彼は大抵無表情だ。何を考えているのか分からない。あのぐらいの歳なら、もっと友人と馬鹿騒ぎするものだと思うけれど、彼は随分と大人びて見えた。ちょっと異様なくらいに。まあ、静かなのは好きだし、そんな異様さも気に入っている。正直言って餓鬼は嫌いだが、でも彼は少し違う。割と気に入っているのだ。自分らしくないとは思う。自分でも理由はよく分からない。ただ、彼は他の餓鬼とは確実に何かが違って。
だから、気になった。手に入れたいと、柄にもなく思った。







「足立さん、」

「…ああ、海斗君。今帰りかい?結構遅いんだね」

「今日はジュネスに寄ってきたから…足立さんは…」

「…言わないでね」

「…分かりました」

何時ものごとく仕事をサボって河原でぼんやりしていたら、後ろから声をかけられた。声の主は案の定彼。両手に下げた通学鞄とジュネスの袋が少し重そうだった。

「家事、大変だね」

「平気ですよ、これくらい。叔父さんとか、足立さんの方が大変でしょう?」

「はは、相変わらず進展が無いしね…正直、嫌になっちゃうよ」

「嫌に?」

「そう」

そこまで言って、ふと思いついた。思いついたから言ってみた。ちょっとした疑問。

「海斗君は、嫌になっちゃったことはあるの?」

「え、」

「何もかも嫌になって、全て拒絶したくなって、そんなこと」

きょとり、彼の目が丸くなる。始めて見る表情で、少し楽しくなった。

「…無い、です。そりゃあ、少しくらいは嫌になることもありますけど、何もかもは、」

無いです、と呟く。予想していた返答だったけれど、少し残念だ。だから素直にその気持ちを口に出した。

「…そっか、残念」

「え?」

「じゃあ、何もかも嫌になったら、僕のところにおいで」

「な、」

「じゃあね。また…そのうち」

またすぐに、今度はあっちの世界で、会おうね。




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絡みが少ない気もする…
足立の口調がよく分からなかったのが敗因だ!


(加筆修正後 / 過去の自分に言いたい、敗因はもっとあるぞ。一万打リクエスト企画のものでした…)






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