「お そく…なっちゃった……」
オレは料理を作って、プレゼントも用意して…いつでも阿部くんが返ってきてもいいように食卓に並べていたら、ふと、食卓の真ん中があいているのに気が付いた。
「けっ…ケーキ!!!!」
オレが財布を引っ掴んで、慌てて出ていったのが…6時前。
生憎、駅前のケーキ屋しか開いてなくて、あんまり大きいのは買えなかったけど、おいしそうなケーキが買えた。
ちゃんと、隆也くん誕生日おめでとう!って入れてもらって、ろうそくも20本。
おばあさんに、お友達に?って聞かれて、恋人です。なんて言えないから、ハイと答えておいた。
そしたら、これどうぞってサンタのゼリー人形をくれた。
今、クリスマス様に試作品を作っているみたいだった。
だから、クリスマス…また買いに来ます!って言ったら、待ってますよって言われた。
クリスマスも…これたらいいなっていう…オレの願望なんだけど。
でも、宣言したほうが本当になりそうだったから。
店を出ると、外は真っ暗で、行き交う人々は白い息をはいていた。
もう、12月だもんね。
そういう自分の方こそ、白い息。それに、マフラーやらコートを着ていないのに気付き、一気に寒くなってきた。
「は やく…かえらなきゃ…」
今、何時だろうかと、歩きながら携帯をのぞくと、いつのまにか充電が無くなってたみたい。
昼頃は2こだったのにな。
そう思いながら、見えてきたアパートまで走る。
螺旋階段を1階分上がり、鍵を探しながら、一番奥の部屋を目指す。
でも、見つけた鍵はオレの手から擦り抜け地面に落ちる。
黒い髪、黒いコート…
ドアの前にもたれて、腕を組んでいる男性。
黒い瞳とかち合う。
「……阿部…くん」
阿部くんは無言でオレの前にきて、落ちていた鍵を拾った。
そして、ケーキをもっていない方の手を掴まれて、家のなかに滑り込むように入る。
そして、オレは与えられた温かさに驚いてケーキを落とした。
「あ……」
ケーキが落ちたからじゃない。
なんでか分からないけど、涙が溢れてきて、オレは阿部くんの背中に手を這わした。
「ごめん…な」
暫らく、よく分からないまま泣いていたオレの頭や背中を擦ってくれていた阿部くんの口からいきなりの謝罪の言葉。
よく分からなくて、でも離れたくなくて。
阿部くんに抱きついたまま、くぐもった声で、なんで謝るの?って聞いてみた。
「…俺…今日が自分の誕生日だって…気付かなかった…昼に花井に言われて気付いて、お前も忘れてるんだって思ってた。」
「わす れて…ない…よ?」
「うん…家帰って…ビックリした。…飯だけあって、お前いないんだもん……心臓止まるかと思った」
阿部くんはオレの頭の上で一息つくと、顔をオレの顔に近付けてきた。
そして、あったかい手で頬を包んでくれた。
「こんな寒そうな格好で…どこいってたんだ?…オレより冷えてるし…」
むにむにと頬を上下左右に動かされ、自然と笑いが込み上げてくる。
「あべく ん…くすぐった い…よお…」
「あっためてんだ…」
阿部くんはそう笑いながら首にマフラーを、コートを肩からかけてくれた。
阿部くんの匂いに安心する。
なんで、部屋に入らないで狭い玄関にいるのかなんて、そんな野暮なことは言わない。
暫らく、身体中を阿部くんに擦られて、おかしくて二人して笑ってた。
「くすぐった いよー…あべくん…」
「みはし……キスしていい?」
いきなり言われて、どうしようかと焦っていたら、顎を掬われて、唇を舐められた。
「あ べく………んっ…」
開いた唇から食むような口付け。
舌を絡めとられて、後ろに後退すると、すぐに玄関のドアで…
オレが頭打たないように、阿部くんの手が優しく後頭部にそえられる。
くしゃりと頭を髪を撫でられ、激しいキスを続ける。
腰が抜けてずり落ちそうになっても、阿部くんが支えてて、なかなか離れない唇。
離してほしくなくて、苦しいけどそれ以上に幸せで気持ち良くて、オレは阿部くんの首に腕を回して、後頭部を軽く押す。
もっと欲しいと。
「あっ……は……ん……あべ く…」
キスの合間に言葉を伝える。
「なに……?」
「っ………だいすき」
オレがそう言うと、阿部くんはピタリとキスをするのを止めた。
どうしたのかなって、顔を覗き込むと真っ赤な顔の阿部くんがいた。
「阿部くん……誕生日おめでとう……生まれてきてくれて…ありがとう」
オレはそう言って、阿部くんにとびっきりの笑顔を向ける。
「ありがとう……」
阿部くんはそう言って、目を赤くしながら、幸せそうに笑った。
それが嬉しくて幸せで、オレは阿部くんに飛び付いた。
「阿部くん…ずっと…一緒にいて ね!だい すき!」
(クリスマスも誕生日も、毎日毎日二人で幸せになろうね)
>>阿部誕企画参加させて頂きまことにありがとうございます。
こんな素敵な企画様にこんな駄文を…すみません。
妙に長くて大学生パロですみません。
一応、当サイトが連載している話の先の先って感じのお話です。
幸せな二人が書きたかったんですが…ダラダラしすぎてしまい反省してます。
阿部ほんとうに大好きです。
三橋を好きすぎる阿部が愚かどころか眩しいくらいです。
阿部隆也くん!本当に誕生日おめでとう!!
企画参加させて頂き本当にありがとうございました。
竜弥