たそがれ
”いつも何か考えてる感じだよね”
1人、ハ・ミルの夕日を眺めているアルヴィンを見掛けた、レイアが言ったこと。
いつも調子のいいことたくさん言っちゃってて、それとなく近づきがたい感じがするのに、どこか哀愁をおびた・・・そんな感じがした。
「・・・なんでそう思うんだ?」
「ん〜、昔のわたしと似てるからかな。うん」
本当は誰かに助けてって叫びたいのに、叫べない。
そんな状態。
それは自分でそうしていくのは、以外に難しいんだ。
自分の逃げたいことから、目を反らしているようで。
「おたくも言うようになったんだな。あの頃とはかなり大違いだ」
「あ!あの時は…あの時のわたしは、わたしじゃなかったんだよ!」
アルヴィンに言われた事実を認めたくなくて、一人慌てるレイア。
アルヴィンの言うあの頃とは、ニ・アケリア霊山でのこと。
アグリアに何かしてあげられること、まだまだたくさん、あったような気がするのに。
それなのに、彼女には届かなかったし受け入れてもらえなかった。。
どんなに叫んでも、全然ダメだったから。
余計に落ち込みは、深くなっていってた。
「…おい」
「な、なに?心配しなくても…もう、文句なんか言ったりしないよ?」
「…ったく、仕方ないな」
「……………?!」
ハ・ミル西部の細い道。
オレンジ色の風景が視界を占領し、。
人の影が長細くなっている。
いつしか、アルヴィンとレイア、二人の影は一つへと重なっていっていた。
それは、アルヴィンの手がレイアへと伸び、彼の大きなコートの中に挟まれる状態になったからだ。
何が起きたのかわからなくて、レイアは目をパチクリさせていた。
「…どしたの?こんなことしてさ」
「理由が必要か?」
「当たり前じゃん!普通は…こんな風にしないでしょ?」
だけど、いくらこんな意地張ったりしても、なんでかな…?
嫌じゃ…なかったんだ。
そんな風に思いながら、いつしかレイアの口にアルヴィンの指先が触れられる。
「その口…塞いでやろうか?黙らせようと思えば、すぐにできちまうんだけど」
「つっ〜……///!!」
…わかった。
これはわたしへの当て付けだ。
でも、そういう風にされたのは初めてで、どう対応していいのか、わからずにいる。
しばらくして、アルヴィンは口を開いた。
「…やっと黙ったか」
「わたしは子供じゃないよ!それに、普通そういうことする?」
「そう思ってるから、したことだ」
それはあまりにも直球な意見で、レイアの頬を徐々に赤らめていった。
「何考えてんの?」
「……?何って?」
「何をそう、深く考えているんだ?」
そう言われた途端、レイアは顔を上げた。
深く考えていること……
色々あった。考え過ぎて頭がパンクしそうで。
でも一番、今頭の中がいっぱいになっていることは……
「…アルヴィン君、よく見てるね。わたしのこと」
本当…見透かされている感じがしたよ。
感心がないように見えても、そこはやっぱり大人の人だなって思えた。
「…わたし、何もできないんだなって。なにかしてあげたいのに、本当…何も……」
もう…無理。
言葉が続かないよ……
そのまま、アルヴィンへとレイアは抱きついた。
とても心地よくて、暖かくて……
アルヴィンもまた、レイアを力強く抱きしめる。
どうしても、放っておくことができなかった。
もう、どうにもできずに、その彼女が感じてる痛い思いを受け止めながら、ずっと抱きしめていた。
でもそこから聞こえてきたのは、泣き声ではなく…軽い笑い声。
「お。てっきり、泣くんだとばかり思ったぜ」
「だって…わたしが泣いたところでどうしようもないじゃない」
そう…泣けない。
まだ悔し泣きはできない。
あきらめと同じになるから、そうしたくなかった。
「大丈夫なら、ほら行くぞ」
「アルヴィン君ありがと。よっぽどわたしのこと、大好きなんだね!」
アルヴィンは何も言わなかったが、レイアから手を離し、歩き始めた。
「…でも、わたしの好きの方が上だと思うよ。アルヴィン君。だから、今度はわたしがアルヴィン君をしっかり抱きしめてあげるから!!」
アルヴィンに向かってレイアは叫んだ。
「やっぱり、言うようになったんだな。その時は遠慮なく、そうさせてもらうとしますか」
「わかってるって」
彼女の笑顔が、自分にはとても眩しい。
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