「旦那なんか嫌いだよ」
唐突で何を言われたか理解ができなかった。
先程までの甘い雰囲気を打ち壊す佐助の言葉に、幸村はズキズキする胸を抑えた。

しかし、どうして後ろから抱き締められながらそんなことを言われなければならないのだと、幸村は自分の腰に絡まる佐助の腕をこれでもかとつねることで現した。

「いたいいたいっ…」
纏っていた空気がガラリと変わった幸村に、些か焦りながらも佐助は笑いを抑えられない。

「…腕を離せ」
「ちょ、旦那…今日は何の日ー?」

腕からなんとか離れようとする幸村を、離すまいと佐助はギュウギュウ抱き締める。

「知らぬ!はなせっ…」
本気で自分を殴ってきそうなほど騒ぎだした幸村に焦り、幸村の耳元で囁いた。
「ごめん…旦那……今日は四月馬鹿…」

すまなさそうな、しかし嬉しそうに言う佐助に幸村は肘鉄砲を食らわせた。
そのまま後ろに胸を抑え、倒れた佐助は痛みに涙を滲ませながらも幸村を見た。
「げほっ……だ…だんな?」
「俺は……冗談でも…そのような事は言ってほしくはない…」
目尻に涙を携えこちらを睨む幸村に佐助は胸が締め付けられるのと同時に、嬉しさが込み上げてくる。

「だんな……」
幸村を抱き締めようと腕をのばしたのだが、それはピタリと止まった。

幸村の目が本気で佐助を射ぬいていたからだ。
(や…やばい)

「この戯けがぁああっ!」
幸村の右ストレートが見事に入ったのは言うまでもない。


四月馬鹿と愚か者
(別れの危機?!)



>>四月馬鹿で短いお話。
幸村に冗談は通じないと思う。

竜弥



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