「何してんだテメェ…」

「え?幸の寝込みを襲おうかなって」

一切悪びれた風でも無く、至って普通に言うこの男をどうしてくれよう。
一先ず………

「…………前でろ!前だ!!!」

殺ろうと思う。



せってこういうこと




「何もあんなに怒んなくてもいいじゃんね」

小十郎に殴られたのだろう、頭を擦りながらお茶を淹れている幸村に愚痴をたれる。

「佐助が変なことするからだ…」

佐助と呼ばれたこの、オレンジ色の髪にいい具合に着崩したスーツを着込んでいる男は、猿飛佐助という。
片倉小十郎がデビューした当初の編集担当をしていた人物の息子だったのが佐助である。
デビュー当初から父についてきていたのが祟ったのか、今では小十郎の担当になっている。
なかなかの敏腕社員で、21歳という若さで次期編集長、総取締役と言われているらしい。
幸村とは、幸村が10歳、佐助が14歳の時からの仲だ。
佐助は本気で幸村を好いているようだが、幸村からは良いお兄さんという認識だ。


「はい…お茶」
「んーーありがとう幸ちゃーん」

抱きつこうとした佐助は見事にソファにダイブした。
不服そうな顔を向ける先には、物凄い形相の小十郎がいた。
脇にはシッカリと幸村を抱えて。

「幸村…コイツが帰るまで、俺の隣から離れるな…もしくは、部屋にいろ」

ドカリとソファに腰掛け幸村を自分の隣に座らせる。
小十郎の言葉に驚きながらも反論する幸村。

「え…大丈夫…佐助は本気じゃ無い…」

「え!俺様いつでも本気だけど?!」

「うるさい、佐助は黙っておれ…話がズレる」

「ひどーい……俺様と目が合うと女の子はみんな妊娠しちゃうって言われてるぐらいの俺様がさーこんな酷い扱いってないー」

「手が早いだけだろ…この変態」

「女子高生に手を出してるオッサンよりマシです。俺様、犯罪者じゃないもん」

その言葉に小十郎は怯む。
あーあ、言っちゃいけない言葉言っちゃったでござる。
幸村が小さく呟き、小十郎を見上げた。

「どうせ…俺は…犯罪者だよ…」
案の定、小十郎はネガティブに入っていた。
この話題での小十郎のネガティブ思考は半端なく立ち直りが遅い。
そのことを重々承知している佐助は、焦ったように時計を見た。

「あ、ネガティブ入っちゃった……ヤベー、手がつけらんないんだった……まだ、雑誌のコラム書かせてないのに…シマッタ」

「佐助、きっと、これ結構時間かかるから…コラムは今日中には書かせてメールで送らせる…、仕事入っておるのだろう?」

佐助が時計を気にするのに気が付き、幸村は机の上の書類を片付け佐助に手渡しながら言う。

「あー、何て良い女なの幸って…俺様マジで惚れてるんだからね……ちゃんと考えててよ、そこのネガティブオヤジが嫌になったらでいいから!いつでも待ってる」

「また冗談…ほら、行った行った」

時間にあまり余裕がなかったのか、すぐに部屋を出ていく佐助を見送り、チラリと隣の小十郎を見る。
小十郎はソファにグタリと座り、首を後ろにもたげ、宙を見つめていた。
その姿に溜息を一つつき、幸村は小十郎に身体を寄せ呟く。

「小十郎はさ…私のこと信じてないのか?」

「……………え?」

暫くしてやっと反応を示した小十郎に頬を膨らませながら言う。

「だから……心配になるってことは…私のこと信じてないからじゃないかなって…思って」

「信じてないって…?」

よく分からないのか幸村に向き合い覗き込もうとした小十郎だったが、幸村がグイッと胸を押してきたのでそれはできなかった。

「根本的に!……なんて言うか…好きって言ってるんだから…年なんか気にしないで堂々……できる…はず…」

最後の言葉は消え入りながら、幸村は小十郎のワイシャツを掴む。

「幸村…キスして……」

そんな幸村を見て、小十郎はクスリと微笑み幸村の頭を撫でながら言った。

「なっ?!?!!!なななななっ!!?何?!はっ破廉恥っ…離せっ」

盛大に顔を真っ赤にさせ、逃げの態勢に入ろうとした幸村は早くも小十郎に抱き締められる。

「俺を安心させてくれ」

「信じてない!!酷い!」
小十郎の厚い胸板に顔を押しつけくぐもる声で叫ぶ。
「違う…信じてる……だからキスが欲しい」

「欲しいって……っ」

「欲しい」

小十郎の真剣な顔に幸村は目を逸らす。

「っ……意味が分からぬ……したいなら…自分からすればいいであろう」

「…………それじゃ…意味が無い」

「………」

小十郎はソファに深く座り込み幸村を自分の膝をまたがらせ座らせる。

「ん…はい、どうぞ」

実に楽しそうな小十郎に些か憤怒の念を抱きながらも、自分は心底この男に甘いと、幸村は小十郎の両頬に手を添え、唇を寄せた。

…ちゅっ――
小さな音を立てながら唇を離そうとした幸村の顎を小十郎は掬い、同時に幸村の後頭部を押し、深くキスをする。
逃げる舌を追い掛け絡ませる。
唇を覆うようにキスをし、何度も角度をかえる。
どちらとも云えない唾液を幸村が嚥下し、舌を絡ませながら漸く唇を離した。

「っ……ばかじゅうろうっ!!!調子に乗るなっ!」
叫んだ幸村に小十郎は満面の笑みを見せる。

「安心した…」

「ばっ……」

「好きだ…」

「っ!」

幸村は目を逸らそうとしたが小十郎がそれを許さないとばかりに、幸村の両頬に手を添えた。

「だから…お前が…こんなオヤジじゃなくて…もっと年の近い…そうだな…例えば佐助とかの方がいいんじゃないか…とか…思うんだ」
「そんなの…勝手すぎる……私と小十郎の気持ちはどこにいったのだ…」

そう言った幸村に、小さく笑い、そうだな。と呟いた。

「………小十郎…」
「ん…なんだ……」

手を離し幸村を抱き締めていた小十郎は腕の力を緩め、幸村を覗き込んだ。

「……私は……小十郎じゃないと嫌だ…」
「な…お前……泣いてるのか?」

幸村の瞳から次々と流れる涙を見て、小十郎は息をつめる。

「小十郎が…そんな…淋しそうな顔…するからっ…」
「泣くなよ…お前に泣かれると困る」
小十郎は眉をひそめ、幸村の細腕を掴む。

「泣いてなんかないっ…ばかじゅうろうっ!オヤジっ!犯罪者っ!」
幸村は暴れ、小十郎の手を振り払った。
「な…お前傷を…えぐるな…」

そして、小十郎に抱きついた。
それに驚いたのは小十郎で、目を見開いた。

「好き……どんな小十郎だって、私は…好き…それぐらい分かれっ!」

肩口に顔を埋め盛大に泣きだした幸村に、小十郎は笑った。

「……ああ………俺は幸せだな全く」

頭を撫でながらそう呟いた。
それを聞き逃さず、幸村は、あたりまえ!と叫んだ。


(幸せじゃないとは言わせない!)





>>参萬打リク
mk様のリクで、こじゅゆきでもしも幸村が女の子だったら
女子高生がお好きと言って下さいましたので、リクにお答えできたかわかりませんか、こじゅゆき書かさせて頂きました。
大変遅くなってすみません。


今回のは…でました。奴が。
佐助くーん。←
もっと幸と絡ませてこじゅがマジ切れが書きたかったのですが…
あんまりやっちゃうと、担当外されるじゃん!とか無駄な考えが横切りましたので(え)
あえての、ソフトで。


参萬打ありがとうございました!

竜弥

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