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少し前から、アルベルトは奇妙な少女が、自分の後をつけていることに気がついていた。

日本では外国人が珍しいのか、人通りの多いところを通るとやたらと視線を感じたり、ノリの軽い若者や、人懐っこい老人に声をかけられたりしたことはあったが、少女に尾行されるといったことは初めてだった。
なにか用があるなら、追いつけば話しかけてくるだろうと思い、歩調を緩めたりもしてみたが、少女はそれに合わせて自分も速度を遅くするだけだった。そのくせ、交差点を渡ったり、複雑に角を曲がったりを繰り返しても、少女はしつこく後をつけてくる。
彼らの宿敵の手先であったなら、こんなにもあっさりと気づかれるような、下手な追跡をするわけはない。

(なんなんだいったい。)

理由もわからず後を付けられるのは不快なことであるし、なにより追跡者に探りを入れるために無駄に歩かされ、余計な神経を使わされたアルベルトは、そろそろ捕まえてキツめに問い詰めてやろうかと思っていた。

唐突にぴたりと立ち止まると、背後の追跡者もあからさまに動きを止めるのが分かった。
やはり素人。

(捕まえて問い詰めてやる。)
現時点から周辺に伸びる路地の位置を頭に描き、アルベルトは今まででいちばん早い歩調で、その場から歩き出した。



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