「初めまして。今日からこの婆裟羅学園の古典を受け持つこととなりました、真田幸村といいます。よろしくお願いします。」


出会った瞬間にゾクリと背に何かが這う感じがした。それから、目が合う瞬間まで心臓が壊れたようにドクリドクリと煩かった。
あの茶色い瞳と目が合った瞬間に、それも止まった。
息が詰まって、身体中の血が顔に集まった気がした。

冗談だろう。
相手は男だ。
どうかしているんだ。きっと。


「あの…2年D組の担任の方は…」

いきなり声をかけられて、心底変な顔をしていたに違いない。
青年は、俺の顔に何か?と言う。

佐助は、目の前にいる青年に笑いかけた。

「俺が2年D組担任で数学教師の猿飛佐助です。よろしくお願いします。真田先生…何か分からないことが合ったら聞いてくださいね」
一先ず、いつもの笑顔をはりつけた。
これで、好印象は与えられただろう。

きっと何かの間違いだ。
佐助は自分にそう言い聞かせた。



×××××


「Hey!幸村!俺と付き合ってくれ!」

「なっ…伊達…くん…じょっ冗談はやめなさい」

あーあー、そんな弱っちい断り方じゃあ…飢えた男子高生には逆効果だ。
佐助は眼鏡を上げながら、持っていた本をそのままに、真横で繰り広げられているしつこい愛の告白とやらを横目にみる。

「冗談なんかいうかよ!俺のloverになれよ!なぁ…幸村先生?」

「いや…俺…男…」

幸村の手を握るのはD組問題児の伊達政宗だ。

佐助は面白くないというように本を閉じた。


「ねぇ、伊達君?…君…数学の課題だしてないですよ?」

「Ah?んだよ…んなのいつも言わねーだろ?なんでまた…」

佐助はニンマリと意地の悪い笑みを浮かべ、伊達の顔間近にペンを突き付ける。

「ださないと……春休みは課外ですよ」

「Ha!課外なんかやるかよ」

「学園追放しますよ?そうすると…真田先生には金輪際近付けませんね」

これでどうだ。と、佐助は冷めているコーヒーを飲む。
瞳は政宗を射ぬいたままだ。

「Shit!この陰険猿め」

「今の減点1ですからね」

舌打ちをし、職員室からさる政宗の後ろ姿にそう声をかけ、手を振る。

職員室前の廊下で物が倒れる音がしたかと思うと、元気じゃのう伊達ー!と言う信玄の声がした。


「あ…あの…」

「武田先生来きましたよ…?挨拶いってきたらいいのでは?」

古典教師の武田信玄は、幸村が高校の時の担任だったと聞いた。
だから、古典教師を目指すこととになったと、嬉しそうに言っていたのを佐助は思い出し幸村に言ったのだ。

案の定、そわそわしだし、佐助の顔と信玄を交互に見ている。


「さっ猿飛先生!あのっ…ありがとうござ…」

「あー、いーですよ…気にしないでください…」


礼を言いたかったのかと佐助は苦笑し、礼なんかいいからと付け加え、また本を開いた。

「あっの!本当にすみません!あの…ああいう冗談には…なっ慣れてなくて」

(普通慣れるもんじゃないでしょ…)

佐助は頭を何度も下げ礼を告げる幸村が耳まで真っ赤なことに気付く。

その耳に妙に触れたくなり、佐助は耳に触れてみた。

「ひわっ!?さっさっさささ猿飛先生??!」

妙な声を出し飛び上がった幸村に些か驚いたが、次の瞬間、口元を押さえ喉の奥でくつくつと笑う。

(ひわっ…て…)

「なっなななな…何故笑われるのですか?!……おっ…俺……破廉恥事にはどうも疎くて…」

(破廉恥??)

佐助は目尻に涙を溜めるほど笑い始めた。
どうして笑われるのか分からず幸村は焦る。

「おっ……猿が笑うなんてあんまねぇなぁ」

声のするほうを見ると、右目を眼帯で隠す、佐助の同僚の長曾我部元親が物珍しそうに佐助を見ていた。

「長曾我部先生…」

「うるさいですよ…元親…先生?」

佐助は眼鏡を外し目尻に溜まった涙を拭う。

佐助は元親にあっちに行けと、手であしらう。

「ひでーなぁ…お前…あ、真田…武田のおっさんが呼んでたぜ」

元親は幸村に言うと親指で信玄を指す。

「はっはい!」

何度も頭を下げ信玄の所に走る幸村の背を佐助は見つめる。

すると、さっき幸村が座っていた幸村の椅子に元親が腰掛ける。

ニマニマ笑って…何がそんなに楽しいんだと、佐助は眼鏡を戻し元親を睨む。


「睨むなよー……イーもんみつけたじゃねーか」

元親は信玄と楽しそうに話す幸村の後ろ姿を親指で差す。

佐助は本を開き、ニヤリと笑った。


「まぁね………暇潰しにゃなるだろ?」

「暇潰しって…ひでーのお前……まっ、今回は相手が男だけどなー」

「でも、手はだすなよ」

「ださねーよ…お前こえーもん」

元親は顔の前でプラプラと手を振る。

ならいいけどさと、佐助は言ってこちらを振り向いた幸村に笑いながら手を振る。

それを見て、いつまで猫かぶるのかねぇ。と元親は苦笑した。


佐助に控えめだが、手を振り返す幸村の笑顔を見て佐助は呟いた。

まぁ、暇潰しには…ね。



なんかじゃない!
(これはただの暇潰し!)




>>ですます調の佐助が可笑しい点。(実は腹黒だけど)

幸村がござる口調じゃないから可笑しい点。

中途半端な点。

なんかいろいろ可笑しい点。

どうする!?(知りません)
佐助は学園では猫かぶってます。
元親は幼なじみ故、知ってます。

先生×先生に萌えるが失敗。
これ、つづきます。

きっと。



竜弥


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