昼休みに珍しい小さな来訪者がきた。
幸村は初めは驚いた顔をしていたが、直ぐにその来訪者を教室の自分の席に座らせた。

「どうなされたのですか?…珍しい」

幸村はくすりと小さく笑うと、ボサボサになっているツインテールの銀色の髪に触れる。

「いつき殿?」

いつもなら顔を真っ赤にさせ、子供扱いはするなと騒ぐいつきだが、今は机の木目でも数えるかのように俯いている。

幸村は、今から騒がしい奴等が来ますが、追い払いましょうか…それとも、ご一緒しますか?と、自分の大きな弁当を見せる。
いつきは、幸村の笑顔に頬を少しだけ弛ませると、弁当を指差した。

「この前見たときから思ってただが……おめえさん、食べ過ぎだべ」

「そうでありまするか?…佐助が作ってくれる弁当はおいしいのですよ」

幸村はいつきの言葉に首を傾げながら笑う。

「そうじゃなくて…」

「あ!髪の毛…やりましょうか?」

幸村はいつきのボサボサの髪の毛を指差した。
きっと何かがあったのだろうがそこは何も言わなかった。

「……いい…オラ自分でやるだ」
「そうですか?」
「だってその髪はあの飄々した奴がやったのだろう?(幸村は不器用だっただ)」

いつきは髪を結い直しながら言う。

「飄々……ああ、はい。佐助が…」
「幸村ぁああっ!ちょっ!政宗退けよ!」
「Hey!テメェこそ退きな猿!」


廊下からそんな叫び声がし、幸村の言葉は遮られた。
次の瞬間、1のAのドアが物凄い音を立てながら開く。

「「迎えにきたよ(ぜ)っ!」」

「……もう少し静かに迎えにきてくれぬか…皆いつも驚く」

幸村は呆れたように今し方、教室に入ってきた男2人を見る。

「だってコイツが俺と幸村の仲を引き裂こうと…」

顔に緑のペイント、柿色の髪はバンドで後ろに流し、うまい具合に着くずした形(なり)をしているのは猿飛佐助だ。
泣き真似をする佐助の隣には、心底嫌そうな顔をした、長い前髪で右目を隠した男、伊達政宗が言う。

