「先輩」

「…何だ」

「いい加減にして下さいね」

「す、すまない…」

本当に怒っているらしい後輩に、真田は思わず顔を引きつらせた。
しかしまあ、怒るのも無理は無い。

「まったく…疲労していたのならちゃんと言ってくれれば良かったんです」

「すまん…」

「無理するからこういう事になるんですよ!」

「…………」

返す言葉も無い。
昨日のタルタロスの探索に、疲労しているにも関わらず参加した真田は案の定風邪をひいてしまった。湊が怒るのも無理は無いことだった。風邪を他の仲間に移してしまえば、被害はもっと広がってしまう。
自分の限界を見誤ってしまった。完全にに俺のミス。同情の余地も無い。
そして今、湊に看病されている自分が更に情けない、と真田は思う。いや、これはこれで嬉しいのだけれど。

「まあ…気付けなかった俺の責任もありますしね」

濡らしたタオルをぎゅ、と絞って、横になっている真田の頭に置いてから湊は言った。

「今度からは絶対にこんな事が無いように気をつけて下さいよ?」

まったく、と呟いてちょっと俺を睨む。そんな仕草も可愛いんだけれど、そんな事を言うと更に怒られるので自重しておく。

「すまなかった…以後、気をつける」

「当たり前です。心配させないで下さい」

「心配…?」

がばり、と起き上がって真田は聞き返す。湊は思わず顔をしかめた。

「心配?心配してくれてたのか?」

「え、いや、ええと…」

「心配してくれたんだな!?」

「あ、あうー…」

湊は三秒程視線を彷徨わせてから、諦めたように溜め息をついた。

「そりゃあ、心配ぐらいします」

そこでちらり、と真田の方を見て、

「大切な、先輩、ですし」




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ツンデレな主人公と怒られるへたれな先輩が大好きです。
へたれだけど愛はたくさん。


(加筆修正後 / 恥ずかしい!この人達恥ずかしい!)






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