真っ白な雪を厚めのブーツで踏みしめる。
白い雪の所為か、もしくは己に染み付く血の臭いの所為か。
頭が痛い。

幸村はもう一度眼下の雪を見下ろし今度は捻るように踏みつけた。

この白さが忌々しい。
なにものにも染まる白。滑稽だと思った。
どうせ染まるなら、最初から紅がいい。

まだ血の臭いがまとわりつく。

それに、家の前まで雪だらけ。
しかも、紅い雪なんて。
今日一日で見飽きた。

亜麻色の髪をなびかせながら、グレーのマフラーで口元を覆う幸村はマンションの自分の部屋の玄関前に凭れているオレンジを見下ろした。

人間…。死んでるのか。
ピクリとも動かない。
腕から滴る血が白を染めていた。


幸村は暫らくオレンジの頭を見ていたが、すぐに青年の肩を揺する。


「どうしたんですか、生憎あなたの家はここではございませぬ」

声色を柔らかく丁寧に言葉を発した。

「ん……」

オレンジが身動ぎゆっくりとあげられた瞳は碧色に光っていた。


「アンタ、殺し屋ってやつでしょ」

そしていきなりそう告げられた。
幸村は言葉を理解する前に、己のリボルバー(ブラックホーク)の銃口を青年に向けた。

「お主…何者だ」

小さく囁くと青年は顔色一つ変えず、むしろどこか楽しそうに口笛を吹き、両の手をあげた。

「そりゃ俺のほうが聞きたいんだけどさ…」

「茶化すな…目の前のモノが見えないわけではないだろう」

幸村は冷たく言い放ち、ロックを外す。

「そうねぇ…玩具じゃなさそうだよね、ソレ」

ニッコリと微笑んだかと思うと、今度は試すような顔を向けた。

「でもさ、そんな鉛の塊じゃ俺を殺せやしないよ…」
銃口の縁を人差し指でなぞり幸村を見上げる。
何を考えているのか理解出来ず幸村は眉をひそめた。
「…どういうことだ」

「…ん?そんな感じがしただけ」

返された言葉と屈託の無い笑みに幸村は、おかしな奴。とだけ返した。
青年は未だ笑みを向けながら、そう?と首を傾げた。
「俺…何ていうか記憶が無いみたい」
青年は腕の傷を自分の手で直接止血しながら淡々と言う。

「は」
「だからさ…俺をココに置いてくれない?」
「なにを」
突拍子もない提案に忘れていた頭痛が再発する。

「じゃないと、ここで騒いじゃうよ」
「……殺されたいのか」
「まさか…でもさ、それ、リボルバーじゃん…ブラックホークでしょ?サイレンサー着けても音消えないし…」

殺す気なんか端から無かったんでしょ。そう続けられた言葉に、幸村は呆れたようにため息を吐き出し、ロックをかけブラックホークを直した。







幸村は心地好い揺さぶりで目を開けた。
微睡みの中で視界に入れたのはさっきの碧の瞳だった。

「旦那…んなところで寝ると風邪ひくよ」

先程より随分と大人びたオレンジの髪の男が、甘ったるい程の笑顔を向けてくる。
幸村はそこでやっと、さっきまでの事は夢だと悟った。

「……ん…寝てない…」

書類に突っ伏していたのだろう、床にばら蒔かれた書類に少しうんざりした。
顔に出ていたのだろうか、後で拾います。と言われ両腕を広げられる。
きっとベッドにでも運ばれるのだろう。
幸村は椅子に腰を預け、背丈も成長したオレンジを下から見つめる。

「…だから…寝てない…」
「(寝てないって…)ほら、ベッド運びますよ」

まだ仕事があると言おうとした瞬間に肩に担がれ些か驚く。

「あんた最近根詰めすぎ…お休みします」
「なにを…ん?お前だって…休んでおるのか?佐助…」
佐助から香る、シャンプーとタバコと少量の硝煙の香り。
そう言えばらこの右腕を一昨日から見ていないことを思い出した。

「ん…?休んでますよ。旦那のお陰で…」

「茶化すな…シャワーに入っても硝煙の匂いが残るとは…仕事…根詰めすぎだ」
「はは…流石は旦那だ」

佐助は心底嬉しそうな声を出し、次には、肩から降ろされ横抱きの形になり耳元で低く囁かれた。

「一昨日からアンタが足りないんだけど…」

そう囁かれた後耳朶を食まれ、くちゅりと音をたてながら耳の穴を犯される。
背が戦慄き幸村は小さく震え溜め息を漏らす。

「っ…、さす…っ…」

靴を脱がされベッドに転がされる。
すぐに抱き締められ動くことも出来ない。

「ね、すごい欲しいんだけど」

そう吐息と共に吐き出され、幸村は躯が疼く。
求めてくる唇を食み、幸村は妖艶に笑う。

「懐かしい夢を見た…」
「ん?」

佐助は幸村の首筋に唇を押しあて聞き返す。
幸村はオレンジの髪を撫でながら佐助の耳元で囁いた。

「お前に初めて会った時の夢」
「え」

その言葉を聞き佐助は弾かれたように幸村から離れ、ばつが悪そうに眉をしかめた。
そんな佐助を見て幸村はニヤリと笑った。

「大丈夫だお前が裏切る前」
「ちょっと!それは言わない約束でしょ…傷付く…」
「馬鹿言え、傷付いたのは俺だ」

「……ん…」

そう言って俯いてしまった佐助に幸村は少し笑った。
そして、次には佐助の前に手を差し出した。

佐助はそれを愛しげに掌にのせ甲にキスを落とし、舌を這わす。
長い舌で厭らしく幸村の白く細い指を形どる様に舐め、上目遣いに幸村を見つめる。
佐助の情欲剥き出しのような、瞳にゾクリと背に這うものを感じながら言葉を紡ぐ。

