雲一つ無い綺麗な青空。

気持ちのいい晴天。

それなのに…君が隣にいないなんて…

意味無いじゃないか。


accomplice


「あれ…獄寺は?」
さっきまで机に突っ伏していた筈の、銀髪の彼がいつのまにかいなくなっていることに気付いた山本が話し掛けてきた。

「…………屋上でサボり」
「ああ…」

山本は納得したように苦笑した。

「…………」
「…………」

しばらく獄寺くんのことを悶々と考えていたオレは、山本の攻撃に気付かなかった。


バチンッ


「っ!!?…いってぇぇぇっ…」

額に鈍い痛み、目の前にはしてやったりのニッコリ顔の山本。

デコピン…。


「なに…するの」
オレは額を撫でながら山本を少し見上げた。

普通の人がやるデコピンより…山本の方が幾分か痛い気がするのは気のせいではなくて…

それでも、悪気はなくニコニコ笑っている山本を本気で怒る気もしなくて…

オレはため息をついた。


「いやー…浮かない顔してんなーって…」
「え?」

オレは山本の言った意味が分からなくて、前の椅子に腰掛けていた山本を見やった。

「あれ?…自覚無し……とか?」
山本は頬をかき、頷いたオレを見て豪快に笑った。

「ここ…ずっと皺寄ってたぜー?」

そう言われて、またデコピンされた。

痛い…。


「皺…寄ってた?」
「おう」

そう言うと山本はオレの頭をくしゃりと撫でながら席を立ち上がり、次、自習らしいぜ?
と、ニッコリと笑った。


「………」

オレはしばらく人の輪のなかに入っていった山本を目で追っていた。

そして、唐突に恥ずかしくなって机に突っ伏した。


え…と……え?オレが皺寄ってたのって…
えーっと…

――…獄寺くんのこと考えてた…――



バンッ


いつのまにかオレは椅子を倒しながら席を立ち、教室を全力疾走で飛び出していた。

その時、フッと、山本が笑顔で手を振るのが見えた気がした。


「っはぁ…はぁ…」

走るの慣れてないの知ってるだろ…

獄寺くんの馬鹿…

そうだよ…ばかばかばか…

なんで隣にいないんだよっ!


バンッ

「獄寺くんのバカー!!!」


「っっ!?………へ?じゅーだいめ?」


あれ……いつのまに屋上に着いちゃったんだろ。

目の前には…驚いたのか飛び起き、目を真ん丸にした獄寺くん。



ヤバ……


オレはかぁっと再び体中が熱くなるのを感じ回れ右をし…階段を掛け降りようとした。


ズルッ…


「わわっ!!」


ヤバいっ!!落ちるっ


オレは目をつぶって身体が傾くのを感じて…落ちたら痛いよなーとか考えてた。(我ながら馬鹿だなあ…)




あれ……痛く…ない?




「っ…ぶねー…」
耳元で心地よい声が焦ったように囁いた。

「ごっ…獄寺くん…」

「駄目じゃないッスか!…っと……すみません」

ちょっとびっくりした。
獄寺くんに怒られた。

「んーん…ごめんね…ありがとう」
オレは獄寺くんのオレを抱き締める手に触れながら言った。

「いいえ……ご無事で何よりです」


そう言ってオレから離れて、獄寺くんはオレの前に跪き、手の甲にキスしてきた。

ラテンの血って…厄介だ。いつも思うけど…本当に厄介。

「………獄寺くんの馬鹿」
「えっ!?」

獄寺くんは焦ったようにオレを下から見て、またびっくりしてた。

「なっ…えっ…じゅうだいめ?なんで…泣いて?」


「オレが…オレが山本にデコピンされたのも…オレが走らなきゃいけなかったのも…獄寺くんが格好いいのも……ひっく…獄寺くんが隣にいないからだよっ!」

オレは溢れる涙をそのままに、そうまくしたて…獄寺くんに抱きついた。

「えっ…ちょっ…待ってください十代目…」

獄寺くんはオレの背中をポンポンと叩きながら困ったように言った。

「デコピン…山本のヤツ果たして…てか…俺のせいって……隣……っ!?」

獄寺くんは見る見る顔を真っ赤にしてオレを見上げてきた。

「馬鹿…」
「…すみません」

オレがもう一度馬鹿とか言ってやろうと思ったのに言えなかったのは…形の良い獄寺くんの唇に吸い込まれたから…

しかも、執着に、ちゅっとかわざとらしく音を立てて何回もするもんだから…


腰が砕けちゃって、気付いたら…お姫さま抱っこなんてものされちゃってて…


キッと睨んでやったら、今度は額にキスされた。


「なっ…にするの…」
 
「え?…いや……山本のヤローがデコピンしたんスよね……消毒ッス」


山本をどんだけばい菌扱いするんだよ…

「つかなんでデコピン…俺のせいは分かりましたけど…なんで山本が十代目にデコピンを」

やっぱり果たします!
と、叫びながら屋上へと足を踏み入れた獄寺くんの額にオレはバシリと、デコピンを食らわせた。



「いっ?!……じゅうだいめ?」

「山本とオレは共犯者だもん…獄寺くんにはおしえなぁい」


オレは物凄く焦っている愛しい恋人を無視し、青い青い空を見上げた。



さっきより、綺麗に見えるのは…きっと…

あなたが隣にいるから。



Fin...


いいわけ⇒
甘い二人ってリク……甘いかなぁ?
つか、山本出張ってます。






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