「忍が…宴に参加するなんて…」
「聞いたことないだろ?」
いつのまにやら隣にドカリと腰かけていたヒョロリと高い男。たしか名を三好青海入道だったか…。
酒を豪快に仰ぎながら此方に笑いかけてきた。

「何もかも…我等が主のお陰さ、」

青海はそういうとチラリと大主様といらっしゃる幸村様を見るとまたすぐに酒を煽った。
自分も暫く幸村様を目で追っていると、後ろから抱きつかれてそれも出来なくなった。
心底嫌そうな顔を横に向けると、幸村様と似て非なるふざけたニンマリ顔。

「鎌ちゃん、幸に惚れちゃったんじゃないー?駄目だよ、幸はオレのだからさー」

ふざけたことばかりツラツラと並べる、べろべろによった餓鬼、名を穴山小介と言ったか…まあ餓鬼をひっぺがえす。

「鎌ちゃんって呼ぶんじゃねぇっ!」
「ぶっ…あはははははは!鎌ちゃんはよかったな」

酒を煽りながらも豪快に笑う青海を睨むも、全くと言っていいほどきいちゃいない。

「笑い事ではないっ」
「いや…ははっ…わっ悪い」
「鎌ちゃんって…オレと同じ匂いがするんだよねー」

人の隣に腰掛けながらそんなことを言われる。
どういう意味だと睨んでやるとケラケラと笑いながら、幸ちゃんの前で猫かぶってんでしょ。と言われた。
すると小介と逆隣りに座っていた青海がひょっこりと顔を小介に向けた。

「そりゃ、お前は腹が黒いっていうんだろーが」
「なにそれっ!こんなに純粋な忍なんていないよ」

馬鹿言えと青海は肩を竦めてまた旨そうに酒を仰いでいた。
なんだってこんなにも…ここは居心地が悪いのだろうか。
たかが忍風情だというに…こんな場に…。

「むーぅああ…飲んでおるかぁー鎌之助ぇえ」
「っ?!幸村さまっ」

忍失格じゃないか、全く解らなかった。信頼した主だからだろうか、それとも気が緩んでいたのだろうか。そうだとしたらそれこそ忍失格だ。

「幸村様…やはり私は」
この場に相応しくないと言おうとした言葉を、ズイッと渡された猪口によって遮られた。

「鎌之助は某の酒が飲めぬと申すか」
「え…あの?」

目が据わっている。助けを求めたわけではないが、チラリと青海を見ると心底楽しそうな目を向けられた。
「のーめーぬーのーかー」
ズイズイと顔を近づけられ咄嗟に首を大きく横に振ってしまった。すると、ニッコリと微笑まれ何故かいたたまれない気持ちになった。
酒を我が主に直々に注いで貰い、一礼して酒を煽った。

「美味いか、鎌之助」
「は…い、」

ものすごい笑顔で返されどもってしまった。
それを見て真っ赤な顔でまたケラケラと楽しそうに声を上げ笑った幸村様は、俺の耳許で小さくしかしハッキリとした口調で囁いた。

「これから、宜しく頼むぞ…鎌之助」

そう言って大主様の所に走っていった。
自分はというと、忍特有の聴覚にはキツすぎた主の声音に真っ赤だろう耳を両手で掴み踞ることしかできなかった。

それを見ていたのだろう青海の笑いを含んだ言葉に唸った。

「若には…勝てんだろ」



堕ちた野良犬
(何処までだって堕ちてやるよ、)




>>ずっと書きたかった、鎌之助と幸村の出会いとか思ったけど、そのあとみたいな話しになりました(^q^)
なにはともあれ鎌之助を出したかった。彼はこんなキャラ


竜弥





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