床に横たえた体がぎしぎしときしむ。酷く息苦しい。

「あ、だち、さん、」

直ぐ近く、頭の上から声がする。彼のダメージも大きいのか、掠れた声。目が霞んでよく見えないのが少し残念だった。彼は人を殺す時にどんな表情をするのか興味があった。でも眠気には勝てなくて、ゆっくりとまぶたを閉じる。

「こら、ねるな、」

ばちり、と張り手をくらった。星が飛んで、視界が戻ってくる。彼は少し眉間にしわをよせて、は、とため息をはいた。頭が切れているらしい、血が頬を、顎を伝い、見上げる僕の額にぽたりと落ちた。暖かい、血。

「ねえ…なんで、1人で来たの?」

「決着、ひとりでつけたかった、から」

「とどめ、ささないんだ」

「殺さない、生きて」

「、はは」

この期に及んで生きろなどと。自分にはもう何も残っていないのに、何のために生きろと言うのか。この命の為にさえ、生きる気がしないのに。流れ出る血の感覚さえ心地いいと思えるのに。

「生きる理由、無いし」

「理由、必要?」

「意味も無く生きるのは、もう、いいかな。…もう、疲れた」

「………」

彼はす、と目を細めた。眉間にさらにしわがよる。暫くの沈黙。その間にもぱたぱたと彼の血が僕に落ちる。鉄臭いそれに、僕らは染まっていく。なんだか酷く滑稽だった。そして言葉は突然に発せられた。

「じゃあ、俺が、なってあげます」

「、何」

「足立さんの、生きる理由。ありがたく、思って下さい」

「、は?」

「俺があなたの隣にいます。ずっと、です。あなたも俺の隣にいるんです、ずっと。それが、あなたの生きる理由。俺の隣にいるために、生きて下さい」

「………」

「だから、帰りましょう」

元の世界へ。そう言う彼は今にも泣きそうで、ああ、こんな表情もするんだ、なんて思った。意外と、いややっぱり、子供なんだな、と思う。
彼が手をのばしてくる。血に濡れた、赤い手。それは僕の血か、彼の血か。頬を、何か生暖かいものが伝った。

血の匂いはしなかった。



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足主が書きたくて、突発的に書いたもの。アダッチー…。


(加筆修正後 / 結局何なのかよく分からん)






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