「…旦那ぁーちゃんと乗ってる?」

掴んでいる肩を震わせながらケラケラ笑うオレンジの髪の毛を忌々しげに見つめ、髪を掻き分け旋毛を押してやった。
一瞬グラリと歪んだ視界は佐助の叫び声と共に正された。

「ちょっ!痔になるってばっ!もしくは下痢!」
「戯けっ、さっさとこがぬかっ」

佐助の自転車は二人分の重さを耐えるように、しばしばキイキイと独特な音をさせて進む。
今、自分は自転車をこぐ佐助の後ろに足を掛け、所謂立ち乗り状態。
佐助は座れと煩いけれど自分はここからの眺めが好きなのだ。
景色も抜群。眼下には揺れるオレンジ。最高じゃないか。

「押しただけでなるなどと…」
旋毛を押したら痔になるなんて(もしくは下痢)誰が考えたのか本当に。

「あれーでも旦那が言ってたんだよー」
「うるさい…黙らぬと飛び降りる」

嫌なことを思い出させおって。
あれは、慶次殿が…。
思い出すだけでも腹ただしい。

「飛び降りるって…それ、旦那が痛いだけじゃん…」
俺は佐助の言葉を無視して、そのまま荷台へと腰を下ろす。
辺りは夕闇が広がり、人もあまり通らない。
だから、何時もならしないことをしてやった。

「っ…」

腰に手をまわし額を佐助の背中に擦り付ける。
案の定、ビクリと震え熱くなる身体。面白い奴だ。

「……どこにいくのだ…佐助」

腹の前で組んだ腕を佐助が片方の手でガッチリ掴む。そんなことをせずとも、今日は離したくない気分なんだ。とは、絶対に言ってやらない。

「ん…旦那と一緒なら何処でもいっかな」
「…人のことを拉致したあげく…場所を教えぬのか」
「いや、本当に決まってないんだって…」

何処に行きたい、と聞かれたけれどそれも無視して言葉を紡いだ。
夕闇に溶けたように思えたその科白を佐助はしっかりと聞き取っていて、今、確実に前を向く端整な顔は情けなく歪んでいると思う。
「嫉妬なぞしおってから…」
「……」

なんだバレてたんだ。と、佐助は少し肩を揺らして笑った。

「…俺はお前しか……見ておらぬ」

今度こそ夕闇に溶けたと思った科白は、急ブレーキの音と共に佐助の唇へと呑み込まれた。


追いつくものなどいない






>>青春的佐幸を書きたかった。撃沈しましたが。
自転車で2ケツて大変萌えませんか。大好物なんですが。
色んな人と話してた幸村にイライラして拉致した佐助君。
どこに向かうのだろうか。海?←捻りもなにもない
つか、旋毛を押したら下痢もしくは痔になるんだよね。どっちだっかわからないが\(^^)/←
あれ?違うか?


竜弥




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テーマ「人外ファンタジー」
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