最終章あたりのネタバレありです「話せなくてごめんなさい…」
「僕らは立場上、話す訳にはいかなかった…」
「ああ…分かっているさ」
ストックは己の運命を知り、受け入れた。その過酷で悲しい運命を、受け入れた。
リプティとティオは今の今まで何も話せないでいたことに、後ろめたさを感じていた。立場上仕方のないことだったけど、歴史が正しく導かれたのなら、こうなることは分かっていたのだ。分かっていて、何も言えなかったのだ。
それで彼がヒストリアを訪れる度、2人の口は謝罪の言葉を紡いだ。けれど、彼はいつも気にするな、分かっている、の二言で終わらせてしまう。
2人にとっては、そんな簡単な話ではないし、逆に辛い。むしろ責めて罵ってくれた方が、自己満足であろうと、気持ちは楽だったろう。
彼は優しい男。優しく、強い男だ。その優しさと強さが、2人には悲しく辛かった。だから、彼が謝罪を望まないと知っていても、謝らずにはいられない。
「お前たちが悪いわけじゃないだろう。謝る必要はない」
「けれど、」
「いいんだ」
ティオの声を遮って、ストックは言った。彼が誰かの言葉を遮るのは、珍しいことだった。
「…覚悟はした、つもりだ」
「君は…強い男だ」
「…本当に…ありがとう、ストック…私たちには、そう言うことしかできないけれど、」
「けれど、僕らは忘れないよ、君の歩んだ…人生を」
「…人生か」
ぽつり、ストックは呟く。
「そう長くはなかったが…なかなか充実した、いい人生だったさ」
彼の瞳はどこまでも澄んで、どこまでも遠くを見つめていた。
←