2009/10/08 19:07

「…余裕なんだな」

見下ろす先にはどこか幼さが残る男。でも酷くそそる眼をする。何か、えもいわれぬ背徳感が燻った。

カツカツとブーツを鳴らしながら近づきブーツの底で蹴り飛ばす。手錠を後ろ手にかけているので541番は、さながら芋虫のように地面に倒れた。
痛みに歪めた顔を見てゾクリと背に走る感覚はなんなのか。

「あの04番が助けに来るとでも?」

ブーツの先で顎を掬い此方を向かせる。あの眸が俺を映し出す。
(恐怖に歪みも揺らぎもしない、)

「っ…」
俺はしゃがみこみ、顎を掬い丸みを帯びた白い頬をはたいた。
それでも歪まない少し反抗的な眸。
口角が上がってしょうがない。

「アイツはお前なんて下僕としか思ってないさ…」
「ぁ…」

今まで俺の言葉に揺らぎもしなかった541番の一瞬の悲愴。
その瞬間、少しかさついた唇に唇をおしあてた。
もがくのを顎を固定することで無とし、唇を割り舌をいれようとして唇を噛まれた。
唇を離し頭を床に押し付けてやった。

「いい度胸してんな、」
「……助けには来ないかもしれません」

床に押し付けられても尚、睨んでくるコイツの次の言葉に胸ぐらを掴んで顔を近づけた。

「所有物を取り返しには来ると思いますけど」

ニコリと人懐っこそうな笑顔を向けられ、ドクリと血管が脈打った気がした。
妙に身体が熱い。
そんなことを考えていたら、牢の番をしていたコプチェフの叫び声の後、物凄い音が響いた。
何事かと振り向くと牢の向こうにニヤリと上がった口角。

「がっ……はっ」

腹部に痛みを感じた時には既に541番を掴んでいた右の腕が変な方向に曲がっていた。
直ぐに間合いをとって銃を向ける。
が、既に遅く顔面に拳がおりてきた。背中が壁にぶち当たりそのままのし掛かられ殴られる。

「ぅ…ぐっ」

殺されると思った次の瞬間に541番の声が響いた。

「キレネンコさんっ、駄目ですっ」

ピタリと止まりのし掛かっていた重みがフッと消えた。
感じる暇さえ無かった痛みが身体のあちこちに走った。
嗚呼、骨を何本かと内蔵がいくつかいっちまったなと頭の片隅で思った。

「キレネンコさん…」
「…」

カシャンと何かが飛び散る音がして、辛うじて開くことができる右目を開くとすぐ近くに銀色の破片があった。
馬鹿野郎、手で手錠引き裂くなんて…冗談じゃねえよ。

「あの…キレネンコさ…ンッ…ちょっ…やめ」
「黙れ…」

低い声が響き、541番の声は遮られた。二人を見詰めて何故だか絶望した。

手首から首筋、頬、そして唇に唇を滑らせ、舐めあげる。

「…ぁ…」

腰が抜けたのか真っ赤になった541番は04番に凭れるようにたおれかかった。

「…帰る」
「…はい、」

541番を脇に抱え04番は一瞬此方を見た。その眸は何処か死を彷彿とさせる。背に嫌な汗が流れた。
声を出そうにも血が逆流してむせこんでしまった。床に大の字に倒れる。
牢の天井をボンヤリと見詰める。

「所有物…ねぇ、」

俺は左手ポケットの中を探り煙草を掴みくわえた。
すると逆のポケットにライターが入っていることに気がつき、動かない右手に舌打ちをした。
煙草をくわえたまま考えるのは、先程の嬉しそうな541番の横顔。
04番には向けるあの笑顔…。
「いてぇな……畜生…」


誰かの所有物




>>赤緑←ボリス(^q^)
好きなんですこの関係。ボリスは報われないのがね(^q^)
民警に捕まったプーチン。ボスは助けにいくというかマジで自分の所有物を取り返しにいくと(^q^)
話が纏まってなくてすみません。


竜弥

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