月が明るい…
幸村は着流しを整えながら、月明かりが洩れる僅かな隙間を開けた。
柔らかい月明かりを浴びるように月を見上げ、眼(まなこ)を閉じた。
冬の月は空気が澄んでいてとても綺麗で明るい。
こんな冬の月がでている時期は、己の忍達の仕事は先ずない。
幸村は眼を開き、廊下の突き当たりの部屋を見つめる。
佐助は眠っているだろうか…
幸村は障子を静かに閉め、部屋を目指す。
寒くて吐き出す息が白くなる。
床を擦る足がかじかむ。
幸村は佐助の部屋の障子に手を掛け、ソッと開けた。
中は薄暗く布団だけが敷いてあった。
いない…。
一気に寒さが押し寄せてきて幸村は肩を震わせる。
「…旦那……寒いよ?」
幸村の肩にフワリと掛けられた寝具。
フワリと佐助の香りがする。
「さすけ…」
目の前の障子が開けられ、佐助が入る。
幸村は装束姿ではない、着流し姿の佐助を見つめる。
「ほら…そんなとこいたら…寒いでしょ」
「……」
「おいで…旦那」
佐助は腕を広げる。
幸村は部屋に入り、後ろ手に障子を閉めた。
障子からの明るすぎる月明かりで佐助の顔が浮かぶ。
いつもの誰にでも見せる笑顔じゃなくて、二人きりの時に見せる優しい笑顔に幸村はホッとする。
「……佐助ぇ」
幸村は佐助の腕の中に埋まる。
「どうしたの……眠れない?」
幸村は佐助の胸に頭を擦り付ける。
「あら……こんな夜中に…甘えられちゃったら…我慢できなくなっちゃうよ?」
おどけたように佐助が言う。
「……さすけ…すき」
幸村は佐助の着流しの隙間から手を差し込み、佐助の筋肉のついた逞しい胸板を撫でる。
「……今日は…大胆だね」
佐助はニヤリと笑い幸村の顎を掬い、深く口付けた。
「……んっ…あ…」
躯を更に強く抱き締め、口腔を堪能する。
耳を犯すようなピチャピチャと云う水音に興奮する。
「ふぁ……さすけぇ…」
舌を最後まで絡めたため、涎が幸村の顎を伝う。
「んー…やらしい旦那もいーね…俺様興奮しちゃうよ」
いつもならここで幸村の『破廉恥!』等が聞こえるはずだが、今回ばかりは違った。
「やらしい某は…いやか?」
とろんとした眸を向けられた佐助は、幸村の顎に伝う涎を舐めあげ妖艶な笑みを浮かべる。
「いいや…大歓迎だよ」
「あっ…ふぁっ……やっ…さす…けぇ」
白い躯をしならせ、悩ましげに眉を顰め女子(おなご)の如く艶やかな嬌声をあげる。
月明かりに白い躯が更に艶やかに佐助の眸に映る。
「いやじゃないでしょ……こんなにしちゃってさ」
佐助はしとどに濡れた幸村自身を手のひらでやわやわと弄ぶ。
「ひぁっ……はぁっ」
首筋を舐めながら胸元までおり、紅く色付く突起を舌で突く。
「あっ!…ひぁんっ……」
眼を開き喉を逸らせる。
すかさず佐助が白い喉に噛み付く。
幸村は痛さに泪を流す。
「だんな……舐めて…?」
紅い唇の間から垣間見える幸村の紅い舌に、佐助は指を絡める。
「は…んぅっ……んっ…ちゅっ…んぁっ」
幸村は素直に佐助の指を舌に絡め、舐めあげ、時折甘く甘えるように噛み付く。
「…えろいね…だんな……も、いーよ」
糸を引きながら指を外すと、幸村は名残惜しそうに見上げる。
そんな幸村を見て佐助は音を立てて幸村の唇を舐め、覆うように接吻を繰り返す。
「ふっ…しゃ…すけ……ちゅぷっ……んっンっ………ひっ?!」
幸村の呼吸が一瞬止まり、痛さに顔を歪める。
「一気に二本は…ちときつかった?」
悪怯れた様子はなく、実に嬉しそうに笑みを携える佐助。
「ああっ…もっ…だめぇ」
指が後孔を押し広げるように、グリグリと奥に深く挿入を繰り返す。
痛みは日頃の情事ですぐに薄れ、今度は押し寄せる快楽に耐えられなくなってきた幸村は、いやいやと言わんばかりに頭(かぶり)を振る。
「嘘言わないの……乳首も…美味しそうに熟れて……」
耳元で囁き、ツンと主張する乳首を指で強く擦りあげ潰す。
内は、指を三本に増やし奥の内壁に埋まるしこりを爪で引っ掻く。
「あああっ!…ひっ…さすけっ!だめっ……ンゃああああっ!」
幸村の背が一層しなり、幸村の腹と佐助の下半身に精をぶちまけた。
荒い息を吐き出しながら、佐助はまだ呼吸もままならない幸村の膝裏を抱えあげ、己自身の昂ぶった男根を濡れ曾ぼる後孔へと突き刺した。
「ひっ…あああっ!…さすっ……さすけぇっ!さすけ」
質量の全く違うものをイッたばかりの幸村には、きつ過ぎたのか、幸村は佐助の名を呼びながら敷き布団を掴む事で痛さを凌ごうとする。
そんな幸村を眼下に納め上唇をペロリと舐める。
佐助のその仕草に興奮を促進され、幸村の萎えたモノは頭を擡げる(もたげる)。
「だんなの中…俺様を締め付けて厭らしく吸い付いてくんね…」
「やっ…ゆわないで……ぁんっ!……あつっ…さすけぇ…あついっ」
ぐちゅぐちゅと後孔を広げながら律動を繰り返す。
「あっあっ……もっ…」
「だんな…だんな……」
佐助は敷き布団を掴む幸村の手をゆっくりと離し、月明かりに照らされる指先に接吻を落とし、己の背に回させた。
幸村は泪の跡を残した顔に笑みを浮かべ、佐助の顔に接吻を送る。
「っはぁ……さす…けぇ……んぁぁっ」
「っ…は………だんなっ」
同時に弾け、幸村は佐助と己の腹に、佐助は幸村の最奥に精を放った。
「さすけ……」
「なぁに?旦那……寒い?」
布団に二人で抱き合いながら潜りこむ。
佐助は己の腕のなかにいる幸村を覗き込み、額に接吻をする。
「佐助の…髪が……」
「ん?俺様の髪?」
「月明かりに照らされて……綺麗だな…」
幸村は布団から手を出し、佐助の柿色の髪を優しく梳く。
「……旦那…」
佐助は微笑を浮かべ幸村に深く接吻をする。
「……っン…」
二人の影がまた布団に静かに沈んだ。
(月明かりに浮かされる)
>>お題第一弾。
破廉恥大いに失敗。
最後の辺はなにが何だか分からなくなりました。
破廉恥リベンジします!
竜弥
題:確かに恋だった