雲一つない青空ってこういう空のこと言うんだろうな。
こんないい天気の日に授業なんて馬鹿らしいと思って、サボった英語の授業。
自分の思い人はたしか数学の授業だったよなと思い出す。きっと、眠気と闘っていることだろう。テスト前は自分が主だって大変になるだろうことは予想はつく。泣いて頼みに来る旦那はやっぱ可愛い。
そんなことを思って、この青空には合わないため息をひとつ吐き出した。

「contrail…だったっけ…」

屋上のそのまた上、と名付けたドアの真上の小さな貯水タンクの隣のコンクリートに寝そべり空を仰ぐのはいつ思っても格別。
頭に浮かぶ英単語。少しは英語のお勉強。

「コントレイル?」

自分の真下からのいきなりの返答に飛び起きる。

「っ…え」

ステンレスの梯子を登ってくるのは、栗色の髪。
ひょっこりと顔を出したのは、愛しの旦那で顔が弛む。

「またここにおったのか、サボリ魔め」
「そう言う旦那はどうなのよ…珍しいね、サボるなんて」

そう言った後、頭をグーで殴られて暫く声すらでなかった。
いきなりなんて酷すぎる。
「俺が授業をサボるわけなかろう…数学が自習になったのだ」
「それって、サボリ…すみません。もう何も言いません」

もう一度殴ってやろうかと言う程に、可愛い笑顔付きで拳を見せられ、ヘタレよろしく平謝り。
そんな俺を見て少し笑い、隣に腰かけてきた旦那はやっぱり可愛い。

「こんなにもいい天気の日に授業なんて勿体無かろう」

そう言った後、空が綺麗だなと微笑む旦那に本気で欲情したなんて口が裂けても言えない。ていうか、理性が切れないことを願うばかりだ。

「コントレイル…とは?」
間抜けな顔でもしていたのだろう少し顔を覗き込まれ聞かれる先程の英単語。
だから、近いんだってば。
「contrail…飛行機雲って意味」

幸村は空を見上げて首を傾げた。
当たり前だ、空には雲ひとつない。

「いや、飛行機雲すらないなって……」
「なんだ…紛らわしい」

少しむくれながら、旦那は再び空を仰いだ。
その横顔がやっぱり大好きで、ギュッと抱き締めてコンクリートに倒れた。
旦那は何が起こったのか分からないのだろう、俺の胸元をポヤリと見つめていた。

「すごいや…俺さ…旦那に会いたかったんだ」

そんな言葉を空に吐き出すと旦那が少し身動ぐ。
そして、予想できなかった言葉を下から投げられた。
「…奇遇だな…」

歓喜余って旦那の肩を力一杯抱き締めると物凄い痛い拳で鳩尾にパンチを食らった。
暫くコンクリートに額を付け悶えていると、旦那が小さく、あっ、と驚きの声をあげた。
涙目で旦那を見上げると、微笑んだ旦那の顔の真上に飛行機雲を見つけた。

数秒後、飛行機雲じゃなくて旦那ばかり見ていた俺は再び強烈な鉄拳を受けることになった。



蒼い空を裂く飛行機雲




>>現ぱろ佐幸
ヘタレすぎる佐助。幸村がツンすぎる件←




竜弥




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