春一番とでも云うのだろうか、桜を見たいと言った主と並んで歩いていた忍は目をつぶらざるおえない程の突風の到来を感じ、すぐに横にいた主を自分の胸のなかに引き寄せた。

「っ…さすけ?!」
腕の中の幸村はやはりとでも言おうか、顔を赤らめ騒いだが、すぐに耳を震わせるほどの突風に気が付き佐助に抱きついた。


「だんな…大丈夫?」
少し下を見るとしっかりとしがみ付く幸村が見えたのが可愛く、佐助はくつりと喉の奥で笑った。
「は…破廉恥……」
「そりゃないでしょー」
胸をズィッと押してくる幸村に佐助は苦笑を抑えられない。

「あれ?旦那……」

光をうけた亜麻色の柔らかい髪から、振り向いた拍子に滑り落ちた薄紅色を佐助は手のひらで掬った。

「おお…桜ではないか…」
顔を輝かせ辺りをキョロキョロと探索する幸村に苦笑して、佐助はもう一度桜を見つめた。
すると薄紅色の花弁は風に漂い佐助の手のひらを擦り抜けていった。

「佐助…さすけ…あそこだ」

手のひらから顔を上げると、ふんわりと笑う幸村の顔が目の前にあり、些か驚いたが顔には出さず笑った。
少し丘になった所に満開の桜。
木自体は若いのだろう、しかし薄紅が堂々とのさばっていた。

そこに駆け寄る主の後ろ姿を追い、下から見上げた。

「綺麗だね…」
霞みがかった薄紅、ふんわりと香る桜の匂いに目を閉じる。

隣にあった幸村の気配が動いたので、瞳を開け幸村を探す。


「えっ!…折っちゃったの?」
「莫迦者」

自分の主に限ってそんなことは無いとは思ったが、幸村の手に握られている小さな桜の枝に少し疑ってみた。
物凄く怒鳴られたけれど。

「そこいらの童が折ったのかねぇ」
そう佐助が言うと、幸村は眉を顰め可哀相に…と呟いた。

「…そうだね……」

まだ折られたばかりなのだろうか、めいいっぱいに花を広げる桜が悲しそうにみえた。

佐助は幸村から枝を受け取り、満開の桜を一房だけ取り幸村の亜麻色の髪に一房桜をさした。

「うん…可愛い」
笑みを浮かべてそう言うと、目の前の幸村は顔を真っ赤にして睨んできた。

そんな顔で睨んでも可愛いだけだと、佐助は幸村の桜色の頬を撫で、そこに接吻を送った。


幸村に残りの桜を渡し、頭の桜を外そうとする手を掴んだ。

「さぁて…帰って挿し木できるか聞いてみようね」

両手が塞がった幸村は顔を髪の毛の上から主張する桜のように薄紅に染め、佐助の手を握り返すことで答えた。


盗人
(どうか咲き誇って下さい)





>>アップし損ねた桜話。
もう葉桜の季節ですが…なにか←

桜はいいですね。大好きです。
ソメイヨシノだったら、まだ蕾は炎紅色で花が開いたら白っぽくなるんですよね…。
それを書きたかったんですが…薄紅色に…。
ま、えっか←おい

なにはともあれ桜が好きです(=´∀`=)


竜弥



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