「おい!居候っ起きやがれっ」
未だかつて深い眠りからこんなにも理不尽な起こされ方をしたことは無かっただろう。
耳元へのデカイ声と顔面にぶちまけられた水に恋次は重たい瞼を開けた。
「……てめぇ…」
「もう16時だ馬鹿野郎!一日がおわっちまうだろう!」
人の話も聞かずにツラツラと言葉を繋げる目付きの悪い糞餓鬼。
「…昨日寝たの…遅かったんだよ…虚が…出やがって…」
そうぼやき、水が滴る髪をかきあげ風呂場に行こうと立ち上がる。
すると人の髪をこれでもかと引っ張りやがったジン太はニッコリと嫌な笑顔で言い放った。
「お前とサッカーしてやる!」
「……は?」
何で上目線なんですか。
片恋ラプソディー
「おにーちゃん…一緒にお買い物に行ってくれない?」
暇を持て余して音楽聴いてた俺の部屋を小さくノックして、ドアを少しだけ開けた遊子が控えめに聞いてくる。
いつもなら元気に一人で行くのにと、不思議に思い首をかしげる。
「ん、どうした?」
「へへ…なんかお兄ちゃんと久しぶりにお買い物したいなーなんて」
そう言って笑った遊子が母さんとかぶって、やっぱり遊子は母さん似だなと思った。
変な顔をしていたのだろうか不思議そうに此方を見つめる遊子の頭を撫でて、遊子が持っていた買い物かごを持った。
「お兄ちゃん?」
「ほら、」
買い物行くんだろ?と肩越しに問いかけると、嬉しそうに微笑んで俺の腕に抱きついてきた。
「お兄ちゃん大好き!」
「…おう」
俺は遊子が引っ付いている反対、かごを持った手で鼻の頭をかいた。
「あ、」
一通り買い出しがすんで川原を歩いて帰るとき、遊子が小さく声を出した。
買い忘れかと思って遊子を見ると、別の方向を見ていたので自分もそちらに目を向けた。
夕日に照らされての紅じゃない。
紅の頭が二つ。
サッカーボールをがむしゃらに追いかける馬鹿二人。
少し可笑しくて笑ってしまった。
「ジン太君だ…あ、お兄ちゃん、ジン太君にこの間のお菓子のお礼してきてもいい?」
「ん?ああ、いーぜ」
この間の物凄い量の500円ぶんのお菓子のことか、と思い出して遊子を見送った。
遊子に気づいたジン太の反応がおかしかった。
髪と同じように耳まで真っ赤。
あと、恋次。
すぐに俺を見つけて、ヘラリと笑いやがった。
「ばーか…」
少し気恥ずかしくてかごと袋を持ったまましゃがんでそっぽを向いた。
「おい、シカトすんな」
「っ…おまっ、遊子の前で瞬歩使うなって」
目の前に現れた俺に少し驚いた一護はポケッとした顔、しかし次には怒鳴る。
忙しいやつ。
「大丈夫だって、話しこんでんし…で、どうしたんだ?」
「お前らこそ……俺は遊子と買い物…」
「へぇ、俺はアイツが遊べって五月蝿くて…」
「んだとっ!俺が遊んでやってんだ!」
物凄い早さで走って腰にタックルしてきたジン太に涙目を向け睨む。
「おまえ…どんだけ地獄耳…つか、いてぇ」
「ぷっ…お前らっていつみても似てんのな…髪も目付きも…兄弟もしくは親子だな」
「ほんとだー」
一護と一護の妹は似ていないと思う。どっちかって言うと一護はもう一人の妹と似てる。
でも、今二人して笑う顔は吃驚するほど似ていた。
そうやって俺等はそれぞれに見惚れていたみたいで、気づいたら眉間に皺寄せたいつもの一護が目の前にいた。
「立ったまま寝るなよ」
「ジン太君…大丈夫?」
一護の妹もジン太をのぞきこむ。
俺等二人は馬鹿みたいにドギマギして…
惚れた弱みってやつは厄介だ。
「こんな餓鬼と兄弟もしくは親子なんてやってられっか、さっきも寝起きに水ぶっかけてきやがるし」
「ふっざけんな俺だって願い下げだ馬鹿野郎」
糞可愛くないジン太に大人げないながらも食いつこうとしたところに、一護の妹の声がかぶる。
「あ!そうだ、お兄ちゃん!浦原商店にお菓子買いに行っていいでしょ?」
それに無駄に反応を示すジン太。
現金な奴。
「あー?まだ菓子家に残って…」
「よーし!ひよこ頭の妹っ!行くぞっ」
「うわっジン太君痛いってばー」
「あ、…行っちまったし…」
一護の言葉を遮り、ジン太は一護の妹を引っ張り走り出した。
俺と一護は二人の後ろ姿を暫く呆然と見送っていた。
ふと、一護の持っている重そうな袋が目に入り半ば強引に袋を奪い、俺は歩き始めた。
「え、あ…おい…」
「重そうに持ちやがって、持ってやるよ」
後ろから俺は女じゃねーとか聞こえるけど全面無視。
隣にならんできて、小さく聞こえたありがとうはしっかりと聞き入れて、笑ってやった。
そしたら顔を染めて話題を変えやがった。
「ジン太も分かりやすいな……でも大変だぞ、遊子は天然で鈍いんだ。な、恋次」
そーだな、と素っ気なく返してニヤリと笑ってやると腰の辺りをグーで殴られた。
そんな一護に少し笑って、さっき思ったことを言ってみる。
「…お前らやっぱ似てんだな…兄妹」
「なんで」
吃驚したようにこちらを見詰めてくる一護がおかしい。きっと、似ているなんて言われたことは少ないのだろう。
「笑った顔が似てた」
「っ…バーカ、兄妹なんだから当たり前だろっ」
照れたように眉を下げ、口元は弛むのか口元を手で隠す一護が、可愛くて俺も照れた。
照れ隠しに厭らしく笑ってからかってやった。
「照れんなよ一護」
「てっ…照れてなんかねぇよっ」
「あと…天然で鈍いのも」
「はぁ?」
「おにーちゃーん!」
何かを言おうとした一護は浦原商店からの妹の声に呼ばれ遮られる。
「へいへい、おい、恋次…行くぞ」
そう言って自然に出たのだろう笑顔を残して一護は二人の所に。
俺はというと、向けられた笑顔に不覚にも見とれて動けなくなってた。
身体中が熱い。
「気づけよ…バーカ」
恋次は日が暮れる空を見上げ小さく呟いた。
(好きなんですけど、)
>>スランプ過ぎていかん。
なのに、今、恋一が大好きだ。
恋次とジン太はマジで親子に見える。
一護は笑顔がママに似てるんだよねうん。とかいう妄想。
みんな一護が好きならいいよ。
若干、カラブリのネタ。
ジン→遊子が可愛い。
竜弥