嵐の夜に


(※注意:女夢主→003です)





髪を梳かし終わったフランソワーズが、そろそろ寝ようとベットに腰をかけた時、大粒の雨が窓を叩く音に混じって控えめなノックの音が聞こえた。
「誰?」
「シュウ。入っていい?」
こんな時間にどうしたのだろうと思いながら、どうぞ、と声を返すとゆっくりとドアが開き、あいた隙間からパジャマ姿のシュウが顔を覗かせた。少し申し訳なさそうな表情をしている。
「……寝てた?」
「いいえ、今髪を梳かし終わったところよ。」
そう、と言って少し安心した様子のシュウは、ドアの向こうからフランソワーズの部屋に入り、開けたときと同じように音を立てないようにドアを閉めた。
「シュウ、どうしたの?」
「ごめんなさい、夜遅くに。あのね……。」
ドアノブから手を離しながら振り返ったシュウは、ベットに座るフランソワーズと、その向こうの壁、ベットに面する壁の窓をしばらく見つめたあと、ポツリと呟いた。

「フランソワーズって、雷平気?」
「雷?」
「嵐とか、怖くない?」
「え……それは、台風とか、あんまり激しいと不安に思ったりはするけど……。」
「そう。」

シュウは視線を下に向け、そこで会話が途切れてしまった。いまだ部屋の入り口に立って、なんだか物言いたげな表情をして、ときおり何か口の中でうめいている。
フランソワーズは、普段おとなしく、突飛な行動はしないシュウのこの質問が、いったい何を意図するものなのかを測りかねていた。屋根と窓を叩く激しい雨音と、遠くで響く雷の音が、能力を使わなくても良く聞こえた。

もしかして。

「もしかしてシュウ、雷怖いの?」
「え、別に……。」
そいういうわけじゃない、と言おうとして顔を上げたシュウは、ふと思い至って言葉を切った。
「うん、実は、そうなの」
そう答えた彼女に、フランソワーズはすこし困った子供を見るような微笑みを向けた。
「眠れないの?」
「うん。一人じゃ、怖くて。」
「フフッ……じゃあ、一緒に寝る?」
「いいの?」
「ええ、なんだかお泊り会みたいで楽しそうじゃない。同じ家に住んでるのに、こんなこと考えるのも変だけど。」

フランソワーズが「でも、枕は自分のを持ってきてね。」と言うと、「すぐに取ってくる」と言い残して、素早くシュウは部屋を出た。パタパタと、廊下を小走りに走る裸足の足音が響く。
一人部屋に残ったフランソワーズは、止む気配のない豪雨と雷の音と、あまりに軽い、浮かれたような足音を聞いて思わず苦笑した。


眠れないほど怖いにしては、ちょっと軽すぎるんじゃないかしら?


またフランソワーズの部屋のドアが開いて、枕を抱えたシュウが、はねるように飛び出した。


「まあ、それもご愛嬌ね」




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