今だけはこの救いようのない現実に甘んじよう
『2年A組沢田綱吉至急応接室にきなよ、こないと咬み殺すから』
「………へ?」
4時間目のチャイムが鳴り終わったと同時に、ぶっきらぼうな声が校内に響き渡った。
爆睡を決め込んでいたオレにも、嫌でも(嫌じゃないけど)耳に通る声。
「十代目!!今の雲雀の野郎ですよね?!ぶっぱなしに行きますか?!」
「おー、なんだ?マフィアごっこなら俺もいれろよツナー」
獄寺くんはダイナマイトを、山本はバットを肩に担いで…
獄寺くんが怒ってるのはいつもだけど…山本…笑顔だけど…なんかいつもと違う…。
「あっ!」
こんなトコで油売ってたら…咬み殺されちゃう!
「ごめんね二人とも!二人で食べてて?!」
俺はそう言って教室を飛び出た。
後ろから獄寺くんの十代目ー!と泣く声と山本の、俺等二人で食べるとか痛いよなー?と豪快に笑う?声…
男三人で食べるのも痛いのでは?と、考えてみたけど…今は応接室が先!と言い聞かせ走って応接室に向かった。
「すみませんっ!…はぁ…お…くれちゃっ…て」
応接室のドアを開けるとそこには誰もいなかった。
「あ…アレ?……帰っちゃった…のかな」
肩で息をし、深呼吸をしてからポツリとそうこぼした。
なんだ…雲雀さん……帰っちゃったんだ…。
少し…ううん。大分凹んだ。
折角、会えるって……
「ねえ…それってわざとなの?」
すぐ隣からそんな声が聞こえたと思ったら、フワリと足元が浮いた。
「わわわわわっ!?なっ…ちょっ……ひっ雲雀さん?!」
オレは雲雀さんに軽がると持ち上げられている。
男子中学生が聞いて呆れる…恥ずかしくてたまんない。
「うるさいな…咬み殺されたいの」
「やっ…あの……それは嫌…です…けど…あの……」
お尻鷲掴みしすぎですって!
なーんて、ことは言えなくてそのまま黙ってたら、ドサリとソファーに座らされた。
キョトンとして雲雀さんを見上げると学ランを脱ぎ始めていた。
「へっ?!えっ…あのっ!ひっ雲雀さんっ?!」
オレは妙に焦っちゃって…
きっと顔は真っ赤で直視出来なくて目をつぶっていた。
そしたら、太ももにさらりとした感触。
「ひゃわっ!?」
「…色気の無い声出すの止めなよ」
色気って……オレ男ですよ。とか思いつつも状況が読めなくて…あたふた。
「あの…雲雀さん?」
オレは下から見据えられて、ドギマギしながら聞く。
てか、さっきの自分相当恥ずかしい。
躯中が火照ってる。
学ラン脱いだだけじゃないか。
そんなオレを知ってか知らずか…雲雀さんは少しニッと笑った。
「綱吉……期待でもしたの」
「なっ?!なんのことですかっ!」
オレは、ふいっと外方を向いた。
そしたら、下で雲雀さんの笑う声。
「……今…お昼なんですけど……」
「まぁ待ちなよ…僕が昼寝したら一緒に食べるんだよ」
なにその決定事項。つーか、昼寝って……。
オレは少し反論しようかと思ったけど止めた。
雲雀さんが目を閉じて、すぅすぅと寝ていたから。
オレは怒る気なんか吹っ飛んで、その代わりに愛しさが溢れてきて…
あー、触れたいなって思ったから…恐る恐る髪を撫でることにした。
気付かれたら咬み殺されそうだなって思ったけど、クスリと苦笑して、その時はその時だと思うことにした。
「わっ…」
さらさらな黒髪に指を差し入れ、絡める。
いつ触っても綺麗な黒。
……お昼寝の枕代わりか…
「綱吉…」
「うあっ…は…はい!?」
いきなり呼ばれたからビックリして、雲雀さんを見ると漆黒の瞳とかち合った。
「手が止まってるよ…なに考えてるの。僕以外のことだったら承知しないよ?」
頬に手を添えられて、ビクリと後退したらグッと顔を近付けられた。
「どうなの?」
「あっ…」
少しでも喋ると唇が触れそうで…ギュッと目をつぶった。
「綱吉……」
スルリと首を撫でられ、声が洩れそうになったけど、雲雀さんの唇に呑み込まれた。
「んっ…ンふ……はふっ」
食べられるように唇を覆われて、乱暴に唇の間を割られ歯列をなぞられて…ゾクリとする。
時々、息継ぎの猶予を与えられても、ダメツナだから…上手く息なんかできなくてすぐに酸欠状態に陥る。
「あっ…はぁ……はっ…ひ…ばりひゃ…ん」
「なんて顔してんの…そんなに僕を煽りたいの」
雲雀さんはそう言って、膝枕に戻って…オレの唇の端に伝う涎を拭った。
「煽って…ない………です」
雲雀さんは、そう。とだけ言って、また瞳を閉じた。
「寝るん…ですか」
「……君の膝枕は寝心地がいいんだ…文句あるの?」
そうぶっきらぼうに言ってオレの手を掴んだ。
どうするのかなって思ったら…自分の頭においた。
「ひばり…さん?」
「ほら…特別に許してあげる」
僅かに雲雀さんの頬が赤く染まったような気がして、起こさないように静かに笑った。
そして、寝息をたてる雲雀さんの頭を撫でながら、少し開いた唇にそっと、キスをした。
>>ツッ君大好きな雲雀さんが好きです。
今回は現在設定。
何げに、ヒバツナ←山・獄です。