久しぶりのヒバリさんとの帰り道。
この角を曲がるとすぐに自分の家。
「あっ」
赤い赤い空の色より紅いソレを見つけて、俺は立ち止まった。
「ちょっと、おいてくよ」
すると、すぐに頭上から声をかけられた。
少し低め…ちょっと機嫌が悪いらしい。
「すみません…ヒバリさん…あの…曼珠沙華です」
「………ワオ……よくその名前知ってたね」
ヒバリさんは目を細めそう呟いた。お馬鹿なオレからでた言葉が以外だったらしい。
「………それぐらい…知ってます」
すこーし、強気に言ってみたけどヒバリさんは外方を向いていた。
曼珠沙華(まんじゅしゃげ)…別名、彼岸花。
その花の名前をなんで知っていたのか……自分でも分かんなかった。
何ていうか…この角を曲がったらお別れって思ったら…目に止まって……。
「彼岸花って言うのはみんな知ってますよね?」
少しでも、話ができる話題が欲しかった。
でも、そんな恥ずかしいことは言わない。
「そうだね」
オレの気持ちを知ってか知らずか…薄い反応…
オレは恨めしげに隣にいるヒバリさんを見上げた。
「へ?」
そこにいたのは口元に手をあてて笑うヒバリさん。
「君さ…可愛いよね」
「えっ」
ヒバリさんの久しぶりの笑顔にドキドキしてたら、すぐ無表情に戻って…気付いたら手を掴まれていた。
体温上昇…
肌寒かったのに。
「そんなに僕といたいなら…言えばいいじゃない」
オレの家はこの角を曲がるとすぐ…
でも、ヒバリさんに掴まれて、歩きだすのは逆方向。
「……どっどこに…」
「決まってるじゃない…一緒にいたいんでしょ?」
僕の家だよ。
そう、言ったヒバリさんの横顔が赤い夕日に染まる。
「言いたいことあるならちゃんと言いなよ…咬み殺されたいの?」
「……なんで…分かったんですか」
オレが…もっと一緒にいたいって。
「………さあ…あ…そうだ」
「なんですか」
「君は僕以外に興味持ったらダメだよ」
ヒバリさんは彼岸花が咲き乱れている小道を歩きながら言う。
「花でもなんでも…君はさ…いろんなものに興味を持ちすぎだよ」
ああ、だから…さっき不機嫌だったんだ。
ボンヤリと小道に咲く彼岸花を見ながら考えていたら、グイッて…腕を引っ張られた。
「わっ…」
バランスを崩したオレを胸に抱き留めるのは、ヒバリさん。
「人の話聞きなよ」
顎に手を添えられ上に向かされた…と思ったら唇にカプリと咬み付かれた。
「ふっ…ひゃ?!…ひばっヒバリさん?!」
「咬みつくって言ったでしょ…ほら、いくよ」
咬みつくって……
ヒリヒリする唇をさすりながらチラリとまた、ヒバリさんの横顔を盗み見る。
夕日の綺麗な色に染まるヒバリさんの笑顔。
「ヒバリさんしか…見てないですよ」
握られた手の力が、強くなったから…笑ってしまった。
きっと、怒鳴られるとか…思ったけど。
なんにも言われなかった。
夕日に呑まれるみたいに染まるオレ達は何ていうか…
曼珠沙華みたいだった。
(このまま一緒にもっともっと曼珠沙華に染まればいいのに。)
>>スラーンプ。
スランプとか言いながら初ヒバツナってどうよ自分。
曼珠沙華がすごい好きです。