「俺はテメェのgirlfriendが幸村だなんて許してねぇ!」
「なーんでお前に了承得なきゃあなんねーんだよ!」

「ああもう…うるさい!行きましょうか、いつき殿」

幸村は髪を結い終わったいつきの手を引く。


「ちょっ…酷い」
「幸村っ!Shit!お前がうるせーからだぞ!」

また騒ぎだした二人に幸村は教室の外から声をかける。
「そこに置いてあるお弁当持ってきてくだされ」

「「はいっ(Yes)!」」

また弁当の取り合いになったのは言うまでもない。

いつきは幸村を見上げ言う。

「お前…なかなか魔性の女なんだな」

「ましょうの女…でございますか?」

「いや…(コイツは天然だべ)」



××××××


「で、今日は珍しいお客さんがいるもんだな」

左目を包帯で隠した男、長曾我部元親はパンに噛りつきながらいつきを見る。

「はひかははひことへもはるなら、このゆひむらがほひひひまふひょ。ひふきほの(何か悩み事でもあるのなら、この幸村がお聞きしますよ。いつき殿)」

幸村はもぐもぐと口一杯に頬張りながら言う。

「何言ってんのかわかんないって」
口のまわりを佐助が拭いてやる。

「Hey!いつき…おめーまた蘭丸と喧嘩でもしたんだろう」

政宗の言葉にいつきの箸が止まる。

「あんな奴知らないべ」

いつきはそれだけ言うと、また自作の弁当を食べ始めた。

幸村、佐助、政宗、元親は顔を見合わせる。

幸村は手を合わせ、ごちそうさまと言うと、隣で弁当を食べるいつきを見つめる。

「なんだべ…」

「いや…今日はどうして喧嘩なされたのかと…」

度々いつきは同じクラスで幼なじみの蘭丸と喧嘩をしては、中等部から幸村達がいる高等部にくるのだ。

「……別に…蘭丸が失礼なことばっか言うからだべ」

いつきは幸村の頭から身体までをジロリとみる。

いつきの視線に幸村は首を傾げる。


「………だか?」

いつきの声が小さく4人はいつきに近寄る。

「だから!!胸を大きくするにはどうしたらいいだか!教えてけろっ!幸村!」
「なっ?!」
「Oh!?」
「はぁ?!」

佐助、政宗、元親は一斉に幸村の胸に視線をおくる。
そして、たしかにデカイよな。と頷く。


「ちょっ…いきなり…何を言うかと思えば…」

「蘭丸が、幸村みたいに胸がデカくてスタイル良かったらよかったのになー!とか、言うから……殴りあいになっただ」

「な…殴り合いって」

だからあんなに髪の毛がボサボサだったのかと幸村は苦笑する。


「おい、佐助…なんで幸村あんな胸デケーんだ?…会ったときから思ってたけどよお……なんつーか、純で聞けなかったんだよな…」
元親は佐助の横で耳打ちをする。

「ちょっと、幸村を変な目で見ないでよ………まぁ、昔からデカイけどー…俺様が揉んで…ぶっ!」

幸村の鉄拳が隣から佐助の頬にヒットした。

「はっ…破廉恥佐助!」

幸村は顔を真っ赤に染めて、佐助を睨む。

「すみません…いてぇ…」
「Ha!ばーか」

佐助は頬を撫で幸村に謝る。
それを見て政宗が間髪入れずに茶化す。


「幸村っ!胸はどうして大きくなっただ?!」

「ど…どうしてって……そうだ!かっかすが殿も大きいですよ…」

幸村はいつきの迫力におされ焦る。
幸村からでた2年のかすがの名前がでたが、いつきは
「あの姉ちゃんには…なんか恐くて聞けねぇだ」
と、首を振った。
「…はぁ…」

幸村は苦笑し考え込むがすぐに曖昧な答えを出す。

「むぅ…別に……それと言って…することはないかと」

「そうだか…」

「ああ!おいしいご飯を一杯食べて、よく寝て、いつも笑ってたらいいんですよ、いつき殿。私はそうしてます」

幸村はそう言って、いつものようにいつきの頭を撫でる。

「それと…あそこにいる子とも…仲良くしたら…いいと思われますが」

幸村が指差した先には、屋上のドアの隙間からのぞく、額と短い尻尾髪。


「らっ…蘭丸…」

いつきの声にビクリと引っ込んだが、すぐに、近くにいた政宗に首根っこを掴まれ、いつきの前に落とされた。

前髪を可愛らしい髪ゴムで結び、額をだしている中等部1年でいつきと同じクラスで幼なじみの森蘭丸だった。

蘭丸はジトリと政宗を睨んだが、俯く。

「……なにしにきただか?」

いつきは頬を膨らませ、外方を向く。


「……悪かったよ…」

蘭丸の言葉に驚いたように視線を戻す。

「…オラも…悪かっただ…ごめんなさい」

いつきの言葉に蘭丸は小さく頷き、いつきに手を差し出した。

「次…理科だぞ……明智の授業だけど……帰ろう?」
蘭丸が明智と言って嫌な顔をしたが、それも照れ隠しなのか顔を真っ赤にしている。
いつきはそんな蘭丸にふわりと笑うと手を握った。


「幸村…ありがとうだべ!また、色々教えてけれ」

幸村達は小さな可愛らしい恋人達に手を振った。



「よくもまぁ…ガキの相手をする気になれるよな…幸は」

元親が幸村の肩を抱きながらいう。

「何を申されますか…元親殿も沢山の方々から慕われているではないですか……」

「ちょっと!幸村に汚い手で触んないでよ!!あーあ…俺達もあんな風に邪魔者無しでラブラブしたいなぁ」

元親を幸村から引き剥がし、佐助は幸村の細腰に抱きつく。

「っ!!?はっはれんち!!」

「いたー!!」


佐助は顔を真っ赤にした幸村にまたしても殴られ吹っ飛ぶ。


「つ…次はっ……お…お館様の授業故!帰る!」

そう叫び走っていった。



「Ha!俺等がいるかぎり二人っきりにはさせねーよ」
「……………いーよ、家帰ってイチャイチャするもん」

佐助はそう言うと頭をかきながら立ち上がる。

「授業受けんのか…?」

「いんや…お前等といる気がしないだけー」


佐助はひらひらと後ろ手に手を振り、屋上のドアを開けた。


(頬っぺたイテェな…)


佐助は後ろ手にドアを閉めため息をつく。

「…授業でぬのか」

「わっ!?…幸村……授業始まるよ?」

佐助はドアの横に膝を抱えて座っている幸村に言う。

「……ん」

「へ?」


差し出された手に佐助は首を傾げる。

「授業にでぬと…その……ラブラブとやら…せぬぞ」
「……(かっ……可愛い)」
佐助は満面の笑みで幸村の手を掴み、立ち上がらせ小さな身体を抱き締める。


「…幸……キスしたい」

「なっ………はれんち…」

授業にでるなら…と幸村が佐助を見上げると、すぐに佐助の唇が顔中に降ってくる。

「…くすぐったい…さすけ…んっ」

喋る幸村の柔らかい唇に自分のソレをひっつける。
そのまま啄むような口付けを続ける。

「ふっ……ん……佐助っ!」

「ぶっ」

幸村は佐助の唇を手で押す。

佐助はやりすぎたかと、眉を潜め、幸村を覗き込む。

「(耳まで真っ赤…)」

「も……佐助!行くぞ!」

幸村は佐助に手を伸ばす。

「俺…今から自習なんだけど?」

佐助はニッコリと幸村の手を掴む。
それを確認して、幸村と佐助は階段を降りる。

「………ダメ…お館様の授業だから!」

「(やっぱり…)んじゃ…ちゃんと受けますか…」


やっぱり、自習じゃなかったじゃない。と幸村が佐助をチロリと見ると、佐助は悪怯れた様子なく笑う。

「その代わり…家に帰ってから……ね?」

幸村は顔を赤くし、佐助の手を離し走りだす。

「ゆっゆき?!」

スカートをひらめかせながら走る幸村の後ろ姿に声をかけると、幸村が走りながら佐助を見て叫ぶ。

「ちゃんと授業受けなきゃ…知らぬ!」

残された佐助は暫らく幸村の後ろ姿を見つめていたが、今自分がいるのが、2年D組の自分の教室の前だと気づくと苦笑した。

「(送ってもらっちゃったじゃん…)俺の彼女は男前ー」





可愛いあのは男前
(でも優しい女の子!)





>>長っ!
ぐだぐだですみません。
書きたいことがまとまりませんでした。
女の子幸村の学園ものです。

いつきとからませたかった…。
学園はリベンジします。



竜弥



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