「何の御用でしょうか」


真田忍隊の伝達係兼影武者の海野六郎は顔に微笑を携え、目の前の眼帯の男と強面の男に尋ねる。


「Oh?……いつものうるせえ猿じゃねーのか?」

奥州の独眼竜と称される伊達政宗とその右目と称される片倉小十郎は、上田城の門の前で足止めを食らう。
政宗は蒼い着流しという軽装な格好で顔を顰め六郎を見やる。

「長は只今、任務にて不在でございます。して、この上田城になにか御用でございますか」

笑みを携えたままの六郎は言う。

「食えねえ奴だな…」

「よく言われます」

政宗は頭を掻きながら舌打ちをした。

「おい…真田幸村はいるか」

小十郎の言葉に六郎は一瞬片眉を上げたが、すぐにニコリと微笑む。

「若様は貴方がたに会うことができません」

「海野ーーーー!!!!!!」

後ろから聞こえる叫び声に六郎は振り向き、溜息を付く。

「若様…出てこられてはいけないと申しましたでしょう」
「いやしかし…暇だったのだ……おお!政宗殿に片倉殿どうなされたのですか?」

六郎の後ろから幸村がヒョッコリと顔を出す。
そんな幸村を隠すかのように六郎は幸村を隠すように立ち直す。


「Hum……いんじゃねーかよ…忍さんよおー」

「私は…会うことはできませんと申したまでです。いらっしゃらないとは申しておりませんが?」

六郎は政宗の鋭い単眼にも微動だにせず、笑みを崩さない。
そんな六郎が気に食わないのか、食って掛かろうと前にでる。
しかし、政宗を抑えるように小十郎がズイと六郎の前にでた。

「Oh!!止めるな小十郎」

「止めはしません。しかし、ここは家臣同士が宜しいかと」


小十郎は六郎を睨み付けながら静かに言った。
その言葉に政宗はニンマリと唇を三日月形(みかづきなり)にし、六郎の後ろで何が何やら分からないと首を傾げていた幸村の腕を引っ張った。

「なっ」

幸村の腕を掴もうとした六郎だったがそれができなかったのは、小十郎の覇龍が振り下ろされたからだ。
六郎は袴姿で刀は差していなかったが、裾に隠し持っていた苦無で止めた。

「止めやがったか…」

「止めないと…痛いでしょうに」

小十郎の言葉に、笑みを浮かべたまま答える。

「おかしいな…お前とは同じ匂いがすると思ったんだが」
「それはそれは……光栄なことで」

しばらく刀と苦無越しに睨み合っていた二人だったが、小十郎が刀を鞘に納めた。

「すまないな…門の前だった」
「いいえ」

苦無を直し、小十郎の殺気が消えたことを確認し幸村を探す。
六郎の目に飛び込んだのは、幸村に肩をまわす独眼竜。

「政宗様!そのようなことをこんなところではおやめくだされ!」

小十郎は政宗に近づく。


六郎を包む空気が変わったことに気が付いた幸村は声を張り上げた。

「あっ…不味いでござる!」
政宗から離れようとするが、政宗がそれを許さない。

「逃げんなよ真田幸村…」
「いえ!貴殿から逃げるのではなく!あの…」


政宗は異様に焦る幸村が見つめる人間を見る。

「Oh……なんか殺気がすげーなぁ……つーか、人変わってねえか?」

「おい…てめぇ……若様からその穢い手を離せ」

六郎の豹変振りに政宗は楽しそうに口笛を吹く。
また、小十郎が前に出ようとしたがすぐに、政宗が止めた。

「小十郎の勘は当たってたなあ…こいつぁーおもしれえ」

政宗が刀に手を触れようとした瞬間、

「ぎゃあああああっ!!!」

「あん…?」

後ろから幸村の叫び声が聞こえたと思い、後ろを振り向く。


「ちょっと!旦那!城の前で五月蝿いよ」

「何を申す!!離さぬかああああ!」

「Shit!上かっ!」


三人が一斉に上を見上げれば、幸村を脇に抱え烏で空を飛ぶ猿飛佐助がいた。

「あんたら、人様の城の前で何してくれちゃってんの…海野さんも…そんな奴等ほっといていいからさ…顔恐いことになってるよ?」

それだけ言うと、佐助は上田城の中に入っていってしまった。

「猿飛!若様が吃驚なさるではないか!もう少し丁重に扱え!」


六郎はそう叫び、政宗と小十郎の前から消えた。


「Shit!あんの…忍共!俺等のこと虚仮にしやがって!」

「政宗様、今日は一旦引きましょうぞ」

「goddamn!!帰るぞ!小十郎っ」

政宗と小十郎は上田城を後にした。



×××××××××××××




「海野さん、まーた取り乱したの?」

佐助は忍装束を脱ぎ捨て、袴に着替え始める。
今言った言葉は、庭に出て池を覗いている幸村と、その隣にいる六郎に投げかけたものだった。

しかし幸村は、答えようとした六郎の袴の裾を掴み、幸村同様にしゃがませた。


そんな幸村に溜息を付くと、佐助は音も無く幸村の隣に降り立つ。

「ちょっと…旦那、まだ怒ってんの?」
「……怒ってなどおらぬ。なあ、海野よ」

いきなり振られた言葉にいつもの笑顔で六郎は返した。

それを見て面白くないのは佐助で、幸村に袋を差し出した。


「いきなり飛んでごめんね、これお土産。旦那の好きな団子だよ」

頬に引っ付けられた袋をガシリと掴むと、さっきの怒気はどこへやら。
幸村はスックと立ち上がり、縁側に座る。


「なにをしておる!二人とも!団子を食うぞ!!」

「はいはいっと、茶の準備でもしてきますよ」

海野さんはどうだい?と、思っても無い言葉を言う佐助に六郎はくつりと喉の奥で笑う。


「まだまだ、ですね。猿飛。……私は今日は遠慮しますよ」

そう言って、あのつかめない笑みを携え佐助の前から消えた。


「ほんっと……一つ違いとは思えねえ……食えない奴」


今日は……だってさ。
佐助はそう忌々しく呟いた。


「むおおおおおっ!まっこと素晴らしき団子なり!」

「ちょっと旦那!!なにもう食べてんのさっ!」


あんたの心配してるって言うのにさ!と、声には出さないがそう叫び、佐助は盛大な溜息を付いた。





食えたもんじゃない
(なんなら食い殺してやるまでさ)





>>海野さんんんんんn。
食えない男ナンバー1。←え
ギャグですねこれ。
幸村総受け気味。
佐幸←海野(+政宗)?

竜弥



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