今夜は少々寝苦しい夜だ。
幸村は額に浮かんだ汗を拭いながら、生温い風になびく帳を見つめる。

月明かりが己を包む。
ぼんやりと帳越しに月を見つめていると、影が近づいてくる。

「姫さん姫さん…ここを開けて下さいな」


幸村は影を見て一瞬目を見開いたものの、その影が発した言葉に眉をひそめた。

「……姫などおりませぬ…忍を呼びましょうか」

そう言った幸村に些か焦ったのか声の主は、帳を開けた。

「悪かった…幸…部屋にいれてよ」

月明かりとともに笑う人間に、幸村は微笑んだが、すぐに顔を少し歪ませた。

「何用にござりますか、こんな夜中に…慶次殿」

慶次と呼ばれた大柄なその男は、一歩一歩と幸村に近づく。

「誰も入ってよいとは…」

言葉を遮られたのは、慶次が指を幸村の口元に持っていき、静かにしないと折角まいたアンタの忍に殺されると言ったからだ。
そしてそのまま布団に縫い付けられた。
幸村は抵抗はしなかったものの慶次をジロリと睨む。
「そんなに怒んないでよ幸」
ヘラリと笑いギリギリと幸村の細腕を掴む。

「…なにをなされるおつもりですか」

「んー…分かってるくせに、野暮なこと聞くんだねぇ…幸」

そう言い、顎を掬い性急な接吻を与える。

「んっ……んぅっ……」

やっと離れたときには、幸村はグッタリと身体の力が抜け、ボンヤリと慶次を見上げていた。
幸村のその顔に、口角をあげる。

「あの虚勢はどこへやら……いいね、幸は……好きだよ、すごくね」

耳たぶを甘噛みし煽るように低い声で囁く。
幸村はそれを嫌がるように頭を左右に弱々しく振るが、慶次は舌でネットリと幸村の耳の穴を犯し、自分のモノと幸村のモノを一緒に擦りあげ絶頂へと誘う(いざなう)。


「あっ…ぁっアア……やっ」
「ここ…小さくて…幸は女みたい……」
「なにを…あっあっ…」

耳から頬、顎、首筋と伝い、胸の突起に歯をたてる。
「いっ…ァ…」
その瞬間に慶次の指の間から幸村の精液が飛び散った。

「ははっ…幸は痛いの好きだもんね…」
「ち…がっ…あっ…痛ッ」
腕を強く引かれたかと思うと慶次の上にまたがる態勢になった。

「自分でいれて」
「なっ!そのようなことっ…」
幸村は涙を溜めながら慶次を見つめる。
先程まで笑みをこぼしていた顔は今では恐ろしいぐらいの真剣な顔をしていた。その顔を見て、幸村はホロリと丸みを帯びた頬に涙の雫を零した。

「できないなんて言わせないよ?」
低く脳を揺さ振るその声に幸村は泣くことをやめず、手で慶次の限界まで怒張したモノを支え、自分の窪みにあてがう。

「っ…ぅっ……入りませぬ…」
しかしまだ慣らしてもいない窪みは慶次の巨根を入れるのを拒絶するように窄まったままでいる。

「大丈夫だって」

慶次の筋張った長い指が幸村の双丘を撫でたかと思うと、両手で窪みを割り開いた。
そして中に指をねじ込む。

「ひっ!?やぁああっ…ァア…」

幸村はいきなりの衝撃に慶次の胸に倒れこみ痛さに耐える。
そして、慶次の腹に出した白濁に唇を噛む。
慶次はお構いなしに両手の指を動かす。

「ほんと…身体は素直…挿れるよ」

「ぅあっ…っ―――」

ズブズブと音をたてながら押し入る慶次の熱さに幸村は音にならない声を洩らす。

「はは…すっげぇ締め付け」

その際にお構いなしに腰を打ち付け中を犯すのと、反りあがった幸村のモノが慶次の腹を擦る。
その感覚に幸村はたまらないのか絶頂へと近づく。

「気持ち良さそうな顔しちゃって…顔ぐちゃぐちゃ……やらしいねぇ」

「あ…もっ…いや…もう…離して…んぁっ…離してくだされッ…」


「もう…絶対に離さないよ…―――」


嗚呼、またあの名前。

中に吐き出される熱と慶次の言葉を聞きながら、幸村は薄れる意識の中でそう呟いた。





「ああ…起きた?気分はどうだい、姫さん」

慶次は幸村の頭を胡坐をかいた足に乗せ、栗色の髪を撫でていた。
幸村は慶次を見上げ小さく呟く。

「…慶次殿は…某を通して誰を見ておられるのですか」
一瞬慶次は笑みを引っ込め、手を止めたがすぐにまたヘラリと笑った。

「……幸しか見てないよ」



容易くめる恋ならば
足掻くことなど

(その言葉は嘘か真か)





>>78
どうもアタシは慶次を狂わせたいらしい←


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