「ねぇ、旦那…もしかして嫉妬?」

佐助のそんなデリカシーの欠片もない一言に憤怒して、佐助の横っ面をひっぱたいて、はや30分が過ぎた。


今日はバレンタインデーだと言うことで、訪れた佐助の家。
毎年佐助に貰ってばかりの自分が嫌で、今回はなんと既にプレゼントを用意してきた。
さぁ、渡すぞと言う時にチャイムが鳴り、佐助は玄関に走ってしまい、自分は佐助のベッドにダイブする。
チャイムに少しホッとする自分がいて、今になって渡すのが躊躇われる自分が情けない。

抱き締めた枕は当たり前に佐助の匂いがして、なんだか佐助の笑顔が見たくなって、やっぱりあげようと意気込んだ時に、ふと、佐助の帰りが遅いと耳を澄ます。

「……」

聞こえた声は数人の女性の声。
きっと、今日は土曜日だから家に直接きたのだろう。

ああ、そうだ。アヤツはモテるのだ。

今更気づいたことじゃないのに、妙に気分が沈む。
カバンに手を突っ込み綺麗にラッピングされた包みを取りだし掌で弄んで、ベッドに投げる。
そしてそれを押し退けベッドに潜り込む。
そこで佐助が帰ってきた。手にはシッカリ綺麗な包みを持って。

「あれ、旦那どうしたの…眠い?」
ギシリとベッドのスプリングを軋ませ佐助が座ったのだとわかる。
それを無視すると避難の声と布団を引き剥がしにかかる佐助。

「だんなー」
「触るな馬鹿者」

「ねぇ、旦那…もしかして嫉妬?」

カッとなって手が出てしまった。


殴った後の吃驚した佐助の顔が瞼の裏に焼き付いている。
これじゃあ、自分の玩具をとられた子供みたいだ。
佐助は玩具じゃないけど…。
頭まで被った布団。さっきからずっと佐助の匂い。
なんていうか抱きしめられているようだ、なんて考えた自分に恥ずかしさマックスとはこのことかと、幸村は小さく唸る。

そんな幸村を知ってか知らずか、佐助の声がして肩を震わせる。

「ね…仲直りしない?」
「………」

声が出ない変わりに涙腺が弛みだす。
ああ、あと少しで零れてしまいそうだ。

「バレンタインなのに…旦那と喧嘩したくないし…俺…旦那からのしか受け取らないよ」

佐助の言葉に飛び起き叫ぶ。
叫んだ後溢れそうだった涙が情けなく一筋零れた。

「嘘を申すでない」

涙に驚いた顔をしたがすぐに佐助は目許に優しく触れてきた。

「嘘なんてついてないよ」
どうしてそんなに優しく嘘をつくのか。
涙が止まらなくなるじゃないか。

じゃあ、と、幸村が視線を向けたのは先程佐助が持ってきた綺麗な包み紙の数々。
幸村の視線を追い、納得がいったのか、佐助が少し笑って言った。

「アレは俺のじゃないよ」
「は」

少し俯いていた幸村は弾かれたように佐助を見つめる。

「俺は旦那からしか貰わないし食べないって決めたの、去年ね」

去年旦那に俺が貰ったチョコ、あげたでしょ?そしたらすごい眉間に皺寄せてたでしょ。
嫉妬してくれたのかなって、ちょっとうかれた。
そう言われて顔、身体に広がる熱。

「俺ね本命からしか貰わないって言ったし…今日持ってきた子にもそう断った。アレは旦那に渡してくれって言われたの」

佐助が包みの一つを手渡してきてそこに書かれた名前は自分の物。
それを暫く呆然と見ていたら、取り上げられ少し機嫌が悪い佐助と目が合う。

「俺様が先に嫉妬しちゃった…ゴメンねあんなからかうようなこと言って…」
「すまぬ…さすけぇぇ」

余りにも自分が愚かすぎてそれでも怒ることすらしない佐助に抱きついた。

「(かわいい…)いいよ、ほら、泣かないでよ」

「うう…佐助……コレ…」
自分の足許に転がっていた佐助へのチョコレート。

「…これ…俺に?」
「ん…」
恥ずかしくて佐助の胸に顔を押し付ける。
頭を優しく撫でられながら上からの甘い囁きに顔が綻ぶ。

「すっごく…嬉しい……ありがとう…」
前髪をかき上げられ小さく額にキスを落とされる。
いつもなら破廉恥だと騒ぐ自分も、今は佐助に触って欲しいし触りたくて佐助を見つめた。

「頬…すまぬ…」
少し赤くなった佐助の頬を撫で、キスをした。
「ちょっ…だっ…だんな?!」

佐助の反応にやはり恥ずかしさが勝り、佐助にあげた包みを奪う。

「なっなんだ、そんなに驚くでないっ!ほらっ食べるぞっ」
包みを破り箱を開ける。
広がる甘さにクラリときた。

「あぁっ!それ俺にくれたんじゃないの?!」
「うっうるさいっ」

そう言って口に含んだ瞬間、シマッタと思った。
佐助にはウィスキーボンボンが良いと思い購入したことを。

口を押さえ黙ったのを不信に思ったのか、顔を覗き込まれ、次にチョコレートの箱に目をやる。
すると、困ったように笑う佐助が近づいてきて手を退かされる。

「もう…旦那はおっちょこちょいなんだから…」

唇を覆うようにキスをされ口腔に舌が進入する。
「んっ……」

逃げようにもウィスキーボンボンのせいで舌もろくに動かせない。
それをいいことに佐助は舌を絡めてはウィスキーボンボンとキスを堪能する。

「おいし…俺様幸せ」
そう言ってニヤリと意地悪く笑った佐助の首に腕を回し、顔を近づける。

「…馬鹿者め……」

口許で笑いあってまたキスをした。
広がる甘さが心地好かった。


微笑みあって広がる甘さ



>>バレンタイン間に合った!ギリギリっ!
なんかただいまスランプです。


竜弥




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -