自分には執事という名の恋人がいる。
それも一人ではなく。二人だ。

しかも、一人は冴えるようなオレンジの髪でいつも掴み所の無い飄々とした奴。もう一人は隻眼で、いつも英語で話すし、口も悪い奴。
執事と言っても、いつもスーツを着ているわけでもなく、どうみてもそこいらにいる柄の悪い兄ちゃんみたいな正装。

こんないかにも柄が悪い二人が、執事だなんて誰が決めたかって?


誰でもない。若き真田家当主候補、真田幸村なのだ。




執事の前に人ですから





「Ha!なんだ、お前まだいたのかよ」

「あたりまえじゃない…つーか、あんたこそいつ消えるのさ」

左右からぎゃあぎゃあと煩い。
自分で決めたんだからしょうがない。しょうがないけど、こうも毎朝毎朝、こんな口論で起こされるのはまっびらごめんだ。

「う〜〜〜煩いでござるぁあああっ」

ガバリと起き上がるはずだったが、左右から重い腕を躯に絡め、左右からぎゅうぎゅうと密着されては身動きがとれない。
幸村は小さくため息をついた。

「おはよう。旦那」
「Good morning…幸村」
そんな幸村を気にするもなく、さらに密着しキスを落とす。
少し前まではこれにも破廉恥だなんだの叫んでいたが、もうかれこれ5年だ。
嫌でも慣れると幸村は苦笑せざるおえない。

「…なんで人のベッドに毎日毎日入ってくるのだ?暑苦しい。」

「えー今冬じゃない旦那ったらー」
幸村の頭にぐりぐりと頬を擦り付ける。
「もう春だ。嘘をつくな、どんな暑い熱帯夜でもクーラーガンガンにつけて入ってくるくせに。お前等の頭は常に冬なのだな。」
幸村は佐助を押し退けながら言う。すると後ろから幸村の細腰に手を絡める男が…

「Ha…俺の頭の中はいつでも幸村だぜー…そこの頭に蛆わいた猿とは違ってなー」
「…なーにを言うのかと思えば……俺の幸村に抱きつかないでくれる?」

幸村はまだ口論を続ける二人の間から擦り抜けた。
そうするとすぐに二人も動きだし、佐助は朝ご飯の支度をしにキッチンに。
政宗は幸村について歩くのみだが。



「髪結ってやるよ」
シャツに手を通している幸村をニヤニヤと見つめるのは隻眼の男、政宗だ。

「やだ…政宗は三つ編みとかにするから。佐助にやってもらう」
何かを企んでいる顔だなと幸村は心底嫌な顔をつくる。

「A-n?猿にだと?」
幸村の答えに不満を抑えきれないとばかりに顔をしかめ、幸村に近づく。

「いつも佐助でしょ…って、ちょっと、政宗…近い…んっ」
口角をあげたまま、幸村の唇に自分のソレをくっつけ、舌で舐める。
「んっ…んん…」
政宗は幸村の柔らかい髪に指を絡めながら、唇を開き覗く紅い舌に舌を絡めようとする。

「キースー魔ぁぁあああっ!」

食事の支度を終えた佐助は政宗の後頭部にお玉をぶち当てた。
お玉は景気の良い音をたて政宗の後頭部に直撃した。

「いっ!!てめっ!猿なにしやがる?!舌噛んだらどーしてくれんだばかやろう!!」
「なにしやがるはこっちの台詞だばかやろう!!舌噛んで死にやがれ!」

またしてもお互いに噛み付かんばかりに睨み合いを始めた執事二人に幸村は間に割って入る。
「もーいーから!学校に遅れるっ!」

「だって、コイツが……んっ…」

佐助が幸村に顔を近づけると、幸村が佐助の唇に触れるだけのキスをおくった。
「What?!」
「これでいいのだろう?」
幸村は頬を真っ赤に染める。
「……だだだんなー!」
「まて…某はご飯を食べて学校に行かなきゃならないのだ…佐助はご飯…政宗もだ」
抱きついてこようとする佐助を幸村は片手で制止し、これは命令だと紅い瞳を二人に向ける。

「はい。分かりましたよっとご主人様」
「Yes、ご主人様」

そう二人は口元に笑みを作ると、幸村の前に跪き、佐助は右手の甲に、政宗は左手の甲に唇を落とす。




「じゃあ…危ないから前見て運転するのだぞ佐助…」幸村は支度をしながら運転している佐助に言う。

「だーいじょうぶだってー…隣の奴が喧嘩売ってこなかったらね」
「A-n?なんだとぉ?!」「言ってるそばから!ほら!佐助前っ!」
幸村は佐助と政宗の間に首を突っ込み叫ぶ。

車はスピードを出していたにもかかわらず、大した音もせず、静かに幸村の学校の門の前に止まった。

「はーい、到っ着!」
「あっ危ないではないかっ!」
「人でもひいてムショにでもはいりゃーいーのに」
「俺様がそんなヘマするわけないじゃーん」
ケラケラと笑う佐助と、とんでもないことを言う政宗に一喝する。
「馬鹿者めが!」

幸村は叫び、車を降りる。
そんな幸村に手を振る佐助と政宗。
暫らく振り向かずに歩いていた幸村だったが、振り返り手を振り返した。

「あーもう、ウチのご主人様はなんであんなに可愛いのかねぇ」
佐助は車を発進させながら呟く。
「ったりめーじゃねぇか…幸村だからな」
「それ、答えになってねーし。さぁて、帰ったら掃除が待ってるよー」
「さぁて、一寝入りすっか」
政宗は椅子を後ろに下げる。佐助はそれを横目でとらえる。
「てめぇ殺すぞ…なんのための執事?」
「A-ha-…んだよ、うっせえな…癒しだよ癒し」

「死んだら?」
「うっせーてめぇが死ね…Oh!スタンドよってけ」
政宗は椅子を直し、窓の外を見ながら言う。

「えー…月末は何かと物入りだってー…」
「お前はどこぞの主婦か…」
鼻で笑いながら政宗は言う。
その言葉に、そんなもんじゃなーい?執事って。
と、佐助は笑う。

「だから…今日は水曜だ」
「水曜…あぁ!そういうことね!さすが、伊達ちゃん」
卵、卵と佐助は歌いながらスタンドに入った。




>>中途半端だこんにゃろ。
最後の佐助と政宗のやりとりが書きたかった。
これは、大好きなpoko様に捧げたいと思い書いた佐幸政(けしてゆきまさでは無い)佐→幸←政です。
そして、最後のやりとりは、poko様の絵を見てちょっと拝借をば←殴
あの…アタシにですか!あの素晴らしい絵は!!(ごろんごろん)
お返しと言っては本当に…なんなんですが…。。。
捧げちゃうとか言ってみる…。
自分の中で…。

てか、いつも拍手してすみません。本当…。

なぜに執事かというと…?
なぜでしょうか。
また書きます。幸の父と兄は貿易商のトップとか…1年に1回は幸に会いにくるとか…。3人の出会いとか。
中途半端ですみません。
某執事パロではございません(おい


竜弥



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