼が手を出してくることはなく、目を閉じて、自分に寄り掛かっていて。

レイアは彼の髪をいじりながら、歌を歌い始めた。それはレイアが幼い頃から口ずさんでいた、お気に入りの歌。
静寂の中に響き渡る、レイアの歌声に、アルヴィンは聴き入っていた。すべてがどうでもよくなってしまえばいい。そんなことも考えた。できるはずがないのに。

彼女の存在に癒されては、心地好いこの場所で、本来の自分へと返り、夢を見る。
目を開ければまた、演じなくてはならない。アルヴィン、という人格を。


「どっちも、アルヴィン君なのにな」


アルヴィンが眠りについたの確認し、レイアは歌うのを止めた。
よしよしと頭を撫でてみた。それでも反応する様子を見せなかった事から、深い眠りについたことも確信していた。









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タイトル・Evergreen


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