「まぁあさむねさまぁあああ!!」

ちょっと、営業妨害もいいとこだよね。
店の命の玄関ぶっぱなして、どこぞのヤのつくお仕事と疑われかねない顔が入ってくれば、これは立派な営業妨害になるよね。

佐助は幸村を後ろに庇い、今しがた飛び入りしてきた人物に呆れた顔を向ける。
「人様の店壊すのやめていただけます?」
「そんなことより政宗様は…」

肩で息をして更にドスのきいた声で言うもんだからお客さんが脅えちゃってるよ。
そんな中幸村は俺の後ろからヒョッコリと顔を出した。

「小十郎殿っ」
「幸村…ここに政宗様は来てないかっ?!」

俺を押し退けて、幸村の肩を掴む。ちょっと触るなって、ヤのお仕事がうつったらどうしてくれるんだ。

「?政宗殿なら一番テーブルに…あれ?…」

幸村が一番テーブルを指したがそこはもぬけの殻。いつきちゃんが幸村に手を振るのが見えただけ。
幸村は律儀に手を振り替えして、小十郎に困った顔を向けた。

「逃げられたみたいですね」
「あんのっ…糞ホストが」
この人、No.1ホストを糞呼ばわりしちゃったよ。まぁ、全然かまやしないんだけどね。
片倉小十郎。『CLUB BASARA』の第一責任者兼伊達政宗のストッパー役。なんでも独眼竜がこの業界に飛び込む前は独眼竜の御付きをしてたらしい。

「片倉の旦那、竜の旦那のこときちんと見ててくれないと困るんだけど」
「いや、本当に…すまないな…騒がせてしまって……幸村…また、顔を出しにくる…客として…」
「はい、あ…そうだ某今から休憩だったんです、良かったらあそこのテーブル空いてるんで、お話しますか?」

幸村の言葉に驚いた。あんたお人好しもいいとこでしょうが。と、発狂したかったけど、抑えておいた。

「いや、しかし…」
「某は休まなくてもなんてことないんで、政宗殿を追いかけてばかりでは大変でしょう」
「ちょっと幸村…」

佐助は幸村に少し焦った顔を向けるも、幸村はニコリと笑みを返した。

「小十郎殿は御得意様ですし…どうぞ」
「ゆっ幸村…」

幸村は小十郎の腕を掴み一番テーブルへと歩みを進める。次に声を張り上げて才蔵に声をかけた。

「才蔵ー小十郎殿にお酒を」
「いや…幸村…まだ仕事中だ…酒は」

幸村の言葉に反論するが幸村は笑って小十郎の手に自分の手を乗せる。

「小十郎殿はお酒…御強いでしょう…?」

そうニッコリと言われたら誰も逆らう者はいない。
小十郎は静かに頷いて佐助が持ってきた焼酎を見つめた。
幸村はソッとお猪口に注ぎ入れ小十郎に渡す。それを受け取ろうとしたが、その間にニュッと電話がかざされた。
二人は何事かと電話の先を見ると実に面白いとばかりに厭な笑みを携えた佐助がいた。

「佐助っ?」
「片倉さん…迷子の竜が見つかったらしいよ、今、あんたらの店で捕獲されてるって。ちっこいのから電話だよ」

幸村の持ったお猪口を受け取りテーブルに置きながら佐助は電話を小十郎に渡す。

「蘭丸か…」
小十郎は小さく呟いて佐助から電話を受け取り、二三蘭丸と言葉を交わすと立ち上がった。

「すまないな幸村、代はここに置いておく」
「お代なんていりませぬよ?小十郎殿、」

お酒も飲んでおられませぬしこんなに沢山、と幸村が詰め寄ると小十郎は笑って幸村の手に触れる。

「今日もお前に会えて良かったよ、またキチンと客としてくる…」
「それは嬉しいです…しかし今日はお代なんていらないと言うつもりでした…だからこれは受け取れませぬ、」

幸村は小十郎に握られていない方の手で、札束を掴もうとしたが小十郎がその手も掴んだのでそれも儘ならなかった。
頬を膨らませ怒る幸村の顔を覗き見て小十郎は屈託無く笑うと幸村の手の甲にキスをした。

佐助は馬鹿みたいに、あー!だの、わー!だの声をあげた。

「これで、それ程の額となっただろう猿飛、」
「俺様気障な人嫌い、つーか足りないくらいだよ」

幸村の手をすかさず拭きながら佐助は憎らしげに言った。

「あ…そこ…政宗殿がキスをなされた…」
「ぐっ…じゃ…じゃあな…」

小十郎は幸村の言葉に心底辛そうな顔をして店を出ていった。佐助はその姿を腹を抱えて声を漏らさないように笑っていた。
暫くして爆笑から返ってきた佐助が幸村に向かって言う。

「もー…御人好しなんだからさ」
「まぁよいではないか…」
「今日、あと一人だからさ…頑張ってよね」

休憩時間無くなっちゃったじゃないのさ、と、ぶつぶつと言う佐助に幸村は笑った。

「来てるよ、鬼がね…今日は小鬼の方だけね」

佐助の言葉に幸村は四番テーブルをチラリと見て、珍しいこともあるのだな、と呟いた。



竜に振り回される苦労人





>>三万打続き、やっとアップいたしましたぁああすみません!!
佐助視点で進めてたのに…なんだか難しくなってこういう進め方になっちゃいました。
なにより亀更新すぎる←
お待たせしたうえにこのクオリティ申し訳ないです。
次もすぐにあげるつもりです。鬼ヶ島の鬼が出ます。はい。
若干、鬼の父ちゃんでばります。

小十郎は本当に苦労人だと思われます。あの竜の所為\(^^)/
蘭丸はいつきと仲が悪ければいいけど好き同士なら萌えますね←



竜弥


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -