全
力
少
年
「ツーナー!みてろよちゃんとー!!ホームランいくぜー?!」
今日の体育は野球。
オレは山本の前の打席で見送り三振。(ボールが見えなかった…ていうか動かない体が…)
他の男子や見学していた女子のブーイングが痛かった。
でも、それを吹っ飛ばすさわやかな笑顔つきのホームラン予告。
返事をしようと思ったけれど、そんなのは、女子の黄色い声援にかき消された。
バッターボックスに立つ山本の後ろ姿をジッと見やる。
あ、打つ…
そう思った瞬間に、白球は山本のバットにいい音を響かせ、青空に吸い込まれていった。
真っ青に白がよく映えた。
「ツナー!ツナのためにホームラン打ったぜ?!」
みんなに、スゲー!さすが山本!とか…言われて、オレのところに来るまで足留めを食らっていた山本…
それでも急いでそばにきて、笑顔でオレに言う。
オレのためって…
「恥ずかしいなあ…山本は」
オレが笑うと山本は、
俺はうれしい!
とか、言って抱きついてきた。
そして、耳元で低く囁かれる。
「約束は守ってくれよな?」
山本は、真っ赤になったオレの顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。
(おれのかれしはいつでもぜんりょくしょうねん)