「なんかさぁ」
「?…なに」
「海斗、疲れてんだろ」
「、え」
驚いた。気づかれるだなんて、思ってもいなかった。
疲れているのは事実だ。連日テレビの中に入ったり部活だったりバイトだったり、せわしないことこの上ない。疲れるのは当たり前だ。ただ最近はだいぶ疲労が溜まってはいたかもしれない。けれど、それに気付かれてしまったのは不覚だ。自分は一応リーダーという立場にいるわけなのだし、出来るだけ弱みは見せるべきではないと思っていた。それなのに、
「え、何、佐々木君疲れてるの?」
「大丈夫ッスか?先輩」
里中と完二が聞いてくる。天城も、何も言わないけれどこちらをじっと見てくる。こういう風になるから、弱みは見せるべきでは無いと思うのだ。心配されるというのは苦手だった。もちろん相手は好意でしてくれてるのだから、そんなことは言えないのだけど。
「平気だ。確かにちょっと、疲れてるかもしれないけど」
「本当?無理しないでよ?疲れてるなら…って、花村!?」
いきなりぐい、と陽介に手を引かれた。そのままぐいぐいと引っ張られる。みんなが呼び止めるのも聞かずに。
「陽介?」
「…………」
無言だ。心なしか怒っているように感じた。何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか。陽介はずっと無言で俺を引っ張って行く。ついには鮫川まで来てしまった。なんなんだまったく、陽介の癖に。
「陽介」
もう一度呼びかけるとぴたり、と陽介は立ち止まった。
「…なんだよ?」
「…馬鹿」
「は、」
「馬鹿って言ってんだよ!無理してんじゃねぇ!」
ようやくこっちを向いたと思ったら、怒鳴られた。びっくりした。
「無理なんかしてないけど」
「してるだろ!お前、すっげぇ疲れてんじゃん、顔見ればわかるつーの!」
「…そうか?俺、そんなに疲れた顔してるか?」
「してる!」
「…へぇ、俺、そんなに疲れてたんだ」
「…お前、気づいてなかったわけ?」
「うん」
はあ、と陽介に思いっきりため息をつかれた。失礼な奴だ。でも、顔に出るほど疲れていたとは思わなかった。自分では本当に、少し疲れてるぐらいだと思っていたのに。
「なんかもう…いいや。つまりな、疲れたりとかしたら、遠慮なく俺を頼れって言ってんだよ」
「はぁ?」
「お前、疲れたり辛かったりしても黙ってるだろ。ほかの奴には分かんなくても俺には分かるんだよ。言いたくないんならそれでもいいけどさ…でも、辛いんなら頼ってくれよ」
「…………」
ああ、本当に、こいつは!自分の頬がありえない位ゆるむのがありありと分かった。嬉しいんだ。自分は今喜んでいる。心配されて喜んでいる。らしくない。でも、とてもいい気分だった。
「陽介のくせに、生意気だな」
「生意気ってなんだよ…」
「…まあいいや。お前がそんなに言うんなら、今度からはちゃんと頼ってやる」
「おう!」
「それから、すっごく甘えてやる」
「お、おう!」
「陽介くんは俺が心配で仕方がないみたいだからな?」
「な、そこまで言ってねぇ!」
そんなことを言いつつ、顔が赤い。わかりやすいやつめ!
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頼ってほしい花村。
(加筆修正後 / 番長のキャラが掴めてない)
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