「お前は俺のなんだ?」

「俺は旦那の……ボスの犬だよ」

舐めていた指に自分の指を絡め、ベッドに縫い付け妖艶な笑みを浮かべる唇に息がかかる距離で甘く囁いた。

「上出来…だが…こっちの躾は…なってないな…」
「…犬ですから」

困ったように眉をひそめた幸村の唇に噛み付くようにキスをした。







「は…ぁう…さす…ンぁっ」

生理的な涙を携え、佐助の上に跨がる幸村を下から見上げ、佐助は唇を舐め厭らしく問う。

「旦那も…えろくなったよね…腰なんか自分で振っちゃってさ」

逞しい佐助の鍛えられた腹部に両腕を付き後孔に埋められた佐助自身を、肉壁に自分で擦り付ける様に、佐助自身はムクムクと質量を増す。
そのたびに蕩ける様な顔を向け喘ぐ幸村に佐助は愛しいものにでも触れるが如く、優しく頬を撫でる。

「旦那…すごい綺麗…」

涙と涎できっと酷い顔をしているのだろうとは思うが、佐助の言葉にやはり嬉しそうに微笑む。

「あー、うん……その顔は反則なんだって」

「んぁっ…ひ…」

いきなり上半身を起こしたことにより更に深く佐助を埋め込むことになり、小さく喉を鳴らしたが、次の瞬間に天井が視界に入った。
「な…に」

涙で歪む視界に天井ではなく佐助が映り、ホッとする。

「もっと…やらしく鳴いて」

甘く痺れる様な囁きが躯全体を浸透する前に、両の太股を抱えあげられ佐助の肩に担がれ中をめちゃくちゃに突かれた。

いきなりの衝撃に喉を反らせ声を吐き出そうとしたが、喉からは音にならない空気だけが漏れ、見開いた瞳に映るのはチカチカとした赤や白のみで、脳内がスパークした。

「ひっン…は…ひィあっ」
「すっげ…締め付け…」

やっと絞り出した声は意味を無さないものばかりで、そんな幸村に佐助は口端を上げ突き上げる。
後孔からは潤滑剤が泡立ち、くちゅりくちゅりと厭らしい音を響かせる。

「ゃっ…おか…ひく…なゆぅっ…ぁ…うぁ」
「かわい…」

酸素を求めるように開閉する口から垂れる涎を啜りながら、喘ぐ唇を食み、舌を絡めとる。
幸村は朦朧とする頭で、酔ったように狂ったように佐助を求めた。
いつもならあり得ないぐらいに腰を自分から打ち付け、内で蠢く塊を感じる。

「ゆき…ゆきむらっ…」

「あっ…ンぁあ……っ」

背と喉を反らせながら絶頂を越え、内に蠢く佐助をキチュリと締め付けた。

「うっあ…やば…」
「ぁ…んー…」

締め付けられたことによって大量に胎内に吐き出された精液に幸村は躯を震わせた。

「あっ…ちょっ……ばか……んんっ…まだ出てる…」
「ごめん…久しぶりだから…さ」

佐助はニンマリと笑い幸村の腹部を触る。
幸村は余韻がまだ残っていて少しの刺激で躯を震わせる。
そんな幸村を上から見つめる佐助はギラギラとした瞳を向ける。
次の瞬間幸村の細く白い首に手を伸ばしゆっくりと締め上げる。

「ねぇ…ボス…殺しちゃいたいぐらい…好きなんだけど…」
「っ…ば…かも…の」
「すっげいい顔…」

幸村の苦しむ顔を見つめ、質量を増す佐助の一物に幸村は白濁を吐き出す。
それに喉の奥でくつりと笑い締め上げていた手を離した。

ヒューヒューと苦しそうに酸素を求め、咳き込む幸村の唇に唇を寄せる。
熱く濃厚なキスを唇を舐めてから止め唇の先で甘く囁く。

「…ボス…俺はあなたと一生共に…」

その甘い囁きに幸村は再度、佐助の首に腕を絡めた。




引き金は当に引かれた






>>三万打記念、「殺し屋」パロディです。
またまた大変遅くなった上に…なんですかこのぐだぐだorz
すみません本当に。なんか温すぎるェロとか痛いのとかあってすみません。
更に、時系列が…
過去と現在…。
過去にいろいろあったのですが、今回は書きませんでした。機会があればまた。
ていうか、皆様が読みたいとか思ってくださるなら…!←

竜弥は銃とか全くわかりませんよ(^-^)/笑
ブラックホークにはレッドホークもあるらしい(^-^)つか殺し屋があまりに出てない!
すみません…素敵なリクエスト下さったのにっ。



竜弥




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