SS | ナノ


※情緒揺動








※観覧注意








「……レイ…ア…」


何度も何度も、彼女の名前を呼んでいた。
おたくは今、どこにいるんだ?
俺は、どこにいるんだ?
あの笑顔に会いたい。
屈託のない彼女のにこやかな笑顔に。
周りを見渡しても、ただ闇が広がるだけで、誰もいない。


「アルヴィン君」


ああ、やっと、レイアが自分の呼び掛けに反応してくれた。なんだ、ちゃんとおたくは、ここにいるんじゃないかって、ほっとした。

俺は、やっとおたくの傍にいるんだな。
ここに、いるんだな。そう思えた。

そんな彼の耳に微かに残るのは、レイアの最後の一言。



『バイバイ、アルヴィン君』


その言葉の後、彼女の声はまた聞こえなくなり、漆黒の闇の中へと、彼は再び取り残される。レイア、レイアと叫んでも、彼女からの返答はない。

バイバイって、なんだそれ、おたくまで、俺をひとりぼっちにさせる気なのか。
もう嫌だ。ひとりぼっちになんか、なりたくない。
傍にいてくれよ、お願いだ。レイア。





「レイアっ!!!」

「ど、どうしたの?アルヴィン君」

「あ……いや…」


彼が今見たのは、白昼夢。
アルヴィンは、知らない間にレイアの肩にもたれかかっていた。
レイアは、アルヴィンの手をしっかりと、両手で握っていた。


「アルヴィン君、わたしちゃんとここにいるよ」


そう言って、アルヴィン安心させる。
そうしないとアルヴィンを置いていけないから。
自分はアルヴィンと、離れなくちゃならないから。

ーーーー

この前の夜、いつものようにレイアはアルヴィンに抱かれていた。
いつもアルヴィンの指使いは、レイアを相当なまでにいかせてくれる。


「…うあぁぁっ…は…ぅ」

「可愛いな、レイアは…またおかしくさせたくなっちまうよ…」

「…んっあ………やっ…あ…るびぃ…!ふ…」



気持ちよく流れる快感のなかで、レイアはひとつ気になっていた。
いつもアルヴィンは涙目だ。
必ずレイアの声に紛れて、涙を流していた。
何故なんだろうか。自分のせいなのだろうか。

(ね、アルヴィン君?)


脳裏にずっと浮かんでいた。アルヴィンが隣で眠りについたあと、レイアはゆっくりと起き上がり、アルヴィンの顔に触れた。
目元が少し濡れている。

自分のとても大事な愛しい人が、涙を流しているなんて。


「っ……何があったのよ…アルヴィン君……」


そうしてそっと、アルヴィンの唇にキスをし、その唇は首筋へと移動していった。


「ん……つぅ……」


アルヴィンの声が洩れた。レイアは、アルヴィンの首筋に赤い刻印、キスマークを残した。
自分は、アルヴィンのモノだから、という意味を込めて。
当然、この行為にアルヴィンが気づかないわけがない。
すばやく手を伸ばし、レイアを押し倒し、先ほどとは逆の体勢になる。


「おたくから…誘ってくるなんてな…レイア…」

「ア、アルヴィンく……」

「だったら、今、レイアがしたことを、俺もしてやるよ…たくさんな」


アルヴィンはレイアの耳を軽くかんだ。
そして、執拗な程、舐めていく。


「ふ…ぁっ……!あぁぁ……」


こうしてまた飲み込まれていく。ダメだ。また、聞けなくなる。


『どうして、わたしを抱いている時…泣いているの…?』


聞けなくなるのは、無理もない。このとめどなく流れる快感を、終わりにしたくないからだ。


「ア……ルヴィ…ン…!!もっ…と…!…やあぁぁっ…!」

「レイア……どうした…?…もうこんなになって……」


極めつけにアルヴィンは、ハンカチでレイアの目を覆い隠した。


「やぁっ……アルヴィ…なにす…」

「これからが…楽しみだな…どんな反応するか……」


目を覆い隠された以上、どこから手が伸びてくるか分からない。
ただレイアは、その動きに身を任せるだけになる。


「あ………ひゃっ…も…」


その時だった。
冷たい滴のようなものが、レイアの顔へと流れる。
そしてまた、もうひとつ。


「アル……?ねえ、アルヴィン君!」


レイアは目に覆われている、ハンカチをはずそうとしたが、きつく結んであって、はずせない。


「わり……」


アルヴィンは手の動きを止めた。
そっと自分の目に触れる。目がまた濡れていた。


(ダメだ……あの光景が…頭から…離れない…)


レイアがどこかに行ってしまう、あの悪夢のような光景。
周りは荒野で、朽ち果てている。
その中で、アルヴィンは一人呆然と、立ちすくんでいた。


『バイバイ、アルヴィン君。わたしもう、あなたと一緒にはいられないんだ』

「だから…なんでなんだよ……レイア」


だから、レイアに会った時、非常に気を使ってしまう自分がいた。
彼女を手放したくないが故に。



「ア…ルヴィ…ン…!」


ハンカチがまだほどけないまま、手探りで一生懸命、アルヴィンを探す、レイアの姿。

(俺は…どうしたらいい…?どうすれば…)

一瞬、悩んだ。
大事にすればするほど思いは募る。
余計に傷つけてしまう。
そんなアルヴィンの思いとは裏腹に、ハンカチを外す事に成功したレイアが、アルヴィンの背中へと抱きつく。


「アルヴィン君…なんで泣いてるの…?わたしのせいなの…?わたしがアルヴィン君を…」

「違う!!」



頼むから、自分のせいだなんて、思わないでレイア。彼はそう思いながら唇を噛み締めた。



「違うんだよ……」

「じゃあどうして…?アルヴィン君を追い込むなにかがあったから、アルヴィン君は泣いているんじゃ…」

「……!」


いたたまれなくなったアルヴィンは、レイアを引き寄せ、唇を重ねる。
レイアの言葉を防ぐように。


「ん……ぁ………」


これほどにもなく、激しいアルヴィンのキス。
レイアは息をするのが、精一杯になる。


「…ふぅ……っ…んっ…!」


どうしよう、こんなの初めてだ。
そして、ようやく唇を離したアルヴィンは、レイアに問いかける。


「なあ、レイア……俺と離れたいって…思ってる?」

「え……!なんで……?」


思わず、声が裏返る。
どうしてか?アルヴィンが涙を流すのは、自分のせいだって。
だから、いなくなった方が、いいんじゃないかって思っていたから。


「それを聞いて……アルヴィン君はどうするの?」

「どうって……返答しだいでは……おたくを……」


いや、本当は違う。
返答次第でも一つだけ。


「…めちゃめちゃにしてやりたいよ……」

「…っ………」


アルヴィンの目を見るだけで、体が反応する。
どう返答しようか、彼女は悩んだ。
返答次第では、きっと自分は彼に目茶苦茶にされてしまう。背筋が凍りついた。


「……アルヴィン君」

「ん?」

「わたしは……あの…………そんなふうに…思ったこと…ないよ…」


ふと嘘を、ついてしまった。


「本当なのか?」

「うん、本当…だよ」


アルヴィンは真剣にこちらを見つめてくる。
やっぱり、彼に本当のことなど言えない。
その時、突然アルヴィンはレイアをベットへと押し倒し、両腕を押さえ付けた。


「アルヴィン君…?」

「レイア…俺、言ったよな?返答次第では、おたくを目茶苦茶にしてやりたいって」

「う…ん…」


確かにアルヴィンはそう言った。でも、どうしてこんなことになっているのか、レイアには理解できなかった。
アルヴィンを傷つけないために、嘘をついてしまったのに。彼は自分が返した答えに納得していないように見える。


「いいか?レイア……覚悟しておけよ…」

「ふぁっ…や…ん…」


レイアの口の中へ、自分の指を突っ込んだ。
咥内を指で掻き回され、レイアの口からは唾液が零れる。

「…うし…て…?」

レイアの声は、アルヴィンの指に遮られ、消えていく。
アルヴィンは、レイアの体の隅々まで、愛撫し始めた。


「……っ!!ん…っあっ!や……」

「そう…もっと感じろよ…?レイア……これが、おたく君の望んだことなんだから…」


アルヴィンの舌使いは見事なものだ。
たちまちに、レイアを高ぶらせていく。


「あっ……!やあぁぁぁ…っ…!」

音が変わる。
レイアの体がどんどん敏感になっていく。
それでもレイアは、理由が聞きたかった。
自分の声と混じりながらも、必死にアルヴィンに問いかけた。


「やぁ……アル…っ…なん…で…?わた…しっ……思ったことないって…言ったのに…っ…」

「……嘘だろ?」


アルヴィンはレイアの秘部へ手を伸ばし、そこが大袈裟になるくらいに執拗な指使いで絡ませていく。


「…も…っ…やあっ…」

「こうして欲しかったから、嘘ついたんだろ?レイアのここが…そう言ってるぜ?」


レイアの秘部は、小さな部分が突起し、そこを指で摩るだけで、レイアの腰が上がり、彼女は手の甲で溢れ出る声を押さえ込もうとした。


「やあぁぁぁっ!!…ふぇ…違うよぉ…っ…」

「黙ってろレイア。嘘つくから悪いんだっつうに」


突起している先端を甘噛みした。レイアが足をじたばたさせている。同時に蜜も流れてきた。じゅるっとそれを舌で舐めとって、そこに吸い付けば、レイアはまた暴れだす。
もうレイアは限界だった。


「じゃあ…どうすればよかったの…っ…?…ひっ…!」


そんなレイアの問いにも、アルヴィンは無言で、舌を休めずに舐め続けている。


「俺の気が収まりきらないんだよ…目の前で…感じてる…おたくをもっと見たいんだ」


もう、頭の中は真っ白で、何も考えられなくなってくる。
本当に真っ白で。自分の手で目茶苦茶にしているレイアを見るのが、最早快感だった。


「……わたし…も……だめ……イっちゃう…」


荒くなる息と、熱くなっていく体は、もう誰にも止められない。
今はアルヴィンにやめてと言えるのは簡単だ。
言葉でなら、簡単に言える。
でも心は。体は。嘘をつけない。


「アルヴィ…ン……ぁ……いっしょに……イこうよ…っ…」



もう、苦しかった。
早くしてほしかった。彼のモノがもう自分に入りたいって思っているのもわかっている。


「ひとつ……聞かせてくんない」

「…はぁ……ぅ…な…に…ぃ…?」

「レイア……俺から離れようとしてたんだろ?なんで?」


その瞬間、レイアはぱっと目を開けた。
さっき嘘をついたのがバレてしまったから、もう言い逃れはできない。


「やぁぁぅ…!!言わ…なきゃ…ダメ…?」

「じゃなきゃ、お預けだ」


そう言うと、アルヴィンは軽くレイアの乳房に噛み付いた。


「や……ああぁぁっ……!!は……」


声を殺しても、収まることはなくて、レイアは腰を揺らしては、下半身が痙攣し始める。


「あ……っ……ぁ…も……ぅ…」

「どうだレイア?まだ話す気はないのか」


そして彼は噛んで唇で吸い付く行為を繰り返す。


「ふ……ぇっ……わ…かっ…た…!は……話しますぅ……!」

「いい子だ…レイア…」


アルヴィンは軽く苦笑いする。 もう…アルヴィンは逆らえない。逆らうこともできない。
ただ自分を、いつもとは違う目で見つめている。


「はぁ……はぁ……わたし……はなれ…たほうがっ…いいって思っ…たから」

「全然、答えになってねえだろ?それじゃあ……」

「…っ…ぅ……」


捕われてる“何か”
まさしく今、そんな感じでアルヴィンが自分を動かしている。
自分ではなく、アルヴィンが体を支配していた。


「早く……話せ……話せよ!レイア!!」

「……アルヴィン君だって……どうして泣くの…?わたしを抱いてるときは…いつだって……」


レイアは反撃に出た。
その言葉に、ぴくんとアルヴィンは反応して、動きを止めた。


「それは…………」

「……わかってるよ。わたしがいるからでしょ?わたしの存在がアルヴィン君を苦しめてるからでしょ?だから、アルヴィン君は………っ…………?!」


アルヴィンはレイアの下唇を噛んだ。



「な、なにするの………!!」


レイアは手でゴシゴシと唇を拭いた。血が指に付着する。


「おたくの……せいじゃない。だから……そんなこと言わないでくれ」


あまりにも、信じがたかった。レイアから目を反らし、ベッドからゆっくり立ち上がったアルヴィンに対し、レイアは納得するはずもなく。


「わたしは…アルヴィンがわたしのせいで苦しんでるって思った。だから……離れようと思ったんだ。その方が…あなたの為にいいと思ったから」


口に出せずにいた、封じ込んでいた気持ちを、レイアはとうとう、明かした。 本当にあなたを、あなただけを好きだから。
だから、絶対に手放したくない。離さない。
たとえ自分が、悪者になろうとも。


「アルヴィン君、わたし…」


ぴたりとアルヴィンに寄り添い、華奢な腕で、アルヴィンを抱きしめるレイア。


「わたし…アルヴィンの傍にいていいの?」


彼を抱きしめている手は、微かに震えているようだった。
アルヴィンが好きだから、一緒にいたい。
アルヴィンが好きだから、離れなくちゃならない。
でもずっと一緒にいたい。
離れるなんてこと、できない。今は絶対に離れたくない。


自分の居場所を作ってくれるあなた。
暖かくて、心地よい、自分にはもったいない場所で。


「そんなの…当たり前だろ?レイアがいてくれないと……俺は俺じゃなくなっちまう」

「……うん。アルヴィン君……約束するよ。わたし…絶対に離れたりしないから」


その言葉だけで、自分はどれほど救われたんだろう。あの忌ま忌ましい悪夢を、一瞬で掻き消してしまうレイア。

一生、離さない。手放さない。



「……っ、やっ」

「お預けさせてて悪いな、けど、まだこんなに濡れてんなら、入りそうだな」

「……う、うん」



レイアは自ら腰を上げた。それにアルヴィンは驚いたが、彼女の腰を掴み、彼女が下りてくるのを待った。
入り込んだ後、レイアは動けなかった。体位が違うだけで、こんなにも快感が違う。わかってはいたが、やはり慣れない。気持ち良くて、体の中が凝縮していく。


「…う…っ………ひぁっ」

「行かせない、どこにもな………」



こくこくと、レイアは頷き続ける。
約束を破ったら許さない。そんな事を考えながら、彼はレイアを突き続けた。







―――――――――――
タイトル・Evergreen